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【ソーシャル・ジャスティス雑感=2018年6月20日配信SJFメルマガ第80号より】

「ペンタゴン・ペーパーズ」と日本の公文書管理 (辻利夫/SJF運営委員)

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 日本で3月30日に公開された「ペンタゴン・ペーパーズ」が、社会派映画としては久々のヒットになったという。映画は1971年、アメリカ政府のベトナム戦争介入の政策決定プロセスを詳細に記録した国防総省の機密文書をニュ―ヨークタイムズに続いてワシントンポストが入手し、掲載したことに、当時のニクソン政権が「安全保障上問題がある」として、連邦地裁に記事の掲載差し止めの訴えを起こした実話をもとにしている。

 映画はワシントンポスト社主で自殺した夫の後を継いで主婦から社主になってしまった女性が、掲載をめぐって対立する役員会と編集陣との渦中にもまれ、自身も収監される恐れを抱きながら、掲載を決断するまでの葛藤を描く。最高裁判所が合衆国憲法修正第1条の「報道の自由」を根拠に訴えを却下する判決を電話で受けた記者が、判事の言葉を編集局内に伝える。「建国の父たちは報道の自由に保護を与えた。民主主義における基本的役割を果たすためだ。報道が仕えるべきは国民だ。統治者ではない」。そして、翌年起きたウォーターゲート事件を匂わすシーンで映画は終わる。

 監督のスピルバーグは、新作の撮影を中断して、急遽この映画の撮影に入り、わすか半年で完成させた。スピルバーグ監督は、朝日新聞のインタビューに、トランプ大統領の登場で、アメリカの言論が危機に瀕している、報道機関は大統領の「フェイクニュース」攻撃にさらされ、国民に真実を伝えることに苦労しているとして、「歴史上、市民と報道機関の間にこれだけの煙幕が張られたことはありません」と語っている。

 日本もまた、森友学園問題、加計学園問題、自衛隊日報問題、さらには働き方改革法案に関連した厚労省の「裁量労働制データ捏造」など、政府文書・情報にかかわる隠蔽、廃棄、改ざん、捏造、職員の私的メモ化が政府内に蔓延し、政府の活動に対する国民の信頼を大きく損ね、民主政治の根幹を揺るがす事態になっているのだが、安倍政権は、この問題に正面から対処しようとせず、小手先の改訂で事態を収めようとしている。

 政府・与党の公文書管理についての見直し・改正の位置づけは昨年12月に改正された「行政文書の管理に関するガイドライン」に沿ったもので、そもそも森友学園問題における改ざん、加計学園問題における政府の記録が作成されていない、残されていないといった欠陥に対処していないなどの問題点が指摘されている。

 2009年に制定された公文書管理法は、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけ、文書の作成、整理、保存するルールを定めている。政府が政策とその執行をどのように意思決定したのか説明できるために、その過程を記録し作成された文書をデータとして保存し、検証できるようにすることが法の趣旨だ。

 政府の活動を国民に開かれたものにしていく、説明し検証できるものにしていくうえで不可欠の活動の記録となる公文書の作成・管理・公開のあり方について議論を広げていくことが求められている。

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