┏ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
★1.【委員長のひとりごと】 (上村英明)
現代社会の分析に、どこまで時間を遡ればよいか:近代日本の「歴史認識」を再考する
★2.【SJFニュース】
- 『「少年法18歳未満」から考える大人ってなに? 子どもってなに?』
丸山泰弘さん × 須藤明さん(SJFアドボカシーカフェ第49回)参加者募集
★3.【助成先ニュース】
- メコン・ウォッチ:『ミャンマー経済特別区開発の今-環境と暮らしへの影響』 セミナー 参加者募集
- WorldOpenHeart:『加害者家族と共謀罪』 緊急企画 参加者募集
- 僕らの一歩が日本を変える。: 活動最終報告
「若者と政治に新しい出会いを届ける『票育』授業プログラム」
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★1.【委員長のひとりごと】(上村英明)
現代社会の分析に、どこまで時間を遡ればよいか:近代日本の「歴史認識」を再考する
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仕事が多忙で、このコラムも3回ほどお休みしたが、その間にも、コメントしたい社会課題は目白押しであった。とくに、その多くが、残念ながら、暗い話題ばかりだ。
さて、日本で起きている深刻な社会課題の解決のいくつかは、頭を出したモグラ君への対処よりも、地下でつながる複雑に交錯したトンネル・システムの分析と中心に位置する巣穴の解体のように感じられてならない。(何も悪くない本物のモグラ君たちには申し訳ない。)別の言い方をすれば、ある社会課題を分析する際に、その時間軸における根の部分にきちんと向き合わなければならないということだ。つまり、社会課題はどの時点から分析すればよいのかという問題でもある。
現代の安倍政権の、いわゆる「右傾化」の分析に、縄文時代や鎌倉時代まで遡るという人はあまりいないだろう。例え、何らかのつながりが見えるにしても、議論そのものが生産的とは思えないからだ。
では、近いところではどうだろう。遡って、2012年の安倍第二次内閣あるいは2006年の安倍第一次内閣の成立だろうか。さらに遡れば、安倍晋三が敬愛する祖父である岸信介の第一次内閣(1957年)、あるいは岸の東条英機内閣の下での商工大臣就任(1941年)の時期であろうか。
安倍首相が唱え、彼の重要な政策理念である「戦後レジームからの脱却」からみれば、まさに、1941年から1957年の歴史状況がその基盤と言えるかもしれない。他方、「アベ政治を許さない」とする反安倍政権の人々も、遡る時代は同じころだろう。安倍首相が脱却したいとする「戦後レジーム」とは軍国主義が敗北し、その後日本国憲法(とくに第9条)によって確立された平和主義の時代でもあるからである。
しかし、安倍政権は、むしろ「戦前レジーム」を肯定するが故に、その歴史スパンは長く、反安倍政権の人々が足をすくわれる構造を持っている。
例えば、戦後平和主義の対峙する価値を1930年代以降の軍国主義にだけ置いてよいのかという発想である。ややエッセイ風だが、戦後日本の平和主義や民主主義に大きな影響を持ったと思われる二人の人物を紹介し、この点を考えてみたい。
司馬遼太郎(1923年~1996年)と丸山眞男(1914年~1996年)である。二人は、作家と大学教員として職業は異なるが、同じ大正年間に大阪で生まれ、奇しくも同じ年に亡くなった。そして、もうひとつの共通項は、敗戦体験と軍国主義への嫌悪である。
栃木県佐野市で陸軍少尉として敗戦を迎えた司馬は、日本は「なぜこんな馬鹿な戦争をする国」になったのだろうと考え始め、それが作家人生の基盤になったという。その疑問の結果のひとつが、1968年から産経新聞への連載が始まった『坂の上の雲』である。司馬の作品はNHK大河ドラマの原作としては最多を数えるが、近代国家建設に邁進した明治時代(1868年~1912年)を高く評価し、小説の中でも1904年~05年の日露戦争を自衛戦争と位置付けた。その「坂」を上った後に、彼が嫌悪すべき軍国主義が待ち受けていたと考える。いわゆる「司馬史観」と呼ばれるものである。
やや年上の丸山は30歳の助教授で教育招集を受け、最後は広島市宇品で被爆し、敗戦を迎える。陸軍二等兵であった。軍隊生活にはびこる全体主義や権威主義への反発から、「自立した個人」を中心思想に、1960年の安保闘争を支持するなど、戦後民主主義のオピニオン・リーダーとして丸山はアカデミズムを越えて活躍した。その丸山も、明治時代を高く評価した。明治時代にはデモクラシー(民権)とナショナリズム(国権)が健全なバランスで存在したと分析し、近代日本を代表する思想家として福澤諭吉(1835年~1901年)を絶賛した。「丸山政治学」の一面である。
つまり、反安倍政権の思想の背景には、この二人に象徴されるような、1930年代以降の軍国主義のみを平和主義への敵とする思想基盤が存在していないだろうか。
安倍政権は、2017年3月31日、「教育勅語」を「憲法や教育基本法」に反しない範囲で教材とすることを容認する閣議決定を行った。内容を巡る賛否両論が展開されているが、「教育勅語」の発表は1890年、いわゆるこの明治時代である。昭和の軍国主義の時代ではない。
果たして、私たちは個別の評価や評論だけでいいのだろうか。むしろ「明治」という時代が「賢い」「健全な」時代だったのか、改めて総括的な評価を行うべき時期ではないだろうか。
ちなみに、2018年には、開拓使が設置され、「蝦夷地」が「北海道」に改称された1869年(明治2年)から150周年の記念事業(北海道150年記念事業)が北海道で計画されている。これに対し、2017年7月には日本平和学会の春季大会が「植民地主義と憲法を北海道/アイヌモシリで問い直す」を大会テーマに北海道大学で開催される。
明治が始まった直後から、近代国家日本は拡張主義、侵略主義の国家ではなかったのか、「北海道開拓」は「アイヌモシリ侵略・植民地化」ではなかったのかという問題提起でもある。
その後の台湾出兵、琉球併合、韓国併合はどうだろうか。だとすれば、「教育勅語」は、そもそも侵略主義教育の規範とも読むことができる。(記=5月3日)
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★2.【SJFニュース】
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- 『「少年法18歳未満」から考える大人ってなに? 子どもってなに?』★参加者募集★
:SJFアドボカシーカフェ第49回
【ゲスト】丸山泰弘さん(立正大学法学部准教授/刑事政策・犯罪学)
須藤明さん(駒沢女子大学人文学部心理学科教授・臨床心理士)
【日時】2017年6月12日 18:30-21:00
【場所】文京シビックセンター
少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることが法務省内で検討されています。少年法の本質をみんなで確認しあい、対話の土台をつくりませんか。 罪を犯した子どもの将来への育て直しを社会で引き受けるという考えが少年法には表れています。大人は罪を犯した事実のみで罰せられるのに対し、子どもは背景や環境を考慮した教育・福祉・罰が三位一体となって処遇されます。
子どもが自分の行いに責任をとれるようになるには、自分で決め、自分の意見を表明したことが尊重される経験のつみ重ねが必要です。そして、「失敗してもいいよ」、「やり直していけるよ」と何歳まで受けいれられる社会か。自分の意見を安心して表明できる人間関係が保障されるよう、保護を求める権利を何歳まで認められる社会か。罪を犯しても、社会生活の平穏を害され更生を妨げられない利益をどこまで認められる社会かが問われています。
私たちは、子どもとどのように向き合っているでしょうか。私たちは、子どもの思いを真正面からじっくりと聞き、子どもが健全に成長できる社会をつくっていけるでしょうか。それが少年司法に反映されていくともいえるでしょう。ゲストのお話をうかがい対話する場にぜひご参加ください。
【詳細・お申込み】http://socialjustice.jp/p/20170612
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★3.【助成先ニュース】
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- メコン・ウォッチ(SJF第5回助成先):★セミナー 参加者募集★
『ミャンマー経済特別区開発の今――環境と暮らしへの影響』
ミャンマーでは民政化の流れと共に、様々な開発事業が始まっています。
中でも日本の関わるティラワとダウェイの経済特別区は、注目を集めている案件です。
ティラワでは開発に伴う住民移転で様々な問題が起きた結果、事業を支援する国際協力機構(JICA)に対し住民から異議申し立てが行われました。
また、ダウェイでもタイ企業の先行開発による自然破壊と暮らしへの影響が顕在化しており、タイの国家人権委員会から改善に向けた提言が出されているところです。このダウェイでも日本政府は、経済特別区を含むエリア全体の開発のプランを策定する予定です。 このセミナーでは、日本が関わる二つの事業地の様子や人々の暮らしぶり、またこのような開発に伴う問題についてお伝えします。
【日時】6月7日(水)18:30~20:30(開場18:15)
【場所】常圓寺(東京都新宿区西新宿7-12-5)http://www.joenji.jp/sp/access/
(JR線・小田急線・京王線・丸の内線、新宿駅西口改札より徒歩6分)
【定員】50名 【資料代】500円(メコン・ウォッチ、アーユス会員は無料)
【お申込み】https://ssl.form-mailer.jp/fms/7d43283e508362 からお申込みください。
【プログラム】(予定)
・はじめに ・ダウェイ経済特別区の様子(写真とビデオ)
・ダウェイ経済特別区開発と日本の関わり
・ティラワ経済特別区の今まで、人々の願い
【お問い合わせ先】 特定非営利活動法人メコン・ウォッチ Tel. 03-3832-5034、メールevent@mekongwatch.org
【共催】 特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ
- WorldOpenHeart(SJF第4回助成先):★緊急企画 参加者募集★
『加害者家族と共謀罪』・・・家族がもし、逮捕されたら・・・
【講師】草場裕之(弁護士)
【ファシリテーター】阿部恭子(加害者家族支援団体代表)
「共謀罪」って何?
私たちの生活にどうかかわるの?
「共謀罪」について、加害者家族の視点からわかりやすく解説します。
全く知識がない、最近のニュースを見逃しているという方、大歓迎!
【日時】2017年5月26日(金)18:30~20:00
【会場】仙台市市民活動サポートセンター研修室5
【資料代】500円
※参加申し込みは、不要です。
【お問い合わせ先】090-5831-0810
【主催】NPO法人WorldOpenHeart (URL: //www.worldopenheart.com/ )
- 僕らの一歩が日本を変える。(SJF第4回助成先): 活動最終報告
「若者と政治に新しい出会いを届ける『票育』授業プログラム」――<課題を発見する力>と<課題解決の選択肢を見出す力>の2つを学べる授業プログラム「票育」を全国の中学高校で展開する――
(今後の展望)1年間、地方自治体との連携による票育CREWSHIP制度(※1)の実施を行ってきて、票育CREWSHIP制度の発展した形こそが「若者委員会」であると痛感した。 美濃加茂市の若者委員会を来年度以降も現実的かつ効果的に運営することで、政治参加の文化を根付かせていくことが次なる目標になると考えている。 また、他の自治体においても委員会の設立に向けて協議を続けていく方針である。
また、担い手を育まなくとも主権者教育が学校教育内で普及されるべきだと強く感じている。そのため、CANVASS(※2)という弊法人が開発したボードゲームの普及を実現する。
※1【票育CREWSHIP制度とは】
票育授業を中高生の教室に届けるのは、22歳以下の“地域の若者”。彼らは<票育CREW>として、自分の住む地域のフィールドワークやヒアリング研修を通じて得た学習成果を<票育授業>という形に変換して学校現場に届ける。この過程を通して、<票育CREW>が地域の担い手となり、地域に参画していく制度のことを指す。
※2【政治ボードゲーム教材「CANVASS」について】
政治をより楽しみながら学べる教材として「CANVASS」というボードゲームを製作した。中高生が国会議員となって臨むゲームであり、議員として、「演説」「政策」「イベント」という3つのアクションから1つを選んで、「人気」と「実績」を集めて競う。政治家がどんな人とどんな仕事をしていて、政治が自分たちの周りにどんな影響を及ぼしているのか、そんな政治のリアルを政治家の視点から楽しく学ぶことができるボードゲームだ。
半年間で高校、大学、大学院、その他日本政策学校など様々な年代を対象に20回程度実施。
【詳細】http://socialjustice.jp/p/2016lastreport1/
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今月号のコラム執筆者プロフィール
- 上村 英明 [SJF運営委員長; NGO市民外交センターの代表として、先住民族の人権問題に取り組み、この関連で国連改革や生物多様性などの環境保全、核問題など平和への取り組みを実践するとともに、グローバルな市民の連帯に携わってきた。SJFでは、平和、人権、エネルギー、教育など多くの分野で新たに現れている21世紀の課題を解決するため、市民による民主主義実現のための政策や制度づくりを支援している。恵泉女学園大学教授]