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1.【巻頭】 ~上村英明のひとりごと~ 

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 メルボルンの中心街はCBDCentral Business District)と呼ばれ、高層ビルが林立しているが、少し北に隣接したところには「カールトン公園」という閑静で趣のある場所がある。ここには、2つの大きな建物があるが、ひとつは王立博覧会ビル(Royal Exhibition Building)で、1880年に開催された「メルボルン万博」のメイン会場として建設され、1901年の「オーストラリア連邦」の独立時の国会でもあった。こうした背景から、2004年にはオーストラリアで初めての「文化遺産」として、ユネスコの世界遺産に登録された。

 この建物の北には、王立博覧会ビルと違って、低層だが斬新なデザインの近代的なビルがある。メルボルン博物館(Melbourne Museum)だ。自然史の他、英国移民史(他の移民に関しては、別に移民博物館がある)や先住民族・アボリジニーの文化や生活、歴史なども紹介されている総合博物館で、何か特別な視点で見るのでなければ、最も圧倒される展示は、鉱物の標本展示と地球創世記の地殻変動を紹介した3Dの映像だろう。高校時代「地学」を取っていた僕にはなかなか優れものであった。

 しかし、なぜメルボルン博物館で鉱物の展示が圧巻かは、理由がある。少し離れたメルボルンのCBDの中に、「リオ・ティント(Rio Tinto)」社のオーストラリア本社があるからだろう。「リオ・ティント」社は、現在世界有数の鉱物・資源メジャーとして知られた多国籍企業で、もともとの会社はスペインの鉱山を経営する英国企業であったが、オーストラリアの別企業を買収して拡大して以来、ロンドンとこのメルボルンに本社機能を持っている。鉱物標本のほとんどと3D映像はこの会社の提供であり、映像の中ではオーストラリア本社の幹部が鉱物資源のすばらしさと重要性を見学者に語っている。

 この「リオ・ティント」社を巡って、20089月画期的な出来事があった。グローバルな企業活動で「優良企業」である「リオ・ティント」社の大株主のひとつである「ノルウェー政府年金基金」が、その保有する株89000万ドル(約900億円)分を一気に売却したのだ。理由は、インドネシアの西パプアでの同社の鉱山開発が河川の大規模な汚染を引き起こしており、これに関し株主である「ノルウェー政府年金基金」は改善を申し入れたが、「リオ・ティント」社が現地政府の法規制を遵守していることを盾に改善に応じなかったからだ。「ノルウェー政府年金基金」は、ノルウェー政府が出資する政府系ファンドで、グローバルに投資するいわゆる機関投資家として国際的に有名だが、環境破壊や人権侵害に加担する企業には投資しないという原則で動いているファンドでもある。

 こうした方向性は、すでに2006年に国連が制定した「責任投資原則(Principles for Responsible Investment)」にまとめられており、日本でも企業に新たな社会的責任を遵守させようという企業・NGO・研究者で構成される研究会なども動き始めた。そのとある会合で言われたことがある。「日本のNGOはなぜ、機関投資家にアプローチしないのでしょうか?」―確かに。バラ色の結果を期待することはできないが、それでも博物館の中の優良企業を実社会での優良企業に変える道はまだまだあるのかもしれない。

 

目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 

1.【巻頭】 ~上村英明のひとりごと~

2.SJFニュース

   ご報告:『ソーシャルジャスティス・ダイアログ2014 SJFフォーラム(5/27

3.SJF助成先イベント情報】                                        

4.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】 (土屋 真美子)

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2.SJFニュース

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● ご報告:『ソーシャルジャスティス・ダイアログ2014』(527日開催)

ソーシャル・ジャスティス基金(SJF) 助成報告・対話交流会 

 SJF助成先団体の活動テーマの根底にある相通じる社会課題に気づきあい、活動の連携が広がる貴重な機会となりました。

 まずSJF助成先団体よりアドボカシー(社会・政策提言)活動の現場から報告をうけ、会場から率直なご質問やご意見をいただきながら、課題を共有し活動の発展につなげる場をもうけました。それをふまえ、つづく対話交流会では、今の社会情勢のなかでアドボカシー活動を社会の中にいかに位置づけていくか、ことに次世代を担う人たちと共に公正な社会実現にむけた活動をいかにすすめていくかという点に焦点をあて、問題意識や具体策など意見を出し合い対話交流を深めました。

 

【報告団体】「多様な学び保障法」を実現する会

         NPO法人OurPlanet-TV

      公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

         NPO法人「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 

      「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク

★つづきは ⇒ http://socialjustice.jp/p/20140527report/ 

★関連記事=コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感/土屋真美子(下記)

 

 

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3.SJF助成先イベント情報】 

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公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

「冤罪と死刑2014 映画『約束~名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯~』上映と

森達也さんらのトーク」

▽日程

75日(土) 映画14:00~(13:30受付)/トーク16:30~(17:45終了)

▽場所

明治大学 駿河台キャンパス リバティタワー6階 1063教室

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

▽内容

48年間投獄されていた袴田巌さんの再審開始が地裁で決定され、袴田さんは釈放されました。一方、事件発生から53年になる名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんは、再審開始が認められず今も獄中にあります。

なぜ、このような事件がおきるのでしょうか。

なぜ、日本は死刑を廃止できないのでしょうか。

冤罪を訴えている人を処刑してしまうのは私たちの責任ではないでしょうか。冤罪を訴えながら半世紀も拘禁させているのは私たちです。死刑を存置させているのは私たちです。

袴田さん、奥西さんの声を受け止め、冤罪と死刑について共に考えませんか。

▽詳細 https://www.amnesty.or.jp/get-involved/event/2014/0705_4613.html

 

★この講演者・浜田進士さんは、SJFアドボカシーカフェ第21回にもご登壇いただきました=『子どもの権利と地域・自治体での取り組み』/シリーズ:「日本で生かそう!国連人権勧告」第1回 (201312月開催)。詳細⇒ http://socialjustice.jp/p/20131202report/  

 

NPO法人「環境・持続社会」研究センター(JACSES)

公開勉強会『日本の気象資源調達とアジア』

~私たちのケータイがマレーシアで放射能汚染を引き起こす?~

―日本の資金で拡大するレアアース加工工場―

▽日時

627日(金) 19002045(開場1845

▽会場

SHIBAURA HOUSE 5F BIRD ROOM

 (東京都港区芝浦3-15-4JR 田町駅芝浦口徒歩7分/都営三田線・浅草線三田駅A4出口徒歩10

▽プログラム概要

講演「マレーシアのレアアース加工と日本のつながり」
   講師:和田喜彦さん(同志社大学経済学部)
Skype中継(逐次通訳)
   マレーシアのNGOに聞く「日本の人たちに伝えたいこと」
   トーク:SAVE MALAYSIA STOP LYNAS
・質疑応答、意見交換

▽詳細 http://www.parc-jp.org/freeschool/event/140627.html

 

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5.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】  (土屋 真美子)

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 527日に行われた『ソーシャルジャスティス・ダイアログ2014』は、この2年間にソーシャル・ジャスティス・ファンド(SJF)が助成した5団体に参加いただき開催した。前半の団体からの報告はそれぞれ充実していて、助成の成果を十分把握することができ、ファンド側としては大変うれしく誇らしくもあった。アドボカシーに対する助成の重要性を改めて確認できたと思う。しかし、それ以上に盛り上がったのが、実は後半の情報交換だった。

 5団体は政策提言を目的としている団体だけあり、大事にしていることは共通していた。それについては、「多様な学び保障法」を実現する会が明確に述べてくれたが、(1)賛同者を「広げる」、(2)議員に「働きかける」、そして(3)提案内容を「深める」という3つの活動の軸である。

 特に、2番目の「議員に働きかける」は、立法の当事者である議員とどう関係をつくっていくかについては、分野は違っても悩んでいる課題だけに、それぞれの経験を持ちより、大変貴重な情報交換の機会となった。

 その中には、すぐ真似できるスキルもあったし、あまり表には出せないような失敗談もあった。しかし、本当に貴重なのはそうした失敗談であり、それが共有できたことは大きな成果だったと思う。

 「こういう場をつくることが、ひょっとしたらSJFの役目かも」と、SJF運営委員の一人がつぶやいたように、アドボカシーを後押しするノウハウの蓄積、発信は、中間支援組織の役目だろう。今年は、ぜひこれまで助成させていただいた団体が一堂に会し、さらにソーシャル・ジャスティスに関心ある団体にもご参加いただき、政策提言団体に重要な3つの軸について情報交換できるような場をつくっていきたいと、ちょっとワクワクしながら思ったのでありました。

 

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今月号の執筆者プロフィール

  • 村 英明  (恵泉女学園大学教授、市民外交センター代表、SJF前運営委員長)
  • 土屋 真美子 (NPO法人アクションポート横浜理事、認定NPO法人まちぽっと理事)

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