「今国会における『日トルコ原子力協定』動向とトルコへの原発輸出の課題」:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝
―JACSESの『原発輸出による社会的不公正・途上国市民の被害回避を実現する政策・体制構築のためのアドボカシー活動』は、SJFの2013年度助成先の1つです。その近況レポートをいただきました(2014年4月8日配信SJFメールマガジンより)―
安倍首相は就任以来、積極的な原発輸出外交を展開しており、ベトナム・トルコ・アラブ首長国連邦(UAE)・サウジアラビア・ポーランド・チェコなどへのトップセールスを展開している。日本から原発輸出を行うには、その原発を平和利用に限定することなどを規定した原子力協定を輸出先の国と締結することが必要となる。日本政府は、2013年5月に「日トルコ原子力協定」に署名。協定批准のための国会承認を得るため、10月に臨時国会に提出した。
私たちは、他のNGOと協力して協定批准への反対を求める要請書の署名募集を行い、11月に国会議員(両院議長、衆院外交委員、参院外交防衛委員等)に要請書を提出した。また、トルコの現地シノップの住民団体と協力し、地元住民の約1割に相当する住民2871名の署名とともに要請書を提出した。協定は秘密保護法案の議論等の影響で審議入りが遅れ、先送りとなった。そのため、私たちは要請書への署名の再募集を行い、2014年1月に142団体、3270名(うち海外1805名)の署名とともに国会議員に要請書を再提出した。また、国会議員との個別対話やメディアへの情報提供を行った。
協定に対しては、みんなの党、共産党、社民党、結いの党、生活の党などが反対を表明。維新の会では賛否が分かれたものの結果的に反対を表明。民主党でも党内で反対の声が続出したが、党の方針としては自民党・公明党とともに賛成に回った。協定は4月4日の衆議院本会議で賛成多数で可決。協定は参議院に送られるが、成立の可能性が高い。
トルコへの原発輸出は、安全性・経済性・核廃棄物処分・地元合意など、多くの問題がある。トルコは世界有数の地震国であるにも関わらず、建物やインフラの耐震補強は進んでいない。そのため、仮に日本から輸出する原子炉の耐震性が高いものであったとしても、大地震が発生した場合、周辺インフラが寸断される可能性が高く、事故への対処が極めて困難になる。また、地元自治体であるシノップ市長も原発建設に反対している中では、住民避難計画の適切な策定・実施も困難である。さらに、日本では福島原発事故を踏まえ、原子力の「推進と規制の分離」が謳われ原子力規制委員会が発足したが、トルコでは、推進と規制の両方をトルコ原子力庁が担っており、この分離が図られていない。放射性廃棄物の処分方法も決まっていない。
「日トルコ原子力協定」は成立する可能性が高いが、実際に原発が輸出されるまでには、政府の調査支援や公的金融機関による支援にあたっての安全確認が行われることになる。トルコの原発における地層調査には国の予算が使われているにもかかわらず、報告書は公開されていない。また、これまで安全確認を担ってきた旧原子力安全・保安院が解体され、国際協力銀行(JBIC)などの公的金融機関による支援にあたっての安全確認制度自体が宙に浮いた状況だ。不適切な原発輸出がなされないよう、今後も働きかけを強めていきたい。
◆ご参加ください◆2014年4月18日(金):SJFアドボカシーカフェ第27回
『トルコへの原発輸出から、日本の原発政策を考える』
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