ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)連携プロジェクト助成報告
特定非営利活動法人 監獄人権センター(2022年7月)
◆連携団体:
一般社団法人 東京府中FM(ラジオフチューズ)
◆助成プロジェクト名:
刑務所所在地のFM局で受刑者の社会復帰をサポートするラジオ番組を放送する
◆共通テーマ
・パブリックアクセス(市民による無償の情報発信)
・表現の自由
・立場的マイノリティの意見や少数派の意見を発信する
・差別の解消
・まちづくり、防災
◆プロジェクト目的:
・市民が自身の手によって制作した情報を発信(放送)し、それに対して寄せられる様々な意見(反対意見も含む)について議論する。
・元受刑者や受刑者家族、友人など、公共の場で立場を明らかにして意見表明することが少ない人々が自らの問題とどのように向き合い、克服しようとしているか、どのような支援を必要としているか等、率直な思いを発信し、市民社会との接点や支援のあり方を提示する。
・元受刑者の意見や思いを音声で直接発信することにより、聴取した市民が当事者を身近に感じることができるようになる。当事者の就職や住居の確保、地域コミュニティへの参加にあたっての差別解消に繋げる。
・ラジオフチューズ所在地の府中市には府中刑務所がある。府中刑務所と府中市は防災協定を結んでおり、災害発生時には府中刑務所の施設と敷地を避難所等として市民が活用する取組を行っている。地域FM局の強みを活かし、ラジオ番組では防災情報や、災害時の刑務所の役割なども市民に伝える。
・番組を聴取した受刑者の家族や友人などの支援者が、受刑者本人の社会復帰を支えるための有用な情報を入手し、活かすことができる。
◆助成金額 : 50万円
◆助成事業期間 : 2022年1月~22年6月
◆実施事業の内容:
1月~2月:番組タイトル、放送日、各回テーマ・出演者の決定
3月:構成台本制作と校正
4月11日:第1回放送(再放送4月17日)テーマ:薬物依存
4月25日:第2回放送(再放送5月1日)テーマ:受刑者家族
5月9日:第3回放送(再放送5月15日)テーマ:少年院とは何か
5月23日:第4回放送(再放送5月29日)テーマ:刑務所出所者を支援する弁護士の役割
6月13日:第5回放送(再放送6月19日)テーマ:犯罪被害者と犯罪加害者
6月27日:第6回放送(再放送7月3日)テーマ:町づくり、保護司、防災
*府中市議が出演し、政策提言に繋がる見込み。番組の報道記事等を取りまとめて国会、法務省、大使館等には今後、連携等を打診する。
◆事業計画の達成度:
プロジェクトの目的はおおむね達成できたと考えているが、番組に対する感想等が数件しか来なかったので、聴取者の具体的な感想が分かりづらいが、新聞、ラジオ等で多く報道された事で社会的認知度は高まったと考えている。
番組に出演した元受刑者のうちの一人は、現在は刑務所を出所した人の「更生支援」の仕事に従事しており、ラジオ出演がPRの機会となったほか、大勢の人に向けて話すことが本人の自信やモチベーションの向上に大いに繋がった。
◆連携効果:
監獄人権センターのラジオ番組制作スタッフは、制作開始前にラジオフチューズで「ラジオ番組制作ワークショップ」を受講し、ラジオ放送の基本的知識や番組制作について学んだほか、初回放送の際に構成台本の添削を受けた。
ラジオフチューズで放送されている他の番組の出演者と情報交換等をすることができ、市民による番組作りの参考になった。
ラジオ番組制作のプロであるラジオフチューズのスタッフの方々からフィードバック(下記)を頂いたので、番組継続の際に活かしていく。
◼︎テーマ:リスナーにとって回毎のテーマ設定が明確でわかりやすかったと思います。
◼︎進行:
・オープニング:毎回番組の趣旨を簡潔に説明されたので、初めて聴くリスナーも理解できた。
・内容:テーマに沿ってゲストのエピソードが語られるので、わかりやすかった。またゲストもエピソードも、ほとんどのリスナーが日常耳にしたことがない貴重な話で、強く印象に残る内容が多かった。第5回目のスズキさんの被害者と加害者の話はエピソード自体が具体的に語りにくい事案だったのだろうか、少しわかりにくかった。
・エンディング:さらりとしめられて、次回も聞きたいと思わされるエンディングだった。
◼︎地域性:府中刑務所の話や、多摩地区の弁護士の活動、保護司の活動などコミュニティ放送局の地域特性にも目配りされた構成もあり、エリア内のリスナーは身近なテーマの番組として聞けたと思う。
◼︎音声:塩田さん、くまさんは聞き取りやすい。ゲストの方も、聞き取れないような箇所はほとんどなくおおむね明瞭でした。
◼︎放送局(番組)への反応:
・電話:再放送時間の問い合わせが2本
・メール:他番組へのメールで刑務所ラジオについて言及
◼︎番組の聴取者数
・FM放送波(87.4MHz)の受信者数:府中市とその周辺部の約98,800世帯と、隣接自治体エリアの車載ラジオが受信可能。具体的な聴取数は不明。
・インターネット放送(ListenRadio)の聴取者数
第1回:10、第2回:11、第3回:15、第4回:9、第5回:11、第6回:16
◆成果と課題:
(1)当事者主体の徹底した確保
放送全6回は各回必ず元受刑者(当事者)の方に出演頂いた。受刑者家族、犯罪被害者遺族も出演した。地域活動や町づくりの当事者である保護司、市議会議員も出演した。
(2)法制度・社会変革への機動力
府中市の結城亮市議に出演して頂き、防災や再犯防止、社会復帰支援の観点からお話いただく事ができた。9月の府中市議会で「再犯防止推進計画」に関する質問をして下さる事が決まった。
(3)社会における認知度の向上力
メディアからの取材依頼が相次いだ。新聞11紙、ネットメディア2社、福祉情報誌1誌に「刑務所ラジオ」の記事が掲載された。ラジオ3番組に司会がゲスト出演した。
(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
刑務所出所者であり犯罪被害者遺族でもある人に出演してもらい、自身の思いを語ってもらう事ができた。
(5)持続力
2022年7月~12月まで月一回(毎月第二月曜日よる10時~10時29分)、「刑務所ラジオ」全6回を再放送する事が決定している。それ以降は、引き続き助成金等による支援を受け、番組を継続したいと考えている。
◆今後の展望:
2022年7月~12月まで月一回(毎月第二月曜日よる10時~10時29分)、「刑務所ラジオ」全6回を再放送する事が決定している。それ以降は、引き続き助成金等による支援を受け、番組を継続したいと考えている。
保護司等、地域でできる支援活動に参加する市民が増えること、番組で紹介した住居支援の制度等を利用して、刑務所出所者がより良い社会復帰をすること等に資することを目指す。
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