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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)連携プロジェクト助成報告

特定非営利活動法人子どもアドボカシーセンターOSAKA(2023年1月)

連携団体:

一般社団法人子どもアドボカシーセンターNAGOYA 

 

助成プロジェクト名:

 子どもアドボカシーセンター ネットワーキング プロジェクト

 

共通テーマ

 子どもの権利条約が国内で批准され、児童福祉法が改正された今も、子どもの伝えたい思いが伝えたいところに届いていない現状がある。子どもの意見が聴かれ、考慮されることのないまま、子どものSOSが届かず、命が奪われていくような虐待事件も後をたたない。児童相談所や施設等において、子どものことなのに、子どもの声を聴かずにおとなのよかれで進められていく。子どもは持てる力を発揮できなかったり、自分の人生にかかわるようなことの決定にも子どもの意見が反映されなかったりする。また、一時保護所や施設における虐待も後を絶たない。

 すべての子どもが自らの権利の実現のために、聴いてもらい、意見表明する権利を持っていることは子どもの権利条約でもうたわれている。1日もはやく、子どもの声を聴きにいこうと、とりわけ声が聴かれる必要があるのに聴いてもらえていない施設や一時保護所などへのアドボカシーを手掛けようという思いを強くもつ市民団体が立ち上がり、センターを運営するようになってきた。意見表明支援制度化の動きとともに立ち上げに加速がかかり、当初のテーマの立ち上げ支援に加えて、立ち上がった団体の連携をつくることが他団体からも求められていることがわかり、今後の連携が大きなテーマとなった。

 

プロジェクト目的

 子どもアドボカシーセンターOSAKA(以下OSAKA)のメンバーは、子ども情報研究センターにおいて、SJ助成を活用して、子どもアドボカシーの活動を展開してきた。児童養護施設、障害児施設を訪問し、子どもの声、声なき声の大切さを実感した。子どもアドボカシーセンターNAGOYA(以下NAGOYA)では、すべての子どものアドボカシーを目標に学習支援の場や児童館などに子どもの声を聴きに出向き、2022年7月からは、一時保護所への訪問アドボカシーもスタートした。

 子どもの人権が大切にされ、すべての子どものアドボカシーを実現していくために、ネットワークをつくることは不可欠である。2つの団体の活動をかえりみて、アドボカシー活動の独立性の大切さがみえてきた。今後、連携していく団体と、独立性など、重要と思われるところを継承しあい、全国のリーダーとしてこの2つの団体を軸に、広くネットワークを構築し、すべての子どものアドボカシーをめざす。

 子どもアドボカシーセンター(以下アドセン)の機能を充実させる必要があることも、この助成期間中にみえてきた。連携PJで集まる回を重ねるごとに、活動が進化しているそれぞれの団体の報告があり、そこに追いついていかない事務局機能もみえてきた。いかに基盤を強化するか、そこにどの資金を投じるか、そして、いかに独立性を担保するかつながり考えていく、それをすべての子どもの権利の実現につなげていくという目的がみえてきた。

 機能を備えたセンターを広げていくためには、2団体よりもたくさんの団体が連携して取り組むことが、子どもにとって安心できるアドセンが全国に広がるきっかけとなると考えられる。

助成金額 : 50万円 

助成事業期間 : 2022年1月~22年12月

実施事業の内容: 

2022/1月~ 毎月第3火曜日 

子どもアドボカシーセンターNAGOYAとOSAKAで連携ミーティン

・2022/2/27 13:00~15:00(オンライン)

第1回情報交換会 7団体参加 ⇒各団体立ち上げのきっかけ・今の強み 

・2022/6/5  13:30~15:30(ハイブリッド)

「子どもアドボカシーセンターフォーラム2022」~子どもアドボカシーセンターをつくろう~現状・課題・未来を語る!

・2022/8/21 13:00~15:00 (対面実施)

「子どもアドボカシーセンターフォーラム2022」~子どもアドボカシーセンターの役割と課題~アドボカシーの文化を築く

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(写真上=子どもアドボカシーセンター連携フォーラム第2回:子どもアドボカシー学会の設立に集まった方々に知っていただき、ご意見をいただく目的で開催)

・2022年9月、12月 

子どもアドボケイトの募集・採用方法の検討 

・2022年10月 

アドボケイト養成について検討 情報交換会

・2022/12/18 15:30~17:30(オンライン)

「子どもアドボカシーセンターフォーラム2022」~子どもアドボカシーセンターの現状とこれから~

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(写真上=子どもアドボカシー連携フォーラム第3回:9団体による報告とパネルディスカッション、4人の研究者からのコメントでこの連携PJのまとめとし、次につなぐ)

・2022/12/19~ 

子どもアドボカシーセンター連携団体へのアンケート実施

・2023年1月 アンケート集計

 

事業計画の達成度:

 すべての子どもの人権が大切にされ、すべての子どものアドボカシーを実現するには、各地にアドセンが必要であると考えている。それを実現するためには、全国に先駆け立ち上がったOSAKA、NAGOYAがまずセンター機能を整え、それを発信しながら、各地にでき始めた団体と連携し、情報交換、運営・活動の相談にのることが、子どもの声を聴き、権利の実現をめざすアドセンを全国に広げていくことつながると感じている。そのようなセンターには3つの機能を果たすため事務局をおくことが不可欠である。

 3つの機能とは1.子どもアドボケイト養成講座、2.全国のアドセンとの連携、3.子どもアドボカシーの実践(児童養護施設、障害児施設、一時保護所、学習支援の場等において)、である。

1.子どもアドボカシー養成講座については、10月に何度か情報交換の場を持った。独自のプログラム、自治体が主催する講座、NPOなどが企画したものなど、それぞれの学びがあった。アドボカシーの質を担保し、養成されるアドボケイトにばらつきが出ないよう、子どもアドボカシー学会(以下学会)が開発したカリキュラムと実施要項をすべての団体が使用していく方向性を見出した。

2.アドセンの連携においては、今年度においては2回の情報交換会、3回の子どもアドボカシーセンターフォーラムの開催に加え、折に触れて情報交換や相談の機会をもった。毎回、SVやコメンテーターとして研究者に加わっていただき、ご意見をいただきながら、今後の方向性を見出した。各団体の運営面の現状や課題が、それぞれを高め合う結果となった。

3.子どもアドボカシーの実践においては、OSAKAとNAGOYAの先駆的な活動の報告をまとめ、そこにつながった各団体の地域での実践例も追記し、今年度内に発信し、次年度からの各地の子どもアドボカシーの活動で活かしていけるようにする。

 以上の3つの機能をOSAKAとNAGOYAは整えていっているが、12月に開催したフォーラムでは10団体が活動の報告と課題、展望などを発表しあい、学び合う良い機会となった。最後に行ったアンケートでは、「全国各地の様々な先進事例を聞くことができ、とても学び多い機会だと思う。全国の方々と繋がる機会はなかなか自団体のみでは作れないので、今後も広げていってほしい。制度づくりへの影響力も高めてほしい。」「今後もいろいろな団体と連携していきたいと考えている。」との感想が寄せられた。このことからも各アドセンが連携していくことは不可欠かつ有意義だと改めて感じた。

 

 連携フォーラムを3回にし、すべて研究者4名にご参加いただきコメントをいただいた。学会に所属する研究者の方で、今後、養成講座やネットワーキングの研究という分野でのつながりを見出すことができた。助成期間が終わった1月以降は学会の内部にアドセン連携ネットワークを作って、定期的に情報交換や話し合いをし、研究者からのアセスメントをいただきながら、各団体での連携をさらに進めていき、強化していくことをしたい。具体的に4つの項目をあげる。

本当のアドボカシーを全国に広める

各団体は各地域で展開している本当の子どもアドボカシーをアピールし、全国のモデルとして広げていく。全国基準を整え、行政から独立し、市民性をもった本来の子どもの活動としてのアドボカシーを根付かせる。学会で、アドセン団体会員の審査基準を設け、アドボカシーの理念のもとで活動している団体と出会い、モデルをつくっていく。

各地域にアドセンが立ち上がるのを支援する

 養成講座を受けた人たちがつながってアドセンを作っていけるように、立ち上げ支援の仕組みを作る。

各アドセンの基盤強化をしていく

現時点では人数・予算が少なく、安定した活動ができていないアドセンが多い。行政とも向き合うパワーも兼ね備え、ネットワークの立場から政策提言もしていけるように、各アドセンが強い組織になっていけるような基盤整備の方法をさぐっていく。

評価指標の作成をする

アドセン・アドボカシーの評価指標を日本でも作って、アドセンの認証評価もしていく。各アドセンが行っているアドボカシー活動は意味のある活動だと社会的に評価されるような指標を作って発信する必要がある。イギリスを参考にして日本でもアドセン・アドボカシー活動の評価指標を作って、認証評価もしていく。

子ども・若者の参画と連携を増やす

 アドボカシー活動の当事者は子どもである。その参画や連携が今は十分でない。今後は増やしていけるよう、情報交換しながら進めていく。

 

連携効果:    

 OSAKAでは2017年全国で初めて施設訪問アドボカシーを開始した。NAGOYAでも先駆けて団体を設立し、両団体の理事である堀正嗣、OSAKAとともに、養成講座のカリキュラム作りや実施方法の整備、アドボカシーセンターの構築を進めている。

 それらの経験を伝えることで他団体が自団体の運営に活かしている部分もあるが、OSAKAやNAGOYAにとっても、自分の団体が訪問をしていない施設(小学校など)に訪問をしている報告を聞いたり、地域や行政が違えばこんなにも違うのかと感じる地域差、児童養護施設や一時保護所といっても場所が違えば雰囲気や訪問内容も随分変わってくるのでそんなことを情報交換することで、学びが深まったり、活動のヒントになったりすることも多い。

 さらに、横のつながりをもつことで、一丸となって全国にセンターをつくろう、良い制度ができるよう国に働きかけようと機運が高まっている。そのことは、引いてはすべての子どもが自らの権利の実現のために、聴いてもらい、意見表明する権利を行使することにつながっていくと信じている。

 子どもアドボカシーにおいては、OSAKAは個別アドボカシー、NAGOYAはシステムアドボカシーに重点をおく活動になっていたところがある。子どもの声を届け、権利の実現にはどちらも必要で、重要であることを連携により改めての気づきとなり、それぞれの実践方法から学び合った。

 

成果と課題:

(1)当事者主体の徹底した確保

 各団体との連携方法やセンター構築を進めていくときに、ユースや施設経験者の声を反映させていくことができた。元当事者が運営している団体や、当事者の話す場を持っている団体との出会いがあり、聴かせていただくことを大切にした。訪問アドボカシーを実施している団体は、活動の中で子どもに出会い、子どもから学ぶ機会に恵まれている。アドボケイトの養成のことでも、講義、演習だけでは不十分なことを子どもは感じさせてくれる。今後、実習、OJTをどこの団体でも確保していく。

(2)法制度・社会変革への機動力

 2020年よりモデル事業が開始され、2024年には制度化されることが決まっているが、それがより良い制度となるために、各地のセンターに所属するアドボケイトが日々研鑽を積み、よい実践を重ね、それを報告しあい、学び合いながら質を高めていく。そしてセンターはアドボケイトが学んだ知識、積み重ねた実践から見えてきたことを、国に提言していけたらと思っている。

 また、できあがった制度が、とりわけ声が聴かれる必要があるのに聴いてもらえていない施設や一時保護者などに入所している子どもでも利用でき、地域格差を生まないことも重要であると念頭に置きながら活動を発展させていく必要がある。

 連携PJをきっかけにたくさんの団体とつながることができたことは、力も増大したと考える。制度化に伴い、決まったことに対しての意見、変革は、今まで以上に困難もあるかもしれない。力の結集で臨みたい。

(3)社会における認知度の向上力

 近年マスコミでも取り上げられることが増え、少しずつではあるが社会における認知度はあがってきているように思うが、誰もが知っているというレベルにはまだまだたどり着かない。悲しいことに、過去には子どものSOSがおとなに発信していたにも関わらず、受け止めてもらえなかった結果子どもが命を落とした事件があったが、そのような悲しい事件がおこったときに一時的に社会に注目度があがるのではなく、子どもにも人権があり、一人の人として声が聴かれ、意見表明権を行使する権利を守る活動をしていることを記載した今回の報告書を、OSAKA、NAGOYAのHPにアップし、誰でも閲覧できるようにするとともに、全国の自治体の関係機関にHPのQRコードを郵送にて送る予定にしている。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 学会に所属しないアドセンもあるが、目指すところは他のセンターも同じなので、大切にしているところや地域性など、それぞれの団体間の差異は尊重していく。例えば、違うカリキュラムで開催した別団体の養成講座を受講後、学会所属団体で活動したい場合は、講座内容に大差がないようなら、足りない部分を補講などで補いながら経験を積み、アドボカシー活動ができるようにするなど、融通できるところを探しながら関係を築いていくことを確認できている。

(5)持続力

 全国各地にアドセンができなければ、すべての子どもが等しくアドボカシーサービスを受けることは難しい。ただ、センターで受け取った子どもの声をそのままに、ただ子どものために、必要なおとなに届けるには、センターが独立機関でなければならない。しかし、独立機関であり、民間団体であるセンターが活動を持続していくための資金・人材の確保には課題が山積みである。今回の情報交換会、フォーラムでも、毎回、この課題が出された。

 各地にアドセンができ、それぞれの活動や運営が進んでいくなかで、アドボカシーの理解が異なってくることも考えられるが、共通理解や最低限大切にしていきたいことをどのように共有し、バラバラになっていかないかを考え、行動していくことかと思う。

 子どもアドボカシーの活動は、ジレンマとともにあるといえる。語りあい、つながり、提言していける連携があると、ジレンマを抱えながらも、継続していくことのゆたかさも感じられるのではないか。

 

今後の展望:  

 現在は、OSAKAでは一時保護所、施設、一部の団体に所属している子どもに、アドボケイトを派遣している。一方NAGOYAでは様々な場所で子どもアドボカシーカフェを開き、子どもたちにアドボカシーを届ける試みをはじめている。今後は各団体においては全ての子どもにアドボケイトが利用できるようにしたい、すべての子どもがアドボケイトを利用できるようなシステム構築を目指す基本姿勢を持っている。

 子ども側に立ち切ったアドボケイトの養成は、全国どこでも子どもと出会い学ぶことができるように、連携することが重要と共通認識として持っている。

 

~子どもの意見表明から社会変革 子どもアドボカシーのネットワークで実現~

 

 

 

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