ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成
一般社団法人NewScene
SJF助成事業第1次中間報告(23年6月)
◆助成事業名:『2023年統一地方選20代・30代女性立候補者等への質的調査の実施および若年女性等の立候補環境を改善するアドボカシー活動』
日本で、20代・30代の若年女性が政治家に立候補し、選挙活動をする際に直面する困難に関して、FIFTYS PROJECTが2023年春統一地方選で支援する、ジェンダー平等に貢献することを主軸に集まった20代、30代の女性立候補者等*への質的調査を実施する。その後インタビュー・アンケート内容を学術的手法に則り分析、日本において、20代、30代の若年女性が直面する政治家への立候補および選挙活動の困難について明らかにする。
その調査結果をもとに、改善すべき問題とその解決策を明確化、国、地方自治体、メディア**それぞれに対してアドボカシー活動(政策提言)を展開し、20代・30代の若年女性が政治家に立候補し、選挙活動しやすい環境整備を実現する。
*対象:トランスジェンダー女性を含む女性、ノンバイナリー、Xジェンダー等
**調査結果によっては、アドボカシー活動の対象が変化する可能性がある
◆助成金額 : 300万円
◆助成事業期間 : 2023年1月~2024年7月
◆実施した事業と内容:
【選挙関連事業】
2023年4月の統一地方選挙でジェンダー平等の実現を目指す20代・30代の女性(トランス女性を含む)、Xジェンダー、ノンバイナリーの方の立候補を呼びかけ、当選に向けて以下のような支援を行なった。
・候補者支援
- 立候補を考える方との個別面談
- 候補者コミュニティの運営(定期的なオンラインミーティング、候補者のグループLINEなど、候補者を孤立させないネットワークづくり)
- 選挙準備CAMP(2022年11月)、候補者お披露目イベント(2023年1月)、統一地方選振り返りイベント(2023年5月)開催
- 選挙準備に向けた連続講座(全6回、オンライン)、政策勉強会の実施
- 個別相談会の実施
- ボランティアによる各候補者紹介記事の公開
・選挙ボランティアと候補者を繋ぐ活動
- 投票以上のアクションがしたい人向けにイベント開催(参加者30名)
- FIFTYS PROJECT COMMUNITY(ボランティアコミュニティ)の運営
- ボランティアポータルサイトの開設
・広報
- 「私たちの人生に『政治家』になる選択肢を」 パンフレット制作・配布(2175部配布)
- 「FIFTYS PAPER」の制作・配布(7060部配布)
- 「ハラスメントのない選挙運動を!」ポスターの作成、配布
結果として、統一地方選挙ではFIFTYS PROJECTとして29名の候補者を支援し、24名の女性議員が誕生した。
都道府県議会議員選挙 2人挑戦・当選0人
政令指定都市議会議員議会選挙 2人挑戦・当選1人
一般市区町村議会議員選挙 25人挑戦・当選23人
(写真上=FIFTYS PROJECTが今回支援した立候補者とプロジェクトメンバー)
【調査関連事業】
調査は、「一般社団法人 社会調査支援機構チキラボ」に依頼を決定した。2023年5月、FIFTYS PROJECTで支援した立候補者を対象に、統一地方選振り返りイベントを開催した際、チキラボから荻上チキさんをお招きし、アンケート、また、ワークショップ形式での質的調査を実施した。
現在、データ分析作業が進んでいる。
(写真上=選挙後の振り返り会では、FIFTYS PROJECTで支援した立候補者が集まり、ワークショップ形式で選挙に出る上での障壁や乗り越え方等について意見を出し合った。ここで出た意見は今後分析し、若年女性が立候補しやすい社会を作るために活かされる)
◆今後の事業予定 :
2023年5月〜9月 アンケート調査・インタビュー調査結果の集計・分析
2023年10月 インタビュー結果の公表・記者会見
2023年11月〜12月 アドボカシー内容の検討・案の作成
2024年1月〜7月 国会会期中(総務省に関することのロビイング・提案)
2024年1月 各地方議会での展開方法の作戦会議(全国会議実施)*オンライン
2024年2月〜7月 地方議会でのロビイング活動/各議員の政策推進支援
◆助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望:
【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。
とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、どのように変化したのかも記載。
(1)当事者主体の徹底した確保
若年女性の立候補の壁を明らかにするための調査対象を、FIFTYS PROJECTで支援してきた方々にすることで、トランスジェンダー女性を含む女性、ノンバイナリー、Xジェンダー等の10-30代の当事者が対象となることはもちろん、一定期間共に過ごした間柄でこそワークショップによる質的調査はより深い部分まで選挙の経験を言葉にしてもらえたように思う。
また、本プロジェクトは、性的マイノリティを含む10代、20代の女性で運営されており、その点からも当事者主体の確保は徹底されている。
(2)法制度・社会変革への機動力
アドボカシーは今後調査結果を元に展開されるため、まだ書ける部分では無いが、FIFTYS PROJECTはすでにNHKを含む大手メディアにも複数回取り上げられており、今後調査結果の発表、アドボカシーをしていく際には社会に訴えるための充分な基盤が整ってきているように思う。
また、24名の議員が全国に誕生したことで、アドボカシーもより的確かつ確実に行えると考える。
(3)社会における認知度の向上力
同上になるが、FIFTYS PROJECTはすでにNHKを含む大手メディアにも複数回取り上げられており、密着取材も行われた。また、LUSHとコラボし、渋谷店でイベントなども開催ができ、その活動範囲、認知度は広がっている。
加えて、資金集めのために行った2回目のクラウドファンディングでも、775人から支援をいただき、1回目の640人の時からその数は増えている。そういった点から見ても、認知度は向上していると考えられる。
(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
こちらもアドボカシーは今後調査結果を元に展開されるため、まだ書ける部分では無いが、全国にFIFTYS PROJECTで支援した議員が24名誕生した今、これまで以上に様々なステークホルダーと関係を築き、声を上げられることを実感している。ステークホルダー・アナリシスを丁寧に行い、新たにできた繋がりも活用しながら丁寧な議論を重ねていきたいと思う。
(5)持続力
2回目のクラウドファンディングが900万円以上を集め終わったところで、来年度の運営が可能となった。また、それに加えて持続的な運営のためにマンスリーサポーター制度を導入し、現在160名を超える支援者から毎月約23万円の支援をいただける形が整っている。引き続き継続的な活動のための地盤を整えていきたい。
【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。
(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。
今回、27名の候補者を支援する中で、やはり「女性」に加え「若年」であることによる立候補への困難が複数あることを強く感じた。その根本要因は、若年女性が議会に少ないからこそ、その困難が可視化されることも対応されることもないままに放置されてきたのだと思う。
(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。
その根本課題を解決するには、やはりその壁を可視化し、かつその壁を打破するために熱量を持って具体的に政策を進める人が必要となる。FIFTYS PROJECTで当選した方はまさにその変化を起こす人たちであるので、ダイレクトに課題解決に貢献できると考える。
(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。
今回の選挙を通して、若年女性として立候補する際、やはり地方の方が孤立しやすく、ジェンダー平等を訴えて支援を得ることが難しいことがわかった。そういう意味でも、もっとジェンダー等について地域に密着した活動をする人たちと連帯し、ジェンダー平等を訴えて議員になれる土壌を整えていくことが有効と考える。 ■