ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成
NPO法人デートDV防止全国ネットワーク
SJF助成事業第2次中間報告(23年12月)
◆助成事業名:『デートDV防止から始めるジェンダー平等な社会づくり』
デートDVは深刻な人権侵害であり暴力であることを社会全体に啓発し、デートDV予防教育や啓発グッズの作成などを通して、ジェンダー平等社会の実現とDVや虐待など暴力の連鎖が起きない社会の構築を目的とする。
デートDV予防教育は、学校現場の子どもたちや教職員だけでなく、社会の構成員全てが学ぶ必要があるものだと考え、企業の経営者や労働組合、行政担当者、国会議員や地方議員など社会システムに関わっている全ての層に対して啓発を行う。さらに、障がいのあるカップル、LGBTQ+など、当事者のコミュニティと交流しながら、どんなプログラムを届けることが有効かを考える。
◆助成金額 : 300万円
◆助成事業期間 : 2023年1月~2024年6月
◆実施した事業と内容:
(1)啓発講座
・企業研修について
デロイトトーマツ社が社員向けにDV被害者支援システムを作っていることがわかり、社会的包摂サポートセンターの遠藤智子氏を通じ連絡を取ることができ、8月8日DEIチームの話を聴くことができた。社会にDV被害者が一定の割合存在するなら、会社の中にも被害者がいるはずだと仮定し、支援システムを作ったとのこと。社員向けの研修とスプリング・フォーラムへの登壇などを依頼し、社員向けの研修を担当させていただくことが決まり、10月27日、11月14日に打合せし、12月11日に阿部事務局長が登壇する。
9月25日、九州教具株式会社に社員向け研修をさせてほしいことを依頼し、12月21日と22日の2回に分けて実施することが決まった。
・議員勉強会
8月15日ロビイングチームで方向性を検討し、木村弥生江東区長を通じ、アプローチを考えたが、木村氏から断られた。9月26日の理事会にて、再度方向性を検討し、野田聖子議員へ働き掛けることを決め、アプローチしたがまだ返答を得られていない。11月15日塩崎彰久衆議院議員と面談はできた。以上から、議員勉強会の開催については難航している。
・障がいを持つ当事者団体や施設
8月町田市内の施設に打診をしたが断られた。11月神奈川県内の身体障害者施設に打診したが断られた。
12月3日理事会で再度アプローチ先を検討し、大阪の放課後デイサービス、LITALICOなどを候補に決めた。
・LGBTQコミュニティ
大阪のLGBTQ支援団体であるQWRC(くぉーく)での実施が決まり、11月8日QWRC担当者と打合せをし、LGBTQコミュニティで抱えている問題や事例などを共有してもらった。11月28日(火)18時半から20時に、プライドセンター大阪の会場にて「ヘルシーなパートナーシップの築き方」を実施した(写真下)。8名が参加し、デートDVの概要についての講義ののち、境界線ゲーム、恋バナゲームなどのワークショップを実施した。
感想より)
・ちょうど良い人数で、沢山の意見が聞けました。
・セクシュアリティのことも含めて安心して話せた!!
・恋愛のテーマについて、いろんな考え方を知ることができてよかったです。普段は話せないような会話ができてよかったです。
・パートナーシップで如何に相手を尊重しながら関係性を築いていきたいなと思います。
上記のように、担当者からの聞き取りや打合せを活かして、セクシュアリティに配慮したワークショップを実施することができた。この経験を活かし、もう1団体の実施先を見つける。
(2)シンポジウムの開催
デートDV防止スプリング・フォーラム2024は、3月10日(日)オンラインで実施することを決め、11月15日今年度のテーマや登壇者について検討した。12月3日理事会にて、テーマを「ヘルシーリレーションシップ」に決めた。
デロイトトーマツの高畑氏からは登壇について承諾を得ている。
(3)ユースプロジェクト
8月2日、8月31日と打ち合わせをし、カードゲームの内容を検討した。ガールスカウトにてゲームの試行を4回(9月9日、9月30日、10月14日2回)実施し、フィードバックをもらうことができた。
入稿に向け、デザイナーの選定をしている。
◆今後の事業予定 :
- 啓発講座
・企業研修
12月に九州教具株式会社で実施予定。
・議員勉強会
引き続き議員へのロビイングを続ける。
・障がいを持つ当事者団体や施設
引き続き実施先を検討する。
・LGBTQコミュニティ
ReBitの薬師代表を通じ実施先を検討している。
- シンポジウムの開催
3月10日開催に向け、講師の選定をしたのち、1月中には広報を始める。
- ユースプロジェクト
各地のユース団体を招き交流会を開催する。カードゲームを披露し、フィードバックを得たのち、スプリング・フォーラムで結果を発表する予定。
◆助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望:
【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。
とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、どのように変化したのかも記載。
(1)当事者主体の徹底した確保
QWRCでの実施に向け、LGBTQコミュニティ特有の課題について共有いただき、細かい配慮をしたうえで啓発講座を実施することができた。コミュニティが狭い故の課題、多様なセクシュアリティ、当事者であることを知られたくないからDVの場合でも相談しにくい、などの聞き取りをしたうえで当事者が安心して参加するための配慮ができた。
(2)法制度・社会変革への機動力
議員勉強会の開催を検討し、議員へアプローチをしているが、衆議院の解散が浮上したり、隣接する他の問題(共同親権)について優先順位が上がっているなどの理由で現時点では進んでいない。しかし、文部科学省の視察を受けるなど関係構築が始まっている。
(3)社会における認知度の向上力
横浜市内で6月末に起きた女子大生殺害事件により、デートDVについての報道が続いた。新聞やテレビで取り上げられたことで認知度が少しずつ向上した。
同時に、デートDVという言葉がどうしても他人事として捉えられることが多いことから、ヘルシーリレーションシップというポジティブな言葉での啓発を始めた。QWRCの講座の告知も「ヘルシーなパートナーシップ」としたため参加者を募ることができた。
(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
当初、企業へのアプローチでは、DVは個人の問題で企業が扱うことではないと断られることが続いたが、決してそうではないと積極的に取り組んでいる会社に出会うことができた。デロイトトーマツ社の取り組みをスプリング・フォーラムで取り上げ広く伝えることで、社会全体にインパクトを与えたい。
(5)持続力
本活動を継続するために、ユースプロジェクトは鍵となるが、学生らを中心とした活動は卒業するとメンバーが入れ替わり、活動が継続しにくい悩みがある。当団体では縦のつながりの弱さを横のつながりで補完することを目的に、スプリング・フォーラムでのユースプロジェクト同士の交流を大切にしてきた。今回のスプリング・フォーラムはオンラインに決めたが、大阪の団体からの希望もありユースだけは交流できる機会を作り、情報交換してもらうこととした。
【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。
(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。
「ジェンダー」であり、人と人とが対等でないことが当たり前だとされる序列偏重社会だと考える
(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。
デートDV予防教育は、10代のうちに人と人とが対等でお互いを尊重しあえる関係(ヘルシーリレーションシップ)を伝える教育である。デートDV予防教育の必要性を学校関係者だけでなく、より広い視野で伝えていく。
(3)この助成をきっかけに実際に連携が進んだことはあるか、あるいは今後具体的な計画はあるか。
DVを個人の問題ではなく、経営戦略としてDV被害者を支援する必要があるとして取り組んでいる企業に出会えた。今後はこの取り組みを当団体の会員で共有し、さらにスプリング・フォーラムで広く知らせる。 ■