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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第14回助成中間1次報告

一般社団法人 反貧困ネットワーク(2026年6月)

助成事業名・事業目的

「在留資格がない高校生・学生の声を本にして社会に届ける活動

 在留資格がない仮放免の高校生・大学生・専門学校生たちは、みずからの「子どもの権利」が踏み躙られていると認識しており、それについて声をあげたいと希望してきた。しかし、これまでは入管に「目をつけられる」ことを危惧して、公の場で発言してこなかった。

 しかし、入管庁の「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」発表以降、子どもとその家族の強制送還が相次いでおり、仮放免高校生・学生たちは、日本で勉強を続けたい、その理由を日本の市民社会に理解してもらうべく、声を届けたいと希望している。

 当団体はこれまで50人の仮放免高校生・学生を支援し、大学生チューター30人が伴走してきた。本事業では、仮放免高校生・学生の「私たちはここにいる、これからも居続ける」という訴えを、チューターがサポートしながら文章化し、ライフストーリーの形で本にまとめ、仮放免高校生・学生の姿が見えるように、その声を社会に伝え、市民社会の理解を求める。

 

助成金額 : 100万円 

助成事業期間 : 2026年1月~27年3月

報告時点までに実施した事業の内容: 

・本づくりのための学習会を、1回目(2025年10月20日)、2回目(2025年12月14日)に続いて、3回目を2026年2月22日(21人)、4回目を4月12日に実施した。

・学習会には仮放免高校生・学生および伴走している大学生チューターが参加。

・また、25年10月と12月にワークショップを開催し、グループに分かれて、チューターがファシリテーターとなり、お互いの経験を共有した。

・そのほか、チューターが個別に高校生・学生を訪問してストーリーを聞き取っている。

・書籍化にあたって、チューターが聞き取って原稿にするが、仮放免高校生・大学生は「取材」の「対象」ではなく、みずから発言の主体であることにつねに留意している。本事業を進めている間にも、仮放免の子どもについては複数のマスメディアの記事やドキュメンタリーの題材になり、書籍もが刊行されているが、「御涙頂戴」になりがちである。本事業では、高校生・大学生の生き生きした姿を、本人たちの語りを通じて表現することを目指す。

 

・2026年10月から本の出版に向けて原稿をまとめる。12月には完成原稿を作り、3月までに出版する。

・すでに数人についてはサンプルとなる章を作るために、聞き取りや書き起こしが進んでおり、原稿の執筆にもとりかかっている。

・5月25日に本の内容・予定を話し合った。

 

現段階で扱う予定のテーマ

・「進学」(進学にまつわるエピソードをすべて入れる。入学拒否の問題、進学後にも学費を集めるために大変な努力が必要なことなど)

・「家族関係」(仮放免なので家族が仲良くなくても助け合いせざるをえない、家族が一致団結する、家族の中の女性の位置、高校の時に結婚、DV、離婚、結婚相手の家族とうまくいかなかった、しかし実家の家族が離婚することを含めて全面的に受け入れてくれた。)

・「ジェンダー」(日本でなら女性が教育を続けられるが、帰国するとその機会がなくなる)

・「排外主義」(実際の経験、排外主義的な政治への不安)

・「友だち」

・「ヤングケアラー」

・「医療」

・「通訳ボランティア」

・「家族の収容」

・「結婚、離婚」

・「アイデンティティ」

・「在留資格をもらって・・・」

・「今後の夢」

・「困窮」「誰かの気まぐれな優しさに頼らないと生きていけない(Jさんは看護師と決めたのはお世話になっていたおばあさんの意見。人に頼って生きざるをえない。しかしそれによってサバイバル能力を身につけたことも事実。しかし、日本人に気に入られる人しか生き残れない。)

・「周囲の人間関係」(コミュニティのサポートと搾取。日本の支援団体からもいろいろ押し付けられる。そういうなかでしか生きざるをえない。)

・「いじめ」

・「帰国」

 

高校生・学生ごとに章に盛り込む内容

Aさん 入管の暴力

Bさん・Cさん 排外主義(SNSで被害に遭った)、ジェンダー

Dさん ヤングケアラー、医療(親が仮放免で病院に行けなくてさらに病気が重くなる)

E ジェンダー、通訳ボランティア、ヤングケアラー

F 家族の中で在留資格がもらえない、収容された経験(兄)

G 結婚、離婚

H 存在とアイデンティティ(名前を名乗れない、存在していないことにされる、匿名性、住民票がない、日本にいたのにトルコにいたと書けと言われた。)

I 在留資格をもらってバイトをして経済的だけでなく、成長した。

J 高校(担任に「送還されようがされまいがどうでもいい・・・」)

K 学校(いじめ、早稲田の学会のイベントでそれについて話したことがある)、家族(長女としてのプレッシャー)、進学、仮放免状態での就職活動

Lさん 高校、進学、排外主義

Mさん 恋愛

Nさん 仮放免状態での就職活動、帰国

 

学習会での話し合いで共有された今後の留意点

・章の内容を考えるにあたって、チューターから、仮放免の高校生・大学生が「市民社会に共感してもらえる『仮の像』を作らないと支援を受けられない」問題が指摘された。他の団体から支援を受けていても、それを知られると、チューターが支援してくれなくなることを危惧して言わない、在留資格をもらえたのに「もらっていない」と言い続けた高校生もいる。支援者に対してこういう態度であらねばならない、と高校生に思わせてしまう問題については、チューターが書いた方がよいテーマとして、チューター当事者から提案があった。

支援者にとって必ずしも受け入れられやすいストーリーではなくても、当事者の語りを尊重することが確認された。ただし書籍化は、仮放免の若者について知ってもらい、共感してもらうことも目的なので、市民社会にとって心地よくないストーリーをどのように盛り込んでいくかは検討が必要ということも指摘された。

 

(写真=仮放免学生たちのイラスト:
上:専門学校での勉強で実技は得意で成績も良いが、学科の試験は科目が多く、読む本も多くて苦労している自分をイラストの題材にした。

下:子どもたちが将来の職業の夢を語っているところをイラストにしてくれた。イラストの描き方は、お姉さんが得意なので教えてもらった。)

Kaida SJF

Kaida SJF

 

 

助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか。

(1)当事者主体の徹底した確保

 本に掲載する仮放免高校生・学生のストーリーは本人が語るものであり、チューターが聞き取るが、内容については高校生・学生に毎回確認をとっている。

(2)法制度・社会変革への機動力

・日本で小・中・高校を卒業した若者に在留特別許可を付与することを院内集会などで働きかけている。集会では元仮放免の学生が司会をし、当事者が話す内容については、支援者が方向性を決めることはしていない。

・在留特別許可に加えて、大学・専門学校による受験・入学拒否の問題については、チューターの提案で仮放免の学生が記者会見を行い(1/27)問題を喚起することができた(紙媒体のメディアのみの取材)。

・大学・専門学校の受験・入学拒否問題としては、文科省との交渉を継続しており、2026年5月28日付で文科省の「大学入学資格ガイド」に、「在留資格の有無に関わらず、学校教育法関係法令上、その定められた要件を満たす者には大学入学資格は認められるところであり、その上で、被仮放免者や被監理者の入学を認めるか否かは、各大学の判断に委ねられます。」(p.23)と記載された(当該サイトはこちら)。ただし「入学を認めるか否かは、各大学の判断に委ねられ」るのではなく、在留資格や国籍を問わない一般入試において、在留資格を理由に入学拒否することは不当な差別に当たることを認めてもらうべく、主張していく。

(3)社会における認知度の向上力

 本事業を担う「仮放免高校生奨学金プロジェクト」への取材の依頼は多く、映像メディアからの取材は原則として受けていないが、新聞・雑誌については取材に同意する高校生・大学生がいれば、紹介し、プロジェクトに関わる支援者も同席して取材を受けている。その結果、複数の媒体に仮放免高校生・専門学校生が登場しており、認知度は向上している。

「強制送還におびえる外国籍の子どもたち—『ゼロプラン』発動で」(2026年3月4日毎日新聞キャンパる)こちらから

「やっとスタートライン—仮放免へて看護師に合格したガーナ人女性の夢」(2026年6月9日朝日新聞)こちらから

「外国ルーツの子どもの権利をどう守る—暴力の標的になったり、教育の機会が奪われたり…国会内で集会」(東京新聞2026年4月23日)こちらから

「『頑張っても無駄』そんな社会でいいの?」(週刊金曜日2026年4月17日1565号)こちらから 

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 文科省との面談を重ねて関係性を構築し、上述のように「大学入学資格ガイド」に仮放免であっても入学資格がある旨の記載が実現した。今後も面談・交渉を続けることができる関係性にある。

 入管に対しては、仮放免の若者が社会に定着していることを、さまざまな形で間接的に示すしかない現状である。とはいえこれまで支援してきた64人の仮放免高校生のうち20名が在留資格を得ており、大学・専門学校に在籍中の仮放免の若者が強制送還されたこともないことから、学校をつうじて日本社会に定着していることは在留資格取得にあたって肯定的な要素として考慮されていると考えられる。

(5)持続力

 当事者で進学した仮放免の学生(在留資格を得た学生も含まれる)が、プロジェクトの担い手として活動してくれる。またボランティアの学生も卒業で去っていっても次の世代が参加してくれる。学生が自主的な企画を立てて、本プロジェクトとは別に仮放免の若者や子どもと交流するなど、活動の裾野が広くなっているため、今後も担い手がいなくなることはなく、持続していくことが可能と考えている。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目について考察。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか

 日本の学校に通うことで子どもたちが社会統合されている事実を考慮しない入管行政が根本課題だと考える。欧米では、非正規移民の子どもがその国で生まれたり、学校教育を受けることにより社会化される現実を重視している。日本の入管行政は、10年あるいは20年以上前に親がどのようにして日本に入国したかにこだわり、10年間、あるいは20年間、どのように生活してきたか、という社会化の過程を評価しない。一度「失敗」したら社会でやりなおしができない構造になっている日本社会に通底する問題だと考える。

 入管法違反は、被害者がいない犯罪と言われるが、事実、労働力不足の現場で働くこと、子どもが大学まで進学して看護や介護の仕事を目指していることなど、問題視する要素がないことを犯罪とみなす制度に問題がある。

 

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか

 仮放免の若者当事者が発言するシンポジウムや集会の参加者の反響は好意的で、ほとんどが「(そのような現実があることを)知らなかった」というもので、事実を知ることで、子どもの権利の観点からも、子どもに在留資格を付与することに賛同する市民は多いことをシンポジウムなどを開催するたびに実感している。

 しかしシンポジウムや集会は1回限りのイベントでありリーチできる層は限られている。また、昨今は排外主義の高まりが深刻であり、本事業でも、当事者が参加するイベントの告知は積極的に行わず、移民支援のNGOのMLでの告知に留めている。オンライン配信もできる限り録画視聴できない形式にしているため、1回限りのイベントである。

 したがって本を出版することで、恒常的に仮放免の若者の声を届けることができ、若者とその家族が在留特別許可を得る運動の支援の裾野を広げることができる。

 

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 おもに日本人を対象とした子ども・若者支援団体との連携が有効だと考えている。困難を抱えた日本人の若者を支援する団体は、社会から「はみだしてしまった」若者への理解が深く、学業挫折やヤングケアラー、「毒親」問題など、外国人支援に特化した団体が扱ってこなかった問題への対応についても造詣が深い。 ■

 

 

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