ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第77回開催報告
政治参画のジェンダー平等
~最初の一歩を踏み出して~
2023年5月20日、ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)は、石森あいさん(練馬区議会議員)、おのみずきさん(世田谷区議会議員)、山口かおるさん(新宿区議会議員)、三浦まりさん(上智大学法学部教授/パリテ・アカデミー共同代表)、申きよんさん(お茶の水女子大学教授/パリテ・アカデミー共同代表)をゲストに、町田彩夏さん(パリテ・アカデミー シニア・トレーナー)を司会に迎えてSJFアドボカシーカフェを開催しました。
今年4月に行われた統一地方選挙で女性が躍進したことを三浦さんは提示しました。そこには、地域の女性を支えるネットワークを広げ、クリエイティブに選挙スタイルを作り出した新人議員たちがいます。
一般社団法人パリテ・アカデミーを卒業した新人議員の石森さん、おのさん、山口さんが町田さんのコーディネートで、統一地方選をジェンダーの視点でふりかえりました。1歳の子どもの面倒を見ながら選挙活動をやり通した石森さん。若い女性たちと地域の経験豊富な女性たちのコラボレーションによるサポートを受けたおのさん。障がいがある人でも活躍することができる社会を目指したいという思いが根本にある山口さん。一人ひとりの選挙活動の歩みが未来を担う子どもたちのロールモデルを増やしています。
市民と政治家がつながり続け、社会を変えるには? と問いかけられました。手作りの政治感に立脚することの大事さを感じた地方選挙だったと町田さんは述べました。若者が身近な疑問から政治に自分のスタイルで関われる機会を広げていけたらと意見交換がなされました。
何が一番みんなにとっていい社会なのか、議論し共有し合意をとっていく過程がジャスティス(Justice)をかなえる社会をつくる方法の一つだとの考えを申さんは示しました。パリテ・アカデミーはジャスティスとインクルージョンとリスペクトを土台にジェンダー平等の実現を目指しています。
詳しくは以下をご覧ください。
(写真=上左から 上村英明さん、町田彩夏さん、申きよんさん、
2段目左から おのみずきさん、三浦まりさん、山口かおるさん、石森あいさん)
町田彩夏さん*司会) パリテ・アカデミーではシニア・トレーナーとして講座の運営だったり、SNSと政治について講演をさせていただいたりしています。
お茶の水女子大学の修士課程を修了しておりまして、研究テーマは「twitterにおけるジェンダー関連政策への反応の分析」をしておりました。まさに政治とSNSというところを専門にしています。普段は、「政治アイドル」として、フェミニズムや若者と政治についての発信も行っています。
本日の流れは、このようになっています。最初に、三浦先生そして申先生から統一地方選挙の振り返り、またパリテ・アカデミーとは、というところをお二人にお話しいただきます。
それが終わってからパリテ・アカデミー卒業生によるパネル対話ということで、石森あいさん、おのみずきさん、山口かおるさん、そして私の4人で今回の統一地方選挙振り返りながらお話をして行きたいなと思います。
その後、グループ対話の時間があり、本日ご参加のみなさまで、このパネルを聴いた感想や、統一地方選挙を振り返ってどうだったといったお話をしていただきます。その後に、各グループでどういうお話がなされたのか、せっかくなのでシェアするために、話し合ったことを簡単に発表していただくという形になっています。
それを踏まえて、最後にまた登壇者と参加者の対話があり、終了となります。どうぞよろしくお願いいたします。
では早速、パリテ・アカデミー共同代表のお二人からお話をいただきたいと思います。
——三浦まりさんのお話——
皆さんこんにちは。パリテ・アカデミーの共同代表です。
まずこの間の統一地方選を振り返って、そこにパリテ・アカデミーも大きく貢献したと思っておりますので、パリテ・アカデミーってどんなところ?ということについて、皆さんにご紹介をしたいと思っています。
女性が躍進した統一地方選
統一地方選は、皆様も報道でご存知のように、女性が躍進をした結果となりました。道府県議会は14%まで女性の割合が増えています(統一地方選のタイミングは四年に一度ですけれども、いろいろとずれるので、データに都議会は入っていませんが)。その前が10%だったので、とても増えたということが分かります。
全国の市議会ですと22%。それから驚くのは東京都の特別区ですね。こちらはもう36.8%ということですから4割弱です。町村議会でも15.4%です。今日皆さん全国からご参加いただいていると思いますけれども、首都圏だと、もう3割から5割が普通という状況になってきています。
男女同数か女性が過半数の議会というのも全国10か所で誕生しています。4年前の時にはゼロでした。町議会だと50%というのが過去にもあるけれども、市議会では4年前でゼロだったのが、今は10もあるということですので、女性と政治の景色が随分と変わったのではないかと思います。
また区長さん、首長さんも増えましたね。東京都の特別区だと3人が新たに誕生して全部で6人になっています。全国でも7人ということになっています。
やはり首都圏中心に女性が多かったのが、今までの景色なのです。都市部であるということは入ってくる人口が多く、しがらみのない選挙運動ができるような地域を中心に、女性が立候補し当選をしていたのが状況でした。また、全国的に見るとやや東高西低といいますか、東の方が女性が多く、西の方、とりわけ九州とか四国地方は女性が少ないというのが一般的な傾向だったのです。
ところが本当に驚くべきなのは、この県議会の様変わりです。東京都議会で見ると2022年末も今も3割超えていますが、22年末では2割を超えたのが京都しかなかったのです。それが今回の選挙で、香川・岡山・鹿児島で2割を突破しているのです。それはすごい快挙だと思います。
岡山の前回までが15%ぐらいだから5ポイント位の上昇ですけど、香川や鹿児島でここまで増えるのかというのは、私自身も正直驚きました。鹿児島には女性議員が一人も戦後に誕生したことのない垂水市というところがあって、4年前に、そこに「鹿児島県内の女性議員を100人にする会」の皆さんが本当に入り込んで、1人誕生させたのです。
その勢いが続いていて、今回は市議会レベルでも女性がゼロの議会は無いという状況です。
地域の女性を支えるネットワークを広げ、クリエイティブに選挙スタイルをつくり出す
こういったことを見ていると、都市部だけではなく、地方であってもその地域に女性のネットワークがあって、お互い支えあって、女性を押し出す、そういった基盤があるところでは女性が着実に増えているということが見えてきます。つまり、私たちがこれからもっと女性の参画を促すためにはできることがたくさんあって、女性たちを支えるネットワークを各地域でつくり出していく、そういうことがあれば、一般的には不利といわれるような状況があったとしても、それを乗り越えることができるのだ、ということを今回の統一地方選は示しているのではないかと思います。
今回改めて思うのは、女性のボランティアを増やそうという動きや、いわゆる昔ながらの昭和スタイルではない新しい選挙スタイルを試そうといった運動も各地で広がったことです。
女性が上位当選していることがすごく目立ちます。つまり、有権者は今までの選挙のやり方に必ずしも納得していないし、多くの人は投票することさえ諦めてしまって、投票率も地方選など4割ぐらい、極めて低いわけです。
新しい選挙スタイルというものを、それぞれが自分のスタイルに合わせてクリエイティブにつくり出して、地域の女性ネットワークを広げていくと確実に女性議員が増えていく。そのためにも、パリテ・アカデミーのネットワークからもそんな楽しい新しいアイディアが誕生しています。
これからのパネル対話ではそういった経験を皆さんと共有しながら、お一人おひとりが自分はこれもできるよといったアイディアを交換する場が生まれていったらいいなと思っています。
どうもご静聴ありがとうございました。では、申きよんさんにバトンタッチします。
——申きよんさんのお話——
皆さんこんにちは。パリテ・アカデミー共同代表です。私は普段、お茶の水女子大学で政治学やジェンダーについても教えています。
私からは、パリテ・アカデミーに焦点を当てて簡単に活動を紹介させていただきます。
パリテ・アカデミーは、若手女性の政治リーダーシップを養成することを目的として、2018年3月に設立された一般社団法人です。
皆さんもご存知のように、また先ほどの三浦さんの話にもあったように、日本の政治家に長らく性別や年齢・キャリアなどに著しく偏りがあったために、社会に実在するさまざまな市民の声が政治に届かないという状況が続きました。
そのような状況を変えていくべく、とりわけ若手女性やマイノリティの人々が政治に参画しやすい道をつくりたいと思って、この5年間、一生懸命活動を行ってきました。ちょうど今年で設立5周年を迎えますけれども、この5年間で2回の統一地方選挙がありました。パリテ・アカデミーからは20名近くの女性議員が国政から地方まで誕生しています。今回の統一地方選挙では初当選の皆さんがたくさん誕生しましたし、再選を果たした議員も誕生しています。
そういった意味で、我々の活動が持続可能な結果を今出しているだろうとしていると自負しているところです。
パリテ・アカデミーのメンバーについては、3人の理事体制で運営しております。共同代表の二人は政治学者で、それに加えて非常に強力な西川有理子事務局長がおります。これにですね、修了生の中から一定の研修を受けてプログラム運営ですとか、ファシリテーターを行うパリテ・アカデミーのトレーナーたちが数人います。今回、司会を担当している町田彩夏もパリテ・アカデミーの代表的なシニア・トレーナーの一人です。パリテ・アカデミーのトレーニングでは、これらの我々を含めたメンバーたちが複数体制で楽しく研修を行っています。
パリテ・アカデミーでは今皆さんがご覧になっているような多岐にわたるプログラムを提供しています。今回のように一般市民向けで政治に関する単発イベントももちろん行っていますし、これまではもう少し時間かけて連続セミナーというのも開催してまいりました。
何より代表的なパリテ・アカデミーのプログラムとしては通常、2泊3日のトレーニング合宿というプログラムがあります。これまで毎年1回程度のスパンで5回実施してまいりました。このトレーニング合宿は文字通りに20名程度の参加者が一つの場所に集まって、3日間まるまる合宿を行ないます。ここで、政治に関する実践的・基礎的な知識を身につけるとともに、実際に選挙を戦おうという想定の上で選挙キャンペーンを組み立てて発表するというチームワークを行うような実践型研修を行っています。
本日参加されている皆さんの中でも次回のトレーニング合宿に参加されたいと思う方は、パリテ・アカデミーのTwitterあるいはインスタグラムをぜひフォローしてください。
みんなの人権が守られて平和で、真の民主主義が実現される“Justice”が叶う社会を目指す
これらの活動を通じてパリテ・アカデミーが目指す社会像を紹介したいと思います。
この社会像は3つのキーワードに表しています。まず、「誰も排除することなく、平等に意思決定に参加することができる」という“Inclusion”です。それから「お互いの違いを尊重し合う“Respect”。最後に「みんなの人権が守られて平和で、真の民主主義が実現される」、つまり“Justice”が叶う社会というものを我々は目指しています。
このような社会をつくるために、これらのミッションに共感してくださる政治家や市民がたくさんこれから誕生することを目指して、これからも活動していきたいと思っているところです。皆さんからのご関心と応援をよろしくお願いします。
——パネル対話:パリテ・アカデミー卒業生の新人議員
統一地方選をジェンダー視点でふりかえる——
町田彩夏さん) ここまでで今回の統一地方選挙の振り返り、そしてパリテ・アカデミーの活動の話をしてまいりました。
ここからは実際にその選挙にチャレンジしたパリテ・アカデミー卒業生の皆さんと共にお送りしていきたいと思います。本日は練馬区議会議員の石森あいさん、世田谷区議会議員のおのみずきさん、新宿区議会議員の山口かおるさんにお越しいただいております。
こんにちは。今日はよろしくお願いします。私も皆さんとはパリテ・アカデミーで出会っています。「○○区議会議員」と呼ぶ敬称が初めてで、友人がこういうふうに議員になっていくんだということを、そういう敬称で呼ぶことで改めて実感していて、何かちょっと心にくるものがあるなと感じていました。
ではさっそくですが、皆さんそれぞれ自己紹介をしていただけたらなと思います。
石森あいさん) 皆さんこんにちは。今回の練馬区議会議員選挙で議席をいただきました。立憲民主党です。いま町田さんの言葉を聴いて、私もちょっと込み上げてくるものがあります。
私自身はパリテ・アカデミーの一期生で、シニア・トレーナーとしてトレーニングをする側でも活動していました。
大学を出てから会社員として働いていまして、フランスに移り住んだことをきっかけに、政治のことをもっと考えるようになりました。そして、外から日本を見たときにすごく日本が変わっていってしまっていることを本当に歯痒く感じて、帰国した時にパリテ・アカデミーの一期生講座をやるということで、飛び込んでみたという感じです。今日はどうぞよろしくお願いします。
町田さん) どんな感じの選挙だったか、軽く振り返っていただけますか。
石森さん) 私は12月まで京都に住んでいたので、本当に短い期間で1月から4月までの本当に3か月ぐらいしかなかったのですけど、夫がいつも一緒に街頭などに「夫です」というタスキをつけて付き合ってくれて、そのタスキがすごく目立つので、皆さんから良い反応いただけていました。
また、FIFTYS PROJECTという20代~30代の女性を議会に送り出そうと若い女性たちが立ち上げた団体からも、本当に20歳ぐらいの子たちがいっぱい応援に来てくださって、本当に楽しく、すり抜けることができたなあっていうような選挙でした。
町田さん) 練馬区となると定数や立候補した方がけっこう多かったんですか。
石森さん) そうですね。定数が50人で立候補者数が72人いました。 けっこう激戦だったとそうです。
町田さん)その大激戦を勝ち抜いてみごと練馬区議会議員になられた石森さんです。
続きまして、おのみずきさん自己紹介、お願いします。
おのみずきさん) 皆さんこんにちは。この5月から世田谷区議会議員になりました。よろしくお願いします。
私は、これまでは主に発展途上国の国際協力事業に民間のコンサルタントとして関わるようなお仕事をしていて、会社員としてこれまで5年ぐらい働いてきました。なので、会社員として働く中ではどちらかというと海外のことばかり気にしていて、日本国内の政治のことは1mmも関心を持って来なかった。本当にこの2年前ぐらいまでは一切、政治に無関心だったんですが、2020年のコロナ禍中に夫がイギリスの大学院に留学するというので、私もちょうどその時はコロナ禍で海外渡航制限がされていた関係で仕事がなかったので、会社を一年間休職してイギリスに帯同しました。
ロックダウン下の現地で、偶然にフェミニズムとか、女性の権利をめぐる運動史や、ジェンダーのことを知るきっかけがありました。それから、フェミニズムやジェンダーのレンズを通して社会を見るようになっていきました。
その中で、やっぱりおかしい、今まで私が感じてきたモヤモヤとか、女性として生きる中でのいろんな経験や痛みはこういうことだったんだな、私のせいじゃなくて社会のせいだったんだっていう境地に至りました。この社会を変えるには政治にもっと女性が入ってくる、あるいはもっと多様な人たちが政治に入ってくることがとても大事だなと思い、自分でも政治に入っていくっていうところを意識し始めました。
イギリスから帰ってきて、ちょうど1年前の2022年4月にパリテ・アカデミーの第4期生として女性政治リーダー・トレーニング合宿に参加しました。その時にはすでに地方議員になるという選択肢を考えていたんですけど、自分にできるか、まだちょっと分からないところがあったので、このパリテ・アカデミーの講座を受けてみたんです。
それによって、実際に選挙でいくらかかるとか、選挙ってこうやるんだよっていうのをかなり実践的に教えていただいて、パリテ・アカデミーが背中を押してくれて、「よし、立候補しようかな」と思うことができました。
その一年後、世田谷区議会議員選挙に挑戦して、初当選を果たすことができました。世田谷区は都内で最大規模の人口で今だと91万7千人ぐらいの人が住んでいます。議会の定数が50に対して、今回の選挙では立候補者は75人で少なめだったようです。激戦区といえば確かに激戦区の中でやりました。
上川あやさんという、世田谷区議をもう何期も務められているレジェンドのような、日本で初めてトランス女性であることを公表して立候補・当選したという歴史的にもすごい方がいて、私はこの上川さんが登壇されたセミナーで世田谷区のLGBT施策を紹介しながら「地方議員でもここまで変えられる!」ということをお話されているのを聴いて、「よし、私も地方議員になろう!」って思ったんです。
未来を担う女の子たちにロールモデルを一つでも増やしたい
最初にそういうのもあって、ロールモデルがすごく大事だなっていうのは、自分の経験からも思いました。私は候補当初から次の未来を担う女の子たちにロールモデルを一つでも増やしたいと思いまして、私の例もあくまでそのいっぱいあるロールモデルの中の一個になればいいなと思ったのです。その子たちに見える景色というのをすごく重要視して、今回の選挙をやりました。
先ほど石森さんも紹介してくださったFIFTYS PROJECTに私も参加しているんですけど、それを通じて私を知って応援に来てくれた子たち、20代~30代の女の子たちが選挙期間中は機動力を発揮し、主力ボランティアとして活躍してくれました。
選挙中も女の子たちがいっぱい寄ってきてくれたりしていたんですけど、子どもたちの目にしっかり映っていることを実感しまして、それだけでも選挙をやってよかったなって思います。
選挙で商店街をみんなで楽しく練り歩いたりもしました。こんなに女の子たちが選挙で隊列を組んで歩いているなんて、今まであまり見る機会はなかったかなと思うんですけど、これもいい意味で、まちの人たちにも刺激だったんじゃないかなと思います。こういった景色を当たり前にしていけたらいいなと思っています。
先ほど石森さんも紹介してくださったFIFTYS PROJECTに私も参加しているんですけど、それを通じて私を知って応援に来てくれた子たち、20代~30代の女の子たちが選挙期間中は機動力を発揮し、主力ボランティアとして活躍してくれました。
選挙中も女の子たちがいっぱい寄ってきてくれたりしていたんですけど、子どもたちの目にしっかり映っていることを実感しまして、それだけでも選挙をやってよかったなって思います。
こういった景色を当たり前にしていけたらいいなと思っています。
町田さん) はい、ありがとうございます。私も実はおのさんの選挙ボランティアに行かせていただきました。本当に若い女性が、おのさんを支えたいという気持ちでたくさん集まっていました。
おのさんは今すごく政治家然としてお話をしてくださっていたのですけれども、まちで活動されている時はアクティブで本当に運動靴を履いてどこまでも走っていきますって いうような雰囲気でした。皆さんが想像する政治家の選挙活動っていうのがあるかなと思うんですけど、おのさんは新しいスタイルで自分の足で歩いていって、とにかくいろんな人に目線を合わせて話かけるっていうところが、これがおのさんの魅力だなと感じました。市民と同じ目線で物事に向かっていくっていうのが魅力だなと思いながら、微力ながら一緒にスピーチをしたりしました。
こんな感じで、おのさんの選挙は明るく楽しい選挙でした。
では続きまして、山口さん、自己紹介をお願いいたします。
障がいがある人でも活躍することができる社会を目指したいのが根本
山口かおるさん) はい、新宿区議会議員で初当選させていただきました。石森あいさんとはパリテ・アカデミーの第一期生で一緒でした。町田さんも一緒で、応援にも来ていただいて、本当にありがとうございます。
私は、もしご関心のある方いらっしゃいましたら、ぜひウェブサイトで見ていただければプロフィールの細かいことが出ております。私の父に視覚障がいがあって、全盲なんですけれども、その父が障がいがありながらも支援を受けて、社会で障がいがない人たちと同じように活躍することができるというところを見て育ってきています。そうした障がいがある人でも活躍することができる社会を目指したいというのが根本的なところです。
これまで、国際人権NGOで働いてきまして、その時に国会議員の議員連盟の事務局もやっていましたので、そこから、国会議員からうちに来ないかということで公設秘書になって4年半ぐらいいたのですけれども、コロナ禍で地域が疲弊していく姿を見ていき、この地域をもっと元気にしないといけないんじゃないかというところが、私が今回立候補を決めたきっかけになっています。
新宿は34万人の人口で、その1割、4万人が外国人ということで、さまざまな人たちが一緒に住む多様性のあるまちです。ただ、今回の区議会議員選挙の投票率は38.79%とすごく低いのです。そうすると声が反映できていないのではないかというところがありますので、多様性のある新宿をつくっていくためにも、私も頑張っていきたいなと思っているところです。
ちょっと選挙の様子を見ていただきたいのですけれども、私も練り歩きで商店街も行きましたが住宅街の方もかなり行きました。町田さんも応援に来てくれて新大久保駅前に行きました。
私の選挙は、引退された議員の地盤を引き継ぐということもあり、いろんな事情がありまして、伝統的な昔ながらの選挙もやりつつ、SNSもやりつつと、ありとあらゆることをやった選挙でした。
みんなの力がなかったら本当に難しかったなと思います。町田さんだけでなく海老原由佳さんというパリテ・アカデミーの一期生でトレーナーでもある方が、ずっとウグイスや事務局を担ってくれて頑張ってくれました。なので、パリテの仲間たちが支えてくれたところもあったと思います。
みんなが来てくれる本番の選挙期間は華やかな感じもありますが、それ以外には国会議員に、たとえば海江田万里議員に来てもらい、住宅街に行って手を振っての繰り返しといった地道なこともやりました。また、事前に政治活動として、雨の中でもまちに立って話をするというのを繰り返しやってきたこともあります。
なので、華やかなお祭りの部分だけじゃなく、日々の政治活動としての地道なところの積み重ねというものもあったので、多分お二人もそうだと思いますが、大変なところもあったかなと思います。それでも楽しくできたのは、支えてくれた皆さんのおかげだったなと本当に感謝しております。
町田さん) はい、ありがとうございます。私も、山口さんの事務所開きやスピーチをさせていただいたんですけど、おっしゃっていたようにまさに伝統的な選挙で、頼もしい選挙だなと思いました。いろんな人のバックアップ体制の中で、ちゃんと物事を前に進めていく選挙なんだと感じていました。
皆さんそれぞれ個性があると思うので、こういう選挙で戦う、自分は逆にこういう選挙を戦うという個性が選挙にも出ていると思います。
私はお手伝いに行った3人が全員当選したので、私としてはすごく嬉しかったんですが、本当に三者三様で、選挙と一口に言っても個々人のカラーがこんなにも出るのかっていうのは非常に勉強になったなと思っているところでございます。
いま皆さんから自己紹介や、どんな感じで選挙をやったかということを聞いて、なんとなくこうやって政治活動して選挙になっていくんだっていうところを想像できたかなと思います。なんか統一地方選が始まると駅前でしゃべっている人がいるけど、あの人たちの裏側ってどうなっているかというのは、たぶん皆さんそんなに見られる機会が少ないんじゃないかなと思うので、最初に説明していただいて想像できたかなと思います。
「政治家って、ありかも」と最初に思ったきっかけ
皆さんが選挙に立候補しようと思うようになる動機のストーリーをお話していただいたと思うんですけど、一つ気になったのが、そもそも人生を生きている中で、自分の取り得る決断の選択肢のなかに「政治家って、ありかも」みたいなことを最初に思ったのはどこなのかというのが気になっています。たぶん、一般的な道を歩いて行くと、そこに政治家という選択肢がそもそも視野に入ってこない、まさか自分がその選択肢を取ると思わないっていう人もたくさん世の中にはいると思うんです。それが自分事として選択肢の一つに「政治家って、ありかも」みたいなのが薄っすらでも最初に入ってきたのは、いつぐらいだったのかとか、何かきっかけやエピソードとか、逆に「ずっと私は最初から政治家っていう選択肢が自分の中にありました」でもいいんですけど、そこら辺をお伺いしたいなと思いますが、石森さんからどうですか?
石森さん) 私は大学で政治学を学んでいたのですけど、町田さんの言う通りで、学んでいるくせに政治家になるっていう選択肢は全然考えていませんでした。一番初めに「政治家なろうかな」って考えたのは、フランスに住んでいる時にちょうど第2次安倍政権が並行してあった時です。どんどん強行採決でおかしな法律が可決されていくのを見て、一方でぜんぜん仕事をしない議員の人もたくさんいて、「え、これ、私がやったほうがよくない?」っていう気持ちが一番初めでしたね。それで、「あ、なんか私、政治家、ありかも」みたいな、その時は怖いもの知らずに、そんなふうに考えたのが最初のきっかけです。
町田さん) なるほど。実際に国会の様子とか、日本の社会ニュースとかを見聞きして、「いや、これだったら、自分の人生の選択肢に政治が入ってくるかも」っていうのが最初ですかね。
石森さん) 初めは冗談みたいな感じで「私がやったほうが絶対まだましだ」と思っていたのですけどで、その後に本当にしっかり「あ、ありかも」って思ったのは、やはりパリテ・アカデミーの一期生の5回講座という講座の中で、寺町みどり先生から「人生の中で別に一生にわたって政治家をやらなくてもよく、4年間という短い期間を人生の中で政治家に使う」というアイディアをいただいた時に「あ、なるほど」と思いました。もう一回政治家になったらずっと一生やらなきゃいけないって感じがしますけど、そうじゃなくて、どこかのタイミングだけでやっていいんだという話を聞いた時にすごくしっくりきたのを覚えています。
山口さん) うちの家族はみんな投票には必ずいくという家族で、祖母は市川房枝さんの選挙を手伝っていたり、政治についてはなにか言いたがる家族という感じがあったんです。「自分が立候補しようかな」って思ったきっかけとしては、パリテ・アカデミーかなと思っています。
人権団体で働いていた時に議員連盟があって、国会議員にロビー活動をしに何回も国会に通ったりしていたのですが、その中で法案がつくられていく過程にすごく関心があって、その舞台裏に行きたくて秘書になったっていうのがあります。その後、国政選挙も自治体議員選挙も応援に秘書としてついて行って、いろんな人がやっているのも見ながら、自分がまさかそうやって出るっていうのはあまり考えていなかった。パリテ・アカデミーに関わったのは、自分がついていた議員が政治塾をやるからパリテ・アカデミーで学んできて、ということがあったからです。
それがきっかけだから、最初は裏方だと思っていたのですけど、パリテ・アカデミーに一期生で関わって何年も経っていくなかで、いろんな人が「自分が」ということで立候補していき、一緒に悩みも共有して「私、出たいんだけど、どう思う?」という相談も受け、「それは、こうしたら」という話もしました。最初は「そうか、みんなすごく頑張るな」と客観的に思っていましたけれども、だんだんやっぱり「地域を何とかしたい」と思った時にパリテ・アカデミーが身近にあったということが影響しているかなと思います。
町田さん) ありがとうございます。私も石森さんも山口さんもパリテ・アカデミーの同期だったんですよね。あれから5年も経ったのかっていうのは、すごく驚くんですけど。山口さんの選挙をお手伝いされた海老原さんは合宿のグループワークが同じチームで、当時のことを思い出すんですよね。
私も振り返って思うのは、想像以上にたくさんのパリテ卒業生の方が政治にチャレンジしていて、政治家になるっていう決断はなかなか難しいと思うんですけど、話し合える仲間がパリテ・アカデミーの中にいるということが一つ、皆さんが一歩さらに前に進むことに寄与できたかなと今お話を聴いて感じました。
在職のままの選挙出馬・議員活動を許容してくれた会社
では、ここでおのさんに伺いたいんですけど、おのさんはもともと会社員として働いていたということなので、そのキャリアを一旦脇に置いてと言いますか、また全く別の道に行くわけですよね、政治家になるってなった時は。でも仕事の内容とそれが少し重なれば、まあまあと思うんですけれども、ただキャリアという面で見た時に、会社員から政治家に、ってなると、戻っても階段が2・3段あるかなっていう感じがするんですけど、そこをどういうふうに乗り越えたのか?
また、最初に自分の人生の選択肢に政治家が入ってきたのはどこの段階だったのか、ということをおのさんに伺いたいです。
おのさん) キャリアとしての政治家――私の場合はそんなのを考え出したのはこの一年ぐらいでして。そもそも先ほど言った通り、私はニュースも2年前ぐらいまではあまり見ていなかったですし、国会で何が起こっているとか一切知らないというか、本当にほとんど見ていなかった感じなんですが。
私の場合は新卒で今の会社に2017年に入ったんです。その後数年ぐらいは結構バリバリ海外出張に行ったりして、楽しく働いていたんです。でも3年ぐらいやったら別のことをそろそろやりたいなっていうふうに思い始めていました。最近の若い人たちは結構当たり前に転職とかいろんなキャリアを重ねるようになってきているのかなと思うんですけど、終身雇用が当たり前じゃない時代なので、私もそんな感じで、いつかは転職しようかなと思っていたんです。
そうこうしているうちに、イギリスで強めのフェミニストに転身して帰国しました。そういうなかで、あの上川さんに出会って、上川さんが地方議員の仕事について、もう本当に詳細にお話ししてくださって、自分の中ですごく「あ、政治家ってなんか面白そう」と単純に興味が湧きました。社会を変えたかったし、「このあふれんばかりの家父長制社会への怒りはどうしたらいいんだろう」と悩んでいた時でもあったので、「なるほど、政治家になったら社会をちょっとは変えられるかも」とも思いました。職業としての政治家を考え出したのは、上川さんの講演を聴いてからで、石森さんが寺町みどりさんとの出会いがきっかけだとお話しされたのと似ていますね。
寺町みどりさんは一回目のパリテの時、講師でいらっしゃったんですか?
町田さん) 講師をされていましたね。連続講座の時に来ていただいていました。
おのさん) そうなんですね。羨ましいい。私は上川さんのあの講演を聴いて、「よし、地方議員」と思った後に、寺町みどりさんが出している本で、「市民派議員になるための本」っていう、上野千鶴子先生プロデュースの本があって、あれを結構読み込んだんですよ。そしたら職業としての議員というものが、私の中では解像度が一気に上がりまして、「なるほど、これだったら、やってもいいかも」みたいに思い始めました。
そこからさらにキャリアとして政治家を選ぶっていうのは普通だったら多分ハードルがかなり高いと思います。今回、FIFTYS PROJECTでも同じ時期に立候補した人たちが多かったですけど、みんな仕事を一度辞めて挑戦する人が本当に多くて。単純にそれはすごくリスクじゃないですか。落選のリスクもあるわけだから、本当にハードルだよなと私も思ったんです。
でも私の場合は幸運だったのは、新卒で入った今の会社がその辺は柔軟に対応してくれる会社であることです。イギリス行った時も「一年、休職します」と言ったら「いいよ」という感じで送り出してくれたんですけど、その後帰国して、また翌年に今度は「選挙に出ます」とか言って「半年ぐらい休職します。落選したら帰ってきます」と言って休職したんですよ。それも「いいよ」と言って、「会社としては帰ってきてほしいけど、頑張れ!」みたいな感じで送り出してくれました。
あれは私の中で結構大きかったですね。だからキャリア考えるときに、選挙にはどうしても落選のリスクがある中で、セーフティネットとして今の会社が席だけでも置かしてくれることがすごく大きかったです。
こういう事業者側の対応がもっと広まったら、女性の皆さんが、「やりたいけど、どうしよう。今の会社を辞めて出るのは、どうしよう」といった悩みを持っている人たちはいっぱいいると思うんです。民間企業でも、何かできる事がまだまだあるなあと私はすごく思いました。
町田さん) そうですね。在職立候補制度というか、会社を辞めないでもそのまま立候補できるという制度があると、そのハードルは少しはやっぱり下がりますよね。
おのさん) そう、下がりますね。落ちたら戻ればいいと思えるので。
町田さん) 確かに、選挙は精神的にも身体的にも本当に疲れると思うので、戻る場所がちゃんと確保されていることは、安心してチャレンジする土台にもなると思うので、そういう制度がこれからより多くの企業で広まっていくことを願いたいと思いますね。
おのさん) 私は今回当選して、「じゃあ会社どうするの?」と結構言われるんです。私の会社では一応今のところ4年間休職延長にする予定です。
町田さん) おお、すごいです。次の選挙も一応安心ですね。
おのさん) その頃、私の居場所があるのかというところは置いといて。でも一応、政治家の4年間の政治生命の中に何があるかわからないですけど、何かあっても会社がある。
町田さん) 素敵なバックアップ体制が、これからおのさんだけじゃなく、いろんな人にも広がってほしいと思います。
こういう経緯があり、皆さん今回選挙にチャレンジして政治家、議員になったということですけど、実際にこの選挙や政治活動をやっていく中で、苦労したことや遣り甲斐でも構わないですし、それが事前に想像していた通りだったという感じなのか、予想だにしてないことが毎日起きて大変だったということでもいいですし、実際に選挙活動をしてどうだったかをお聞きしたいと思います。
山口さん) 私は他の選挙も事務局側でやってきているので、感じた部分も違うのかなというところはあります。
私が想像していた以上に批判などは少なかった。女性候補が出ると必ず、立憲民主党の他の若い候補者も本当に皆さん苦労したと聞いてはいるんですが、私はラッキーなことにほとんど無くて。国会議員の女性たちなんかを見ていても、本当にひどいハラスメントがあったのも知っているので、何かあったらどうしようとは思っていました。目の前でビラを破られたり、一時間ぐらい叫んでいた男性が居たりというのはあるんですけれども、その2回ぐらいで、あとはほとんど無くて。
それよりは、むしろ体力と生活力の方が、日々のことなので疲れがたまっていき、大変でしたね。やっぱり人手がとにかく足りないので。他の国政選挙等だと、たくさんボランティアも来ますしお金も集まるのですが、選挙の規模に応じてお金の集まり方も違うし、人の集まり方も違うということは、今回すごく感じました。
1歳の子どもの面倒を見ながらの選挙活動
石森さん) 大変だったのは、私は今2歳の子どもがいるんですけど、選挙期間中は1歳で、京都で保育園に行っていたんですけど、練馬区に来た時に保育園に入れなかったので待機児童になってしまいました。その子どもの面倒を家で見ながら、政治活動もしないといけないのが何よりも大変でした。
一日中外に出ていろと言われるんですけど、朝、駅に立ったらその後に子どもの面倒を見ないといけないから家に戻ってこないといけないし、子どもと遊んだり、お昼寝に付き合ったりもしないといけない。お昼寝の時にまたちょっとお願いして、ファミサポさんや義理の母にお願いして駅に立ったりしていましたけど、とにかく活動時間が限られますし、活動時間以外の時間は子どもにエネルギーをすごく削られることが3月末までずっと続きました。
4月に保育園に入れたのですけど、お子さんのいる方はご存知だと思いますけど、慣らし保育等で初めのうちはそんなに長く預かってもらえないですし、ようやく慣れたなと思ったら風邪をひいてぐずぐずしだしたりとかもするので、本当に冷やひやでした。子どもの風邪が私たちにうつるとまた更に何かつむという感じのこともあったので、3月辺りに1回つんだ時がありました。
事前に思っていたのと、いい意味で違ったと思ったのは、駅や街頭に立つのはビビって何を話したらいいんだろうとか、なんか嫌なことされるんじゃないかなとか思っていたんですけど、実際には優しい方がこんなに世の中いるもんなんだと思うことの方が多かったです。声かけていただいたり、差し入れいただいたり。
だから駅頭は本当に楽しくできていた。逆に、事務作業はこんなに一杯あることを知らなかったので、もう次から次へと降ってきて、先手を打つなんて全然できないので、締め切りギリギリで何とかやるっていう感じでした。夫が協力してくれたんですけど、一人だったらまずできてなかっただろうなとは感じました。
町田さん) それは何の書類なんですかね?
石森さん) 何かのチラシを作るとかポスターを作るとかで、いつまでにどこに何枚とか。作ったら作ったで、今度はポスティングしなくちゃいけない。ポスティング業者に頼む部分もありますけど、折込みを頼んだり。でもそのやり取りも全部しなきゃ行けないし。ポスティング大会とかあると友達が来てくれてやってくれるけど、その一人ずつとのやり取りは全部自分でやらなくちゃいけないから、結局だれかにお願いすると仕事が増える。そういうジレンマみたいなのがすごくありました。
町田さん) 選挙に選挙自体の手続きもありますしね。
石森さん) そうですね。あの選挙管理委員会との細かいやり取りを何回もやるので。また、街宣車を借りるとしたら、看板をどうするかとかも。そういう細かいことがたくさんあったと思います。
町田さん) 傍から見ていると、選挙期間が始まったらマイクを持って駅でしゃべっていればいいのではないかと思ってしまうんですけど、その駅に立つまでにさまざまな役所に行って書類を出したり、掲示板のどこに貼っていいかのくじ引きをしたり、市区町村の全ての掲示板に自分たちもしくはその仲間たちで出張に行ったり、駅で話すまでに実はやることがすごくあるんですよね。
ただ喋っているだけじゃないんですよ。いろんな手続きや、やるべきことがあるというのは、今回私も選挙を見ていて一番驚いた部分ではありました。
おのさん) 手続き的なところを全部自分でやるのは大変すぎますね。
私は生活者ネットワークから今回出たんですけど、最初は無所属で出ようと思っていたんですよ。でも無所属で出ていたら多分、途中で力尽きていたと思います。選挙までたどり着けなかったかもしれない。生活者ネットだと、お金は基本的にネットから出るので、自分の持ち出しはゼロなんですよ。事務的な作業も基本的には事務局がやってくださっていて、立候補にかかる書類も全部作ってくれたし、いわゆる看板を何処に設置してとか、ポスターを今どこに貼った、どれだけ張り替えたとか、ポスター掲示場所一覧も更新してくれていたし、その業者とのやり取りとかも全部やってくれていました。
基本的には私はどちらかと言うと、チラシの中身を考えたりデザインを考えたり広報をどういうふうにやっていこうとか、クリエイティブなこと、戦略みたいなところと、あと人手についてはサポーターの子たちとの調整に集中できた点で、私はすごくラッキーだったんだと今聞いていて思いました。
町田さん) 生活者ネットワークはけっこう手厚い感じでしたか、選挙の時のサポートは。
二軸のサポート 若い女性たちと地域の経験豊富な女性たちのコラボレーション
おのさん) 全部自分でやるというパターンに比べたら手厚いと思うんですけど、とは言え、人がたくさんいるのかと言ったら、そんなことは絶対なくて、やっぱり常に人は足りない状況は本当にその通りです。
コアになる人たちがいない問題。それは、選挙やってみてやはりすごく大変だったと思うところです。選挙本番になれば、今回の選挙が近づいてくる3月後半から4月にかけては、どんどん応援の輪が一気に広がり、世間の注目度も「そろそろ選挙だ」ってなるから上がってくるし、サポーターの子たちも一気に増える。
でも、そこに至るまでの選挙前数ヶ月間の地味な活動、山口さんもおっしゃっていましたけど、朝早くから駅に立ったりとか、朝から街頭でスピーチしたりとか、戸別訪問でピンポンして「こんにちは。みずきです。おのみずき、よろしくお願いします」みたいなのを私も何千件とやりました。それも一日ひとりでずっとやるようなこともあって本当に辛かった。
統一地方選が春なのでそういうのは冬の時期にやっていて、寒さと孤独と疲れ。しかも周りは誰もいない。支援してくれる人はいるんですけど、現場で行く時はやっぱり一人だし、ピンポンする時も一人で行くときも多い。孤独とサポートの無さと。こんなんで後2か月で当選できるのかなあとすごく悩みましたし、あの時期が一番思った以上に心にきましたね。
町田さん) 選挙というと、投開票前後1週間だけ選挙みたいな気がしますけど、そもそも政治活動は年中行われていることですし。問題は、平日の昼間に皆さん演説とかされると思うんですけど、平日の昼間は多くの方は働いていらっしゃったりして、人手が無いことなんですよ。誰かの力を借りるところが無い感じで、誰が選挙を手伝えるのかという問題は結構大きいと、私は今回の動きを見ていて感じたところでもありました。
おのさん) 私は今回の選挙は二軸でやっていたんです。二軸というのは、一つはいわゆる選挙に割と近くなってから集まってくれたFIFTYS PROJECT等を通じて知ってくれて集まってくれた20代~30代の若い女性たちです。その彼女たちが機動力もあるし、チラシもガンガンまくし、SNSもガンガン拡散するし、フットワークも軽いんです。
もう一つの軸が、地域でずっと長く活動されてきた、生活者ネットを支えてきてくれたような60代、70代、最高齢で87歳の方もいらっしゃって。全員女性なんですけど、そういった人たちが、もちろん忙しいんだけど、現役世代みたいにフルタイムで働いているわけではないから、朝街宣の時に一緒に立ってくれたり、場所取りしてくれたり、戸別訪問の時に持っていくチラシを折る作業など、地味なんだけど絶対必要なことを結構やってくださっていました。
この二軸のコラボレーションかなと思いました。現役世代だけですべてやるのは現実問題、今の選挙制度だと難しい。平日は動けない問題があって難しいなあと思ったんですけど、そういう地域に長くいる人たちと上手く役割分担して一緒にやって行くことが必要なのかなと思います。実際、今回の選挙はそれでなかったら難しかったと思います。
町田さん) 特に地方議員というのは、その地方政治・地方自治に一番コミットして行くお仕事だと思うので。国会議員だと、例えば東京都から選ばれて国会に行くとか、秋田県から選ばれて国会に行くとなったとしても、国会で大きいところを見るわけですけど。地方選挙というのは、まさに一番小さい構成自治体の中をどう変えていくか、政治をやっていくかというところが一番大事なので。その地域の方々とつながって地域をよくしていくところが肝になるというのは今お話を聴いていて思いました。
市民と政治家がつながり続け、社会を変えるには
名残惜しいですが、そろそろ最後の質問に入っていきたいと思います。
選挙終わりました、で、特に女性議員が前回の選挙と比べて非常に増えた。別に 5割5割になったわけじゃないけど、まあ増える傾向にあると。でもその歩みの進み方はもっと早くできるものなら早くしたいじゃないですか、私たちも。そんな次4年後にあと10%とか言わずに、もう次の選挙でできればfifties、50%・50%、パリテになったらいいなと思います。
そのためには、選挙の時だけ何かしようというのではダメだというのを感じていて、これから4年間、次の選挙まで、皆さんは任期が始まったばかりだと思うんですけれども、市民たちがどういう活動、どういうサポートを議員の方々にできるとよいか。市民が議員と直接は関われなくても市民の地域活動でどういうことをやっていったら、よりジェンダー平等が、パリテが進んでいくのか。こういうサポートを私たちにしてくれたらうれしいなとか、市民に期待すること、逆に、市民の声を聞かせてほしいでもいいんですけど、市民と皆さん政治家がつながるようなお話ができたらと思います。私たち市民が政治家といっしょに何かできることを伺いたいと思うんですがどうですかね。
おのさん) ちょうど明日、今回の選挙をきっかけに集まってくれたサポーターの子たちとミーティングをやるんです。それこそ今後4年間、どういう関わり方ができるのか。サポーターのみんなも幸いなことに選挙で終わりじゃなくて、「これから私たちには何ができるんですか」とか、「何をやったらいいんですか」というような人が嬉しいことに多くて、その想いをどうやって受け止めていこうかというのはちょうど私も考えていました。
議会に関連して挙げるなら、4年後まで待たなくてもいいんですけど、できれば次の選挙にもっと多くの女性候補が出てほしいので、議員インターンみたいなのはやろうかなって思っていて、積極的に参加してほしいなと思っています。
私も新人なので、一からなのです。議員協議会って何? 会派って何? みたいなことから今やっています。でも、そういう新人だからこそ市民と同じ目線で、これって何? これっておかしくない? とか共有できると思うんです。だから、議員インターンみたいな機会を使って、一緒に議会にも来てもらって見る・学ぶことで候補者も増えるかなと思っています。
あと、議会傍聴もあるじゃないですか。これも平日にやっているから行けないという問題はあるんですけど、議会傍聴を楽しむコツとか、議会を面白く見る方法とか、そういう視点もSNSで今後発信できたらいいかなと思っています。そういうのも市民のみんなと一緒に考えていきたいと思っています。
議場に傍聴でいっぱい人が来てくれると、それによって動くこともあるらしいんですよ。先輩議員が言っていたんですけど。傍聴席って、普通の議会だとガラガラじゃないですか。平日だから来られないし。でも、あそこが満席、例えばおのみずきの一般質問の時に議場が満席になっていると、それだけで議場にいる人たち、他の議員や理事者に圧がかかる。この議員が言っていることはやっぱり無碍に出来ないと。この人の後ろにはこれだけの市民がいるんだっていうのを目で見ることで、行政側の理事者もスッとなるし、他の議員も一目置いてくれるみたいな。
ジェンダー平等進めていくに当たって、他の議員や理事者の協力も絶対必要なので、そういった形で市民として圧をかけていくというのも、できることかなと思います。なんかやっていきたい。
町田さん) 4年に1回投票するだけじゃなくて、議会を傍聴して、ここに居ますよとアピールすることも政治、社会を変えていく力になるということは新しい発見だと思いました。
石森さん) 今、おのさんの話を聞いて、なるほどと思って、すごい参考になりました。
私は地元の人からは、とにかく考えていらっしゃることや、お困りになっていることなどはどんどん教えていただきたいという気持ちがあります。また、地元以外の人だったら、SNSなどで私は発信する方なので、そういうのを見ていただいて何かイベントがある時には来ていただけたらすごく有難いですし、拡散してくださるのもすごく有難いです。
すぐには政治家になるつもりがない方でも、SNSで発信をいっぱいするのは、いいんじゃないかなと思っています。若い女性がSNSでこんなに政治のことに興味を持っていることが増えていくことはいいことだし、私自身ずっとTwitterやインスタグラムをやっていて、発信をすることによって、たまに変な人に絡まれたりするんですけど、そういうのを政治家になる前から経験していたから、政治期間中にそんなのが本当に多少は起こるんですけど全然気にならない。強い芯みたいなのができていたので。
それは、政治家になる・ならないに関わらず、日頃から発信を心がけているとプラスになるんじゃないかなとすごく感じるので。
町田さん) 投票して選んで当選した、やったー終わり、じゃなくて、そこからその議員がどうするのか。
選挙の時だけ頑張って全然仕事をしない議員がいるという話も聞いたんですよ。今回お手伝に行く中で、なぜか駅前の演説だけは力を入れているけど、この人議会では全然仕事していないんだよとか、そんなことがあるみたいな。私たち一般市民からしたら、駅前で一生懸命頑張って話している人は絶対議会でも一生懸命頑張って話していると思ってしまうじゃないですか。でも実はそうじゃないっていう話を聞いたりして、びっくりしました。
今回の選挙をきっかけに次この4年間で育てる、ちゃんと仕事していましたということを見ていくし、議員として成長していただいてと言うとなんかあれですけど、市民と政治家が適切な距離を保ってお互いに高め合っていって、社会を変えていくということをできたらいいなとはすごく思いました。
山口さん) 区政報告会等は定期的にきちんとやりたいと思っています。それをレポートにして、できたら郵送もするし、まちでも朝に立って配るという、その積み重ねは大事だと思っています。道でしか会わない方もやっぱりいるんですね。住所も名前もわからないけれども、いつも朝通っているから「頑張ってね」と言ってくれる方もいて。そういう人たちにもしっかりと届けたいという思いはあります。
所属委員会が決まって、私は総務区民委員会というところです。その委員会は、全体的な予算の話や、職員のことも含めて、男女平等の課題や多文化共生の課題もやれるところです。そこでもしっかりとジェンダー平等のことはやりたいと思いますし、投票率を上げることもやりたいと思っているところです。
今度6月に本会議が始まります。 私が代表質問をさせてもらうことになったので、そこで質問をする時には地域の人たちと相談しながら、こういう課題をやってほしいというのを、もう頂いているものがあるので、そこもしっかり詰めていきたいと思っているところです。
町田さん) ちなみに、例えば政治活動をする朝に駅とかに立っている時、通行される方から話しかけられるのは嬉しいことなんですかね。
山口さん) はい、そうですね。反響があるということなので。新宿はどうしても、立っていると、酔っ払っている方もいるんですよ。朝、歌舞伎町で飲んできたんだよっていう人もいるので。でもそういう人たちでもなぜか話していると、「うちはシングルマザーの家庭だから本当に大変なんだよね」という人だったり、少し話し込むと、なんだかんだ言っていろんな話を聞き出せたりするんです。朝は朝で、また別の出会いがあると思っています。
町田さん) 政治家に話しかけるっていうのは皆さんハードル高いかもしれないけど、意外と自分もスピーチしてみて分かったんですけど、誰も反応してくれないより話しかけてくれた方が嬉しいなというのはあったので、ちょっとハードルを感じるかもしれないけど、気になる政策とか、地域で困っていることがあるとか、その政治家の方にこれ聞いてみたいということがあれば、でもいいんですけど、ちょっと政治家に話しかけてみる。4年あるわけですから、そのうちに一回ぐらい直接話してみようかな、なんていうのも、この4年間の私のちょっとやってみようかなと思うリストに入れたいと思いました。
はい、本当に楽しい、楽しいお話をありがとうございました。本当に無事、今日を迎えることができて、皆さん当選れて私もうれしいなあと、ようやく議員になったんだなということ本当にかみしめながらの時間だったと思います。
――グループ対話とグループ発表を経て、ゲストからのコメント――
※グループにゲストも加わり、グループの方々に感想や意見、ご質問を話し合っていただいた後、会場全体で共有するために印象に残ったことを各グループから発表いただき、ゲストからコメントをいただきました。
上村英明さん*コーディネーター/SJF運営委員長) ありがとうございました。これから先は、申きよんさん・三浦まりさん・石森あいさん・おのみずきさん・山口かおるさんと町田彩夏さんに入っていただいて、いろんな意見交換があった中で、言い足りなかったこと、思いの他考えることがあってよかったことなど、ざっくばらんに意見交換をしていただきたいと思います。
石森あいさん) 私はずっとパリテ・アカデミーを運営する側にいて、いつもはそのパリテ・アカデミーの卒業生たちがこうやって話しているのを見る側だったので、皆さんと同じ側に今までいたんですよね。見ていて、「いや、すごいなあ」と思っていましたし、勇気をいただいていました。
選挙と選挙の間でモチベーションが下がる時があるんですけど、みんなが頑張っているのを見て、「ああ、もう私もやっぱり頑張ろう」とか「次は出よう」とか、そういうふうに気持ちを強くしていました。
何が言いたいかというと、今日見てくださっている皆さんと私の間の距離は本当に0.1mmぐらいしか違いはないということをお伝えしたかったのです。本当に次はあなたが出ているかもしれないし、次の会議はこちらで経験を話しているかもしれないし、それぐらい意外と身近なものだっていうことを知っていただけたらと思います。ありがとうございました。
政治が身近になるには
おのみずきさん) その身近に感じるという点ですね。私もさっきグループで話す中で、地方議会って、いや本当に一番私たちの身近なことをやっているはずなのに、なんでこんなに距離があるんだろうという話になったんです。国会はそれこそ外交の話とか遠いじゃないですか。戦争の話とか経済の話とかなんかすごい。でも国会のほうが意外とメディアでは取り上げられていて、最近の入管の話もそうですけど、大きなメディアで報じられるじゃないですか。
変ですよね。地方議会は身近なことを扱っているのに、なんでこんなに身近じゃないの?
そういうところを私は本当に議員になったからには、これはもう議会の中で得た情報はみんなのものだし、どんどん発信したいと思って、今さっそく発信を始めています。とはいえ、発信するだけだと無責任かなと思っていて、本当にみんなが実感として、この地方で起こっていることは私のことなんだと自分事になるような仕掛けを考えていきたいなあと。ちょっとまだアイディア無いんで、アイディア募集中です。お願いします。ありがとうございました。
山口かおるさん) 先ほどのグループでは、具体的に4年後に向けて考えたいとおっしゃってくださった方もいらっしゃいました。パリテ・アカデミーの合宿ではスピーチの練習などもできますし、個別に私たちに連絡くださったら、いろんな相談にのらせていただきたいと思います。
先ほどのパネル対話ではお話が出なかったのですが、選挙に出るとなると人手だけでなくお金も必要なんですよね。その具体的な金額というのは、自分の住んでいる自治体によって、持ち家で家を選挙事務所にして出ることが出来るのかとか、そういったことでも金額が全く変わってしまいます。他の候補者たちがどのぐらい使っているのかを選挙管理委員会に行けば見せてもらうこともできます。そういう話も、4年間あれば徐々に考えて、お金を貯めることもあると思いますし、政党に入れば政党からの支援が出ることもあったりしますし、その辺りも個別にご相談くだされば私が分かる範囲でお話したいと思います。
より具体的なお話をさせてもらいましたが、時間があればあった方が準備期間はいいし、お金も人手も全てあった方がいいことはいいので、早めはやめに準備されるのであれば、全力で私たちも応援したいと思います。ぜひご関心持っていただければと思います。ありがとうございました。
「手作りの政治感」に立脚することの大事さを感じた地方選挙
町田彩夏さん) パリテの皆さんとは普段から連絡を取っているんですけど、こういう形でお話をできたというのもすごく嬉しかったですし、こんなにたくさんの方が参加してくださって、皆さんそれぞれ思うところがあり、考えていることをお話いただいて聴けたことは非常にありがたいなあと思っております。
今回の統一地方選で私が感じたことは、「小文字の政治」がすごく大事だなということでした。私は今まで、国政選挙や都知事選など大きい選挙の応援演説をやらせていただく機会が今まで多かったんです。その中でいざ今回、地方選挙でいろんな区の選挙を実際に自分の足で歩いてみた時に、私たちの生活に一番近いのはこの自治体だよなとすごく感じました。
世間で政治の話が出てくる時は、大文字の政治、国政が一番に出てくるんですけど、実際は私たちの住んでいる市区町村で、どれぐらい何にお金を使っているのかとか、どれぐらい税収があるのかとか、そういうところをちゃんと見ることが大事だなと。
「手作りの政治感」というのが大事だなと思いました。グループの中でも話がありましたけど、鶏むね肉の値段上がったよねとか、キャベツ1個の値段上がったよねとか、そういうところを政治の第一歩として立脚する点にしたいと、今回の地方選挙ですごく感じたところがありました。そういう話をみなさんとできて非常に嬉しかったです。ありがとうございました。
インクルージョンとリスペクトとジャスティスを土台にジェンダー平等の実現へ
上村さん) 実はですね、私の視点からは、三浦さんと申さんのお二人に少し違うことを聞きたいと思っています。
パリテ・アカデミーをSJFで支援する時にずっと頭の中にあったのは「ジェンダー平等」というキーワードです。それから「パリテ」という考え方も印象深く伺いました。しかし、今回、皆さんのお話を聴いてみて、パリテ・アカデミーが掲げる“Inclusion”と“Respect”と“Justice”の土台の重要さ、その理念のもとでジェンダー平等を実現しようと努力されてきたこと、その成果に、すごいなあと改めて思いました。
政治に関心ある人たちは広い視野があり、多様な考えをもっていると思います。それに対し、3つの理念を大事にしながら、女性議員をつくっていくのは大変な面もあるんじゃないかなと思います。その辺り、パリテ・アカデミーでの理念を実現する上で工夫されていることとか、考えていらっしゃることは何かありますか。
三浦まりさん) この理念は、申さんと一緒にパリテ・アカデミーを立ち上げる時に、コアのコンセプトとして話し合って出てきたものです。これがあるから、集まってくる人も一定のこれを共有した人たちになっているのがパリテ・アカデミーの強みだと思うんです。今日もみなさん本当に魅力的なお話してくださいました。それは、パリテ・アカデミーにこの理念があったから集まってきた人たちだということだと思います。
私たちがやっているプログラムの中で一番人気なのは地方議員パネルです。私たちの理念が共有できる地方議員の方たちです。「どうして立候補したのか」と動機を聞くと、その人なりがすごく見えてくるので、日頃の付き合いの中から立候補の動機が私たちと共感できる人をお呼びしています。
そういう魅力的な方が来てくれると、みんなすごく刺激されます。今日は「政治が身近になる」というのが一つのテーマでしたけれども、リアルで地方議員の方が取り組まれていることを見ることによって、すごく刺激を受けて、「私もじゃあ、やってみたい」って気持ちになると皆さんおっしゃるんですね。今日のこの場もそういう場だったと思います。
「なんであなたは政治を目指すの?」、「どういう社会を築いていきたいの?」、その幅はいろいろあると思いますが、このコアの3つのコンセプトによって何らかの形で集約されてくるようなところがあると思います。
この非常に絶望的な日本社会、もう日本なんか飛び出したいと思う若者がたくさんいるのは本当、私もそう思いますよ。でもそうできる人ばかりじゃないし、しなくて済むような日本にどうしたらいいのかっていう踏ん張りどころだと思っています。私たちも人を育てたい。今が底だと信じて私もやっています。そのためにも、この理念に共有する人を集めていき、広げていきたいと思っています。
上村さん) 申さん、+αで聞きたいんですけど、我々も“Social Justice Fund”(ソーシャル・ジャスティス基金)という団体で“Justice”(ジャスティス)を掲げています。ところが政治の問題点を考えるとこれはすごく大事なんですが、生活レベルでこのジャスティスにつながろうとするのは難しい。昨日、私は別のところで入管法の問題を議論していたんですが、この問題なども、身近にその存在は見えにくいかもしれないけれども、それでも僕らが感じないといけないこと、それがジャスティスだと思っています。その辺は、申さんどういうふうにお考えでしょうか。
何が一番みんなにとっていい社会なのか、議論し共有し合意をとっていく過程がジャスティスをかなえる社会をつくる方法
申きよんさん) これは正にここにいる人たちともっと議論していきたいところだと思いますが、私たちもこの3つの中で”Justice”(ジャスティス)のところがかなり議論になりました。
私はジャスティスが入るべきだと強く思っていたんですけれども、ジャスティスという言葉自体が日本でかなり曲解されて、言葉通りの意味じゃないこともある。これを例えば、男性たちが自分たちの正義を貫くみたいな感じで非常に違う意味で受け止められたり、ある国の人権問題を正すために政治的に利用されていたり、そういった問題があるので、ジャスティスを使う時は非常に慎重にしなければいけないということも議論になっていました。
なので、私がさっき説明する時にも、かなり長く説明をしたんです。つまり、誰もの人権が尊重されて、不平等をなくし、平和でみんなが参加できるように真の民主主義が実現されることというふうに、長い説明をしたんです。それぐらいジャスティスという言葉が、みんなが言葉を聞いただけで分かるような言葉ではないということに危機感を感じています。
何が一番みんなにとっていい社会なのかということ、これこそを議論して共有していく、合意をとっていくという過程そのものが一つ、ジャスティスをかなえる社会をつくる方法ではないかと思っているところです。ジャスティスをソーシャル・ジャスティス基金も共有していると私も気づいたので、これからも一緒に何かジャスティスをめぐってやっていけたらなと思っています。
上村さん) ご参加の皆さん、本当にありがとうございました。
今日は広島で何が行われているかというと、G7という、7が付くイベントです。今日はそのG7の中日です。昨日から始まって今日明日3日間やります。世界のいわゆる先進国のトップの人たちの集まりある他、さらに韓国の尹大統領やウクライナのゼレンスキー大統領など関連する国家を含めて、世界のトップが集まっています。そして、どういうふうにこの社会を、というか、この星を運営していくのか、ある種多くの人たちを無視して勝手に決めようという機会とも言えます。その中で、語呂合わせですが、私たちはアドボカシーカフェ第77回をこういう形で開催することができました。
統一地方選挙というローカルな選挙とそこから見える社会のあり方を考える地味な企画だったかもしれません。しかし、このローカルな基盤整備は、民主主義の実現を通して、将来、ナショナルな世界を変え、あるいはグローバルの世界に対して、きちんと向き合うとても重要な社会的な動きだったとも考えています。むしろ、非常にいいタイミングでこうした貴重なアドボカシーカフェを実施できたことに感謝するとともに、パリテ・アカデミーのみなさま、他の参加者のみなさまにも感謝したいと思います。準備をされた方々を含め、改めてありがとうございました。
●次回SJFアドボカシーカフェのご案内★参加者募集★
『障害女性が受けている複合差別解消へ向けて
―「性と生殖に関する健康と権利」選択の尊重と必要な支援を―』
【日時】2023年6月9日(金)13:30~16:00
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※今回23年5月20日のアドボカシーカフェのご案内チラシはこちらから(ご参考)