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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第13回助成中間1次報告

trunk(2025年6月)

助成事業名・事業目的

『例えば「天気の話をするように痛みについて話せれば」2025』

 本企画はトランスジェンダーの人々を取り巻く差別を出発点に、ないことにされがちな立場の声を共有し、発信することで、日本の差別的な法制度を変えていく土壌を作ることを目的としたプロジェクトです。2022年から秋田で継続的に行ってきたプロジェクトで、今回の2025年4回目は、秋田を出て東京で開催します。

  多数決で物事が決められてしまう社会だからこそ、マイノリティ同士、抑圧されているもの同士がゆるく連帯し、同じ問題を抱えている意識を持つことで、社会のシステム、認識を変えていく必要があります。そのため個人の経験、語りを大切にしながら、それぞれが持つ違和感やモヤモヤがどんな社会的課題と繋がっているのか、同じように苦しみ、困っているのは誰なのかを意識する現代美術の展覧会や、発信を同時進行で行います。

 

助成金額 : 100万円 

助成事業期間 : 2025年1月~26年5月

報告時点までに実施した事業の内容:  

 本企画にマネジメントとして関わってくれる方を募集し、1名運営メンバーに加わりました。運営に携わる方には、アートの現場への理解や、本企画の趣旨を理解し、賛同してくれる方にお願いしました。
 デザイナーの決定も行い、趣旨を理解、賛同の意思に加え本展のイメージを十分に理解できるであろうデザイナーにお願いしました。
 会場の初期候補であった、東京大学陳列館の予約も完了しました。ですが、館の予定が埋まっており、4日間の日程しか抑えることができず、現在同時開催できる会場の候補を探しています。第一候補としては、陳列館のすぐそばにある東京藝術大学学生会館です。会館の応募が始まり次第申請する予定です。

 当初は東京藝術大学陳列館のみで、展示をする予定でしたが、希望する日程で会場を借りることができなかったので、同時開催するための他の会場を探しています。
 陳列館は大学の敷地内にありますが、芸術学部の敷地になるため、学外の方は来やすいですが、他の学部の方の往来はあまり見込めませんでした。しかし、現在検討している候補会場の学生会館は、同じく大学の敷地内にありながらも、音楽学部の敷地内にあります。そのため、学生会館でも実施することができたら更に若い学生への周知も強まるはずです。
 有楽町アートアーバニズム(YAU)との、共同イベントも現在計画中です。2022年に、アーティストの活動と街の交流を促進するために始まったYAUとの共同イベントが実現すれば、より多くの当事者たちの目に止まる企画となるはずです。

Kaida SJF
(写真=2023年に秋田で開催された展示の様子)

 

 

今後の事業予定:

 まず展示会場の確定、展覧会会期の決定を行います。
 展示に参加してくれる人たちへの声かけも継続的に行いつつ、フライヤーなどを作るための概要のまとめや、プレスリリースの送付先リストの作成などを行います。

25年6月 デザイナーの確定。打ち合わせ

7月 企画内容の再精査。プレス、チラシ用情報まとめ。デザイン案出。

8月 SNSやラジオ配信にて展覧会概要を発表。参加作家の募集開始。     

   各種メディア等に展示のプレスリリースを公開。

9月 デザインの確定、印刷。各関係元に配布。参加作家の確定。

10月 展覧会会場のレイアウトを確定。

    展覧会会期中のイベントやパフォーマンスの日程 調整。

11月 展示作品の発送受け取り作業、リスト化。 展示開始。

    アーカイブのための記録作業。 撤収作業。作品郵送作業。

12月 展示後の雑務処理。

26年1,2月 アーカイブの方向性検討。

3,4月 アーカイブ作成。各作家への確認業務等。

5月  アーカイブ完成。

 

 

助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか。

(1)当事者主体の徹底した確保

 展覧会の運営として参加してくれた方は、ジェンダーやセクシャリティについて勉強したり、差別問題などに対してとても感度の高い方です。展覧会の参加者だけでなく、運営や、デザインなどで関わってくださる方も積極的に当事者や、普段からジェンダーなどのトピックに関心のある方に関わっていただいています。

 展覧会場だけでなく、この企画そのものが当事者たちにとって安全なものになるように心がけています。

(2)法制度・社会変革への機動力

 社会変革への機動力の1つとして、本企画の展示では視覚芸術の力を用います。作品を作る人もそうじゃない人も、いろいろな表現の方法で展示に参加してもらいたいと思っています。ですが、視覚表現だけでなく、トークイベントや、ワークショップ、パフォーマンスやお茶会など、も積極的に行います。そうすることで、来てくれた方々がもっと自分ごととして、本企画のテーマを感じてくれるはずです。

(3)社会における認知度の向上力

 現在、陳列館での展示に加え、別会場での同時開催を検討しています。会場が数箇所になることで、人の目につく機会がグッと増えます。会期や、時間などを工夫し、すべては見られなくてもこの展示の目的を少しでも多くの人に知ってもらえる工夫をします。

 また、街中でアートイベントを開催してきたYAUとの共同イベントを開催することで、美術館に馴染みのない人にも本企画をアピールすることができます。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 展覧会を、開けば開くほど、色んな意見の人たちに出会う機会が増えます。街中で開催するとなると、多くの反応を受け取ると思います。

 私たちは、この展示で何が正しいのか、ということを伝えたいのではなく、あらゆる立場の困難に直面する人たちがいるということを認識してほしいのです。そのため、相反する立場の人や意見が出た際は、運営内でまず話し合い、私たちの中での受け止め方を考えていけるような会を設けたいと考えています。

(5)持続力

 本企画はこれまで様々な形態で開催してきました。展覧会を開くとなると、とても労力とお金が必要になります。私たちは、展覧会を目標達成のための1つの手段と捉えています。そのため、継続してこの活動を行うために、形を変えながら無理のない範囲でやるということを大事にしています。

 また、アーカイブをしっかり残すことで、企画終了後も多くの人に企画の目的を伝えることができます。そしてこの企画に興味を持ってくださる方たちによって、どんどん活動の輪が増えていくことを目指しています。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目について考察。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか

 同性婚ができない現状や、夫婦別制制度(多くの場合男性の姓)、「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」などの法律や制度が当事者の声を無視し、時代に合わせて変わっていないのが大きな要因です。
なぜ変わらないのか。変えたくない政治的な圧力ももちろん大きいですが、デマや悪質なイメージをSNSなどから受け取り、あまりよく考えずに差別を広げていたり、自分とは無関係で全く違う世界のことだと感じている人の多さも背景にあると感じます。無関心でありながら攻撃的なその空気は、当事者を疲弊させ、声を出す気力や、集まる希望を奪います。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか

 差別や抑圧の形は、驚くほどよく似ています。トランスやクィアへの差別や女性差別、人種差別、宗教的な差別。それらは独立しておらず、複雑に絡み合っています。個人が抱える複雑な状況を無理に簡略化せず、そのまま作品として提示する場は、様々な鑑賞者に自分との接点を見つけてもらえる場として貢献できると思っています。また、「差別に反対する」という1点で作品が集まること自体が、鑑賞者や参加者へのエンパワメントにもなればと感じています。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 参加してほしい人にそれぞれが声をかけて、その声が徐々に広がり、とてもゆるいけれども「私たち」と呼べるようなコミニティーが浮かび上がるように、参加者を増やしていきたいと思っています。この方法が、主催者も参加者もより安全に連帯していくのに有効だと感じます。 ■

 

 

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