ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第13回助成中間2次報告
きりしまにほんごきょうしつ(2025年12月)
◆助成事業名・事業目的:
「外国籍住民への日本語教育等支援を通したエンパワーメント・地域の受け入れ体制の基盤作り事業」
霧島市に転入する外国籍住民が新たな生活の滑り出しをスムーズにすること。外国籍住民の能力が正しく発揮され、周囲に理解されるために必要な日本語力を習得すること。日本語教室を通して地域住民とのつながりを生むこと。多文化共生社会の必要性を訴え、啓発するイベントを実施することで、外国籍住民への偏見や差別を見直す機会を提供する。
◆助成金額 : 100万円
◆助成事業期間 : 2025年1月~26年12月
◆報告時点までに実施した事業の内容(主に前回の報告=25年6月=以降について):
- 生活オリエンテーションの実施
市役所との連携が難航したため、地域日本語教室に来ている参加者向け、第一工科大学の留学生、技能実習生向けの日本語教室で生活オリエンテーションを開催した。
また、第一工科大学の留学生には霧島市で配布している「外国人のための生活ガイドブック」について検討してもらい、わかりにくいところ、もっと説明がほしいところ、翻訳版で欠如している事項などをディスカッションして、霧島市へフィードバックする準備を進めている。
霧島市議会議員へ生活オリエンテーションの必要性を訴え、霧島市役所内の担当課へのヒアリングに同行したり、現状を伝え、議会での一般質問と提案へつないでいる状況である。
- 小中学校や公民館を活用した日本語教室の開催
〇霧島市立天降川小学校での日本語教室(月・木)訪問型
6月30日から2年生のアフガニスタン籍児童への日本語教室が開始できた。現在まで、週2回定期的に実施している。(小学校都合での休講有)
小学校2年に在籍しているが、1年生の漢字が未習得であったり、繰り上がりの計算などでの混乱の解消を中心に指導している。
〇霧島市立日当山小学校での日本語教室(火)訪問型
11月から1年生のベトナム籍児童への日本語教室が開始できた。担任教諭と連携しながら、国語の教科書の下読みや語彙の確認や漢字の練習をしている、日常会話に必要となる語彙やことばを絵カード等を用いて指導している。(例・体調不良を訴える表現など)
〇夏休みに2回の学習支援の実施
国分公民館と隼人姫城地区公民館で外国籍児童のための学習支援を行った。夏休みの宿題を中心に、一緒に解きながらどこにつまずいているのかの確認を行った。支援者からは「夏休みの宿題の量と補習の必要性から、夏休みの前半に複数回行う必要性を感じた」と声があった。また、子どもを連れてきた保護者からの現状の不安を訴えられ、相談に応じる場面もあった。
〇外国籍の大人への日本語教室(金)国分公民館で実施
霧島市で唯一の地域日本語教室を毎週実施している。参加者は週によって変動があるが、地域で日本語を学ぶ場がなく、つながりが持てないと感じていた外国籍の多様な在留資格者が参加している。
生活に必要な情報を中心にロール・プレイ等を通して安全に暮らせるような日本語教室を運営している。(例・病院に受診するときのやりとり、ごみの分別、買い物でやりとり等)
◆今後の事業予定:
- 生活オリエンテーションと就学前オリエンテーション
霧島市で配布している「外国人のための生活ガイドブック」を基に外国人への生活情報案内はしているとあったが、ヒアリング等から、活用できていないことが課題として挙がってきた。多言語化すればいいというものではなく、内容そのものへの情報不足も指摘されているので、今後このガイドブックを霧島市と連携しながら改稿し、霧島市とオリエンテーションの開催を行いたい。
- 小中学校や幼稚園、公民館を活用した日本語教室の開催
児童対象:天降川小学校(週1回)、隼人姫城地区公民館(月2回)、国分公民館(月1回)
保護者・家族対象:国分公民館(週1回)
を定期的に実施していく予定である。
ただ、頻度が上がると日本語教師とボランティア謝金への予算の関係上難しくなるので、予算をうまく按分しながら、霧島市が予算化するような働きかけをする必要がある。
- 多文化共生をテーマにした情報発信イベント
前回検討していた開催は見送り、今年度の活動の報告をあわせてイベントを実施したいと考えている。
外国籍の家族の声を動画で撮影したものやミックスルーツの家族に登壇してもらうなど、霧島市に住む生の声を反映できればと考えている。ただ、現在「日本人ファースト」の考えを歪曲化して捉える存在もあるため、出演等の依頼は慎重に行いたいと考えている。
◆助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:
【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか。
(1)当事者主体の徹底した確保
当団体のスタッフ全員が主体となり、それぞれの活動に取り組んでいる。特に日本語教室では、有資格者4名を中心に行っている。
活動のSNS発信もあり、中学生や高校生のボランティア希望者があり、世代が広がる中で、活動への理解者をどう活動に巻きこんでいくかを検討する必要を感じている。
(2)法制度・社会変革への機動力
霧島市教育委員会の教育長と面談できたことから、学校での日本語教育支援がかなりスムーズになった。
また、前回記述とは別の霧島市議と複数回勉強会や現状報告を行えたことから、12月の一般質問へとつながっている。今回は生活オリエンテーションについて踏み込んだ質問をしていただく予定である。
霧島市長選挙と市議会議員選挙が11月に終わったため、新体制へのアプローチを行いたい。
鹿児島県の労働人材セミナーや多文化共生推進会議での事例発表や講話から、建設新聞で記事になったり、毎日新聞の取材を受け、記事になったり、別の自治体との連携ができ、どのように社会変革へとつなげたかの見識を得ることができた。また、横のつながりの構築になった。
(3)社会における認知度の向上力
新聞記事になった反響や、日本語教室を継続していることが市内の学校に伝わっていると感じている。
SJFの助成を含めた活動全体の事例発表から、県内での認知は上がりつつあるように感じている。
1月には福岡での文科省管轄のパネルディスカッションに登壇者として参加する。
また、隣市の姶良国際交流協会の新会長とも連携を取ることができ、今後の活動への外国籍住民としての視座を得たり、活動への積極的な参加の連携を確保し、姶良市でも広報が広まりつつある。
(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
霧島市国際交流協会や鹿児島県国際交流協会に続き、姶良市国際交流協会との連携は取れている。
しかし、市議会での一般質問を通して、霧島市役所内での「問題をわざわざ掘り起こすな」「やれることはやってる」といった雰囲気をひしひしと感じているので、対立ではなく連携を取るために、お互い最善を尽くしましょうというスタンスで接している。
ただ、のらりくらりと交わされてしまうので、霧島市議の力も借りながら、大きな変革へとつなげたいと考えている。
(5)持続力
前回の記述と同様に、持続できるだけの経済的な面での支援や委嘱となれるように、実績を持って、行政による実施となるように、引き続き交渉したい。また来年12月で全ての活動がストップしてしまうことがないように、代替となる助成金や方策を考えていきたい。
【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目について考察。
(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。
前回の記述の段階よりも、現在世間の鬱屈した外国籍住民への不満や不安を「声に出して非難していい」「面倒だと声を挙げていい」という潮流になっているように肌で感じている。
また、外国籍を雇用する立場の日本人側から、外国籍従業員と人としてはなく、空きを埋めるコマや単なる労働力として捉えた発言を直接耳にしたことで、愕然とすることもあった。
また、教育現場では「日本人は義務教育は受けないといけないけれど、外国人は別に義務教育じゃないから、受けなくてもいいんだ」と認識している関係者もいる。「現場は困っていない」と現状を誤認していたり、子どもの成長に資することよりも、教員の負担や手間を計算してしまう現場の空気感や現状にぶつかってきた。教育機関は外国籍児童や家族のセーフティネット、または地域の治安を守る場でもあることとのつながりが欠如している。
さらに、地域日本語教室は「日本人のお金を外国人に使うのは筋違いだ」と非難されることもある。しかしながら、外国籍住民が日本語能力を身に着けることで、公的機関や病院等での日本人の負担が減ったり、情報に正しくたどりつける安全性の確保などの利点があったりすることを見落としている。
(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。
まず、安定して地域日本語教室を開催できていることから、学校や就業場所という「固定の居場所」を持たない外国籍住民(成人)への安心・安全な居場所を構築している。
次に、子ども達への日本語教室を学校で実施を継続している中で、教員や管理職への「日本語教育支援の必要性」や「日本語教室としての居場所」と{「日本語教育支援」や「日本語教室としての居場所」の必要性の理解を得る}アプローチ{が}できていると感じている。教員と連携しながら、教室活動の補助や外国籍児童の言語力の詳細な把握と報告ができていることで信頼関係を築いている。
また、多岐に渡る継続的な活動の実績から、外部から声がかかることもあり、事例発表を通して別の自治体からの賞賛を受けたことをきっかけに、以前から依頼していた日本語教師のための教科書の提供を霧島市教育委員会から受けることができたりと少しずつ進展を見せている。
先般の選挙以降、また現政権の体制でも外国人に対する批判的な視線や意見は強くなっている。誤解や偏見を解くためにも、来年度中に実施するイベントで外国籍住民の多様な声を反映させたい。
(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。
現在、実績を継続して積み重ねることと並行して、現状も問題を市民や行政にわかりやすく説明するアプローチも進めている。
市議や県議であっても、現状を知らない人が多く、課題を小さい視点で捉えていることがわかったからである。(例・下水道のオイルボールの原因は外国籍住民が住んでいるアパートやマンションの浄化槽からなので改善してほしい、ごみの分別が間違っているせいで住民に迷惑がかかっている)
多文化共生社会には、安心・安全な場所でも学びや交流が必要であることを、訴えていく必要がある。
これまで連携を訴え、つながりを構築してきたのは、
【行政機関】霧島市役所市民課、霧島市国際交流協会、霧島市教育委員会学校教育課、霧島市子どもセンター、霧島市保健センター、霧島市社会福祉協議会、鹿児島県国際交流協会、鹿児島県男女共同参画課、姶良市社会福祉協議会、
【教育機関】霧島市立天降川小学校、霧島市立日当山小学校、第一工科大学、ICA国際会話学院霧島校
一般ボランティア である。
このことからも、地域の企業や監理団体とのつながりがまだまだ構築できていないことはわかるので、今後はどのようにしてそこを打開していくのかを検討したい。■




