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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第13回 最終報告

NPO法人アクセプト・インターナショナル(2026年1月)

助成事業名・事業目的

「パレスチナの若者リーダーたちによる分断を乗り越えるための対話と東京宣言の作成

 2023年10月7日にハマスがイスラエルを奇襲攻撃し、報復としてイスラエル軍が軍事作戦を開始して以降、パレスチナ情勢は混迷を極めています。

 これまでにも、パレスチナ、イスラエルの政治リーダーによる対話が関係国の仲介のもと行われてきました。しかしそうした対話の場への参加は男性の幹部層に限定され、若者や女性は排除され続けています。またパレスチナ内部でも、考え方や立場の違いがあり、人々は分断された状態です。このような状況も踏まえ、若者や女性を中心にした紛争当事者を含む対話の場をつくり、紛争解決や平和構築に関する提言を行うことを目的とします。

 具体的な目標としては、

– パレスチナ政治に携わる若手リーダーの対話スキームを確立すること

– パレスチナ人の若者の対話と相互理解を深めること

– 若者主導の対話を通じて、新たな和平プロセスを構築していくこと

– 地域の紛争解決と平和構築における若者と女性の役割を強調すること

– パレスチナ和平への新たな視点と、国際社会における機運を醸成すること

– 具体的な行動計画を策定するとともにそれを宣言としても公開すること

 被爆3世や日本の経済界、専門家、市民社会の方々との対話を通じて、日本の戦後復興の経験や新たな視点を学び、パレスチナにおける和平の実現に活かしてもらうことも目的としています。

 

助成金額 : 100万円 

助成事業期間 : 2025年1月~25年12月

実施した事業の内容: 

 2024年7月以降中東某国にてパレスチナの若手リーダーを招いた少人数の対話を実施してきました。参加する若者たちは、イスラエル政府による攻撃と占領に憤りを感じており、まずはその行為をどうにか止めさせたいという思いが強くありました。そしてこの対話会合について、「イスラエルが変わるべきであるのに、なぜ自分たちが変わることを求められるのか」という反発の声も聞かれました。

 しかしながら、若者たちと話を進めていく中で、攻撃を止めるために何ができるのか彼ら自身も試行錯誤し、新たな方法を模索したいと考えていること、また今、分断された状態にあるパレスチナ人たちがより団結して取り組めば、このような攻撃を止めるさらなる力になるという認識も持つことができました。

 また若者たちから対話を実施するだけでなく、自分たちの交渉能力や国際法の知識などのスキルアップもはかりたいという声が上がり、国際法の専門家を招いて、自分たちの主張がどのように国際社会からは見られているのか、どのようなアプローチが効果的なのかも話し合われました。

 

 2025年4月には、いくつもの調整を経て、異なる地域出身、かつ政党、市民社会からの18名の若手リーダーたちを招聘した会合を実施しました。当初は政治的主張の違いや、環境の違い、政党側と市民社会側との溝は大きく、お互いが主張し合うという場面もありました。しかしながらそれぞれが困難さや問題意識を伝え合うことで、互いの状況を理解し、次第にどのようにしたら協力し合えるのか、何を目指すべきかという問題関心に移っていきました。3日間にわたる会合の最後には、この集まりをPalestinian Youth Committee for Unity(PYCU)と名付け、対話とガザのために具体的な取り組みを行なっていく合意を作ることができました。

 その後もオンラインでの対話を定期的に続け、6月中旬からガザ北部への飲料水支援を行うことも決定し、現地で活動するPYCUメンバーと連携して実施しました。

 

 2025年8月にはパレスチナの主要政党・組織・市民社会の若手リーダー14名を東京・広島に招聘し、パレスチナ和平の実現に向けたビジョンや、パレスチナ人の団結に向けて必要なこと、パレスチナ自治政府やパレスチナ解放機構(PLO)のあるべき姿などについて、中東、特にパレスチナ問題の専門家を交えて活発な議論を行いました。対話会合の最終日には、これまでの対話の集大成としてパレスチナ和平の実現への道筋を示す「東京宣言」を採択し、選挙・民主化の推進、若者や女性の政策決定プロセスへの参画、日本の戦後復興から学ぶ姿勢の重要性などが盛り込まれています。さらに、「東京宣言」の内容を実現させるための具体策を「アクション・プラン」として策定し、それに基づいて今後もパレスチナ内外で活動を継続・展開しています。

Kaida SJF

 また、広島では、VRゴーグルを用いた原爆投下前後の街並みを擬似体験したほか、平和記念資料館の視察、被爆3世の若者との対話を行いました。東京では、パレスチナ人若手リーダーとパレスチナ問題に関心のある一般の方々約200名が交流・対話するハイブリッド型イベントを開催し、彼らの思いに耳を傾け、パレスチナの団結と平和の実現に向けて活動する彼ら・彼女らを激励し、食事や民族衣装などを通じた文化交流を促進しました。

Kaida SJF

 日本での対話会合終了後も、2週間から1か月に1回、若手リーダーとオンライン会議を実施し、上述のアクション・プランの実施に向けた各々が自分たちのコミュニティにおいてどのような活動をしているかを報告したり、具体的な実施プロセスを話し合う機会を設けています。実際に、一部の国では彼ら・彼女らが中心となってパレスチナ人コミュニティと対話会合を企画し、パレスチナ人の団結や正当な選挙を実施するために若者たちが果たすべき役割などを議論したり、各国政府や専門家とパレスチナ自治政府の改革に向けた意見交換などを行ったりしています。2025年11月にはPYCUメンバーとガザ北部の19〜33歳の若者たち約30人とのハイブリッド対話を実施し、パレスチナ政府や国際社会が耳を傾けるべき若者たちの考えや、その考えをいかに発信・拡散していくかなどについて意見交換をしました。

 さらに、日本や国際社会の市民の方々に対して、ガザで人道支援に取り組む若者たちと対話するオンラインイベントを実施し、ガザの現状やパレスチナにおける平和の実現に向けた若手リーダーのコミットメントを生の声で伝えることで、リアルな現地の姿を届け、パレスチナ問題に関する国際社会の意識を図っています。

 

 

助成事業の達成度

 実施国について多少の変更は生じたものの、当初計画していた日本および中東各国における対話会合の実施および東京宣言の採択を達成することがでました。さらに、東京宣言の実現に向けた具体的な行動計画をまとめた「アクション・プラン」も併せて策定し、同アクション・プランに基づいて中東各国で団結に向けた対話を広げることができた点で、当初の事業計画以上の活動を行うことができました。

 様々な国・地域から、異なる立場の若者たちが集まり、パレスチナの団結と平和への道筋を、対話を通じて共通の合意に至ることができました。

 加えて、政治的にセンシティブで様々な制限がある中で、中東・パレスチナの専門家や被爆3世、一般市民の方と直接会って言葉を交わす機会を可能な限り多く持つことができ、パレスチナ人リーダーにとっても様々な視点からパレスチナの団結や和平について捉え直す機会となりました。

                                                                            ◆助成事業の成果

 本事業に参加したパレスチナ人若手リーダーは異なる政党・組織、市民社会に属しており、政治的立場が異なるだけでなく、普段は別々に国・地域に暮らしており、地理的にも分断されている中で、それぞれのコミュニティを代表して対話を進めて、パレスチナの団結と新たな和平プロセスの構築に向けて行動を共にしてきたことで、これまで和平プロセスから参画できずにいた人々の声を政治に反映させる一助となっただけでなく、パレスチナの若者たちに対しても、政治的信条や地理的な隔たりを乗り越え、パレスチナの若者として手を取り合い、自分たちが公正な社会の実現に寄与できることを示すことにつながりました。

成果1:複数の対話イベントを各地で実施し、参加したパレスチナの若手リーダーたちが、具体的な和平プロセスへのイメージを共有している。

 2025年4月、8月、11月に日本や中東各国において計5回の対話会合を実施し、和平に必要なことを明らかにしたうえで、その実現のための道筋を東京宣言として発表しました。これにより、参加者が困難な状況からいかに平和を実現していくか、そのために自分たちがどのような役割を果たすべきかを理解し、行動することを促進しました。実際に、日本会合実施後、彼ら・彼女らが自発的に自身の暮らす国・地域で同様の対話の場を設けるような行動の変容も見られます。

 

成果2:一般向けの対話イベントを通して、パレスチナ問題についての認知が深まる。

 2025年8月にパレスチナ人リーダー来日に合わせて実施した、日本の一般市民約200人との対話・交流イベントを通じて、パレスチナ問題に関する関心と理解を深めることができました。日本とパレスチナは地理的にも遠く離れており、身近にパレスチナ難民に感じることが難しい環境の中で、直接顔を見て声を聞くことが、自分たちも彼ら・彼女らのために行動するという意識を醸成することができました。

 対話イベントの参加者からは、「パレスチナの若手リーダーたちのリアルなお話を聞き現地の悲惨な状況を想像すると涙が溢れてくる。自分の無理のないサポートをしていきたい」「参加者同士がとても打ち解けた感じでお互い話している様子が見られ、対話の凄さを感じた」「これまで生きてきてパレスチナ問題を自分から能動的に知ろうとしたことがなかった。パレスチナの若者の皆さんが旨に大きな悲しみを抱きながら言葉にして聞かせてくださったことで、そのように過ごしてきたことへの恥ずかしい気持ちや後悔なども感じたが、知りたいと思った」「パレスチナ出身で今和平に向けて動いている人たちの生の声と訴えは、凄惨なニュースと同じかそれ以上に訴えかけるものがあった」「パレスチナの方の考え、思いの深さがわかり、もっとパレスチナのことを勉強しようと思う。パレスチナの方の人間としての温かさ、礼節が伝わってきて感動した」といった感想をいただきました。

 

成果3:日本での会合の際には、東京宣言を発表、その後、詳細な過程が公開できる時期に来たら、それらを国際的に広く発信し、関係各国の指導者にも認知され、影響を与えている

 日本会合の最終日にこれまで積み重ねてきた対話の集大成として東京宣言を発表し、同宣言の実現のための行動計画である「アクション・プラン」と併せて和文・英文両方を当法人のウェブサイトで公開しています。また、一般の方向けのイベントや各国政府を含む関係機関との会合においても東京宣言について積極的に周知・発信したことで、徐々に認知を広めつつあります。今後、国際機関、各国政府、市民団体、教育機関、民間企業など、国内外の様々な層に周知・拡散し、政策レベルで東京宣言を議論する機会を創出していきます。

助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか。

(1)当事者主体の徹底した確保

 対話会合の実施および東京宣言の策定にあたっては、すべてパレスチナ人若手リーダー自身が主導で行い、当団体はあくまで善き第三者として、議論の円滑化や関係機関との調整など、彼ら・彼女らのサポート役に徹してきました。例えば、問題の当事者であるパレスチナの若者たちが自身の考えや思いが効果的に伝わりにくいという課題を解決するために、メディア専門講師や国際法の専門家とともに議論を行い、若者たちが主体的に学び、さまざまな知識や発信のアプローチを身につける機会を提供しました。その結果、当事者として、より伝わりやすいかたちで自らの声を発信できるようサポートしました。また、一般市民との対話・交流の場では、当法人からの発言を最小限に抑え、パレスチナ人リーダーたちが発言する時間を可能な限り多く確保するように努めました。

(2)法制度・社会変革への機動力

 複数の政党の若者から会合出席の同意を得ることは、利害関係やこれまでの経緯もあり、困難を極めました。ガザで長年、活動してきたシンクタンク、国際的な機関に所属するパレスチナ人の識者などと関係を構築し、彼らからの働きかけや紹介もあり、出席の合意を得ることできました。政党の指導者級でも複数の政党による会合は何度か行われていますが、直前にキャンセルになることもある中で、若手リーダーが集まったという成果が、一つの社会変革に向けた機動力となります。

 さらに、彼ら・彼女らが全会一致で合意した成果文書として東京宣言及びアクション・プランを採択したことは、社会変革へのコミットメントを明確に示すものであり、今後も対話を通じた活動を加速させ、ガザ地区やヨルダン川西岸地区全域、国際社会に展開していくうえでの基盤としての役割を果たしています。

(3)社会における認知度の向上力

 さまざまな主義主張があるセンシティブな問題であるため、須らく情報公開を行うことが難しくはありますが、パレスチナ含めた中東に詳しい日本の関係者やパレスチナ人の識者から取り組みについてのコメントをもらったりし、認知を図ってきました。また、パレスチナ人リーダーを守るという前提条件の下、可能な範囲で私たちの取り組みや若手リーダーたちの考え・想いを一般の方々にも知ってもらえるよう、対面・オンラインでのイベントも実施し、累計600人以上の方々にご参加いただきました。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 パレスチナ人の参加者同士であっても、ガザ出身者、ヨルダン川西岸地区の住民、東エルサレムの住民、そして周辺国で暮らす難民の間には、必ずしも深いつながりがあるわけではありませんでした。また、市民社会のリーダーたちの中には、政党関係者のリーダーから表面的な対応しか得られていないことに不満を抱いている人もいました。

 まず、参加者それぞれが自分たちの状況を自らの言葉で語る機会を設け、相互理解を深めました。そのうえで、当法人スタッフが個別にミーティングを行い、生産的な対話を進めるためにはどのようなアプローチが必要なのかを、一緒に検討しました。

 対話会合を実施してきた中で、時に意見が衝突する場面もありましたが、パレスチナの平和実現という共通の目標のために建設的な議論がなされるよう、彼らの主張の背景にある想いや価値観を理解するように適切にファシリテーションを行いました。 ■

 

 

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