ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第12回助成 最終報告
すべての子を包摂する学校づくり推進ネットワーク(AISnet)(2026年1月)
(旧活動主体:特定非営利活動法人School Voice Project)
◆助成事業名・事業目的:
「インクルーシブ教育/学校DE&I推進のためのアドボカシー活動
〜マイノリティ当事者/支援者団体と教職員団体の対話・連帯を力に〜」
- 最終目的
すべての子どもが、日々安心してしあわせに学校に通い、必要なケアや支援を受けて楽しく学ぶことができる学校教育の実現。多様な子どもたちが、それぞれに自分らしく、混ざり合って学び育つことができる学校環境をつくること。
- 本事業の目的
①アドボカシー活動の社会的インパクトを中長期的に高める基盤として、インクルーシブ教育を共に推進していく当事者/支援者団体と教職員団体のネットワークを構築する。
②当事者/支援団体と学校現場の対話を通し、インクルーシブ教育/学校におけるDE&Iを推進するための施策を共同提言としてまとめ、具体化・整理・見える化する。
③広く社会に向けた発信と、文科省・教育委員会・議員等に向けたロビー活動を行い、政策形成・政策変更につなげること。
◆助成金額 : 100万円
◆助成事業期間 : 2年間(2024年1月~25年12月)
◆実施事業の内容:
- 内部MTG(マネジメントチーム、コアチーム、エンタク内等)
・マネジメントチームのミーティングは概ね隔週で実施し、プラットフォームミーティングに向けた準備や行程管理などを行ってきた。
・コアチームミーティング(マネジメントチーム+担当理事)は適宜実施し、マネジメントチームで出た方向性の確認と修正を実施。
・SVPのオンラインコミュニティ「エンタク」内では、教職員の声を反映させるための「インクルーシブ教育しゃべり場」を適宜実施
- 協働先団体への声かけ開始〜参加団体の確定
認定NPO法人3keys、一般社団法人にじーず、子どもの夢応援ネットワーク、DPI日本会議、一般社団法人多様な学びプロジェクトが参画。認定NPO法人ReBit ※ロビイングには参加できないためオブザーブとして参加。
- プラットフォームミーティングの実施
▽ 2024年度
5/18(土)10時-12時|議論の前提整理+各団体紹介・関係構築
6/22(土)10時-12時 ※対面 【不登校】
7/20(土)10時-12時【教員養成・研修】
8/17(土)10時-12時【学習/授業】
9/21(土)10時-12時【ルール・規範(学校文化)】
10/19(土)10時-16時 ※対面1DAY
11/16(土)10時-12時 新法&個別具体策の内容検討、今後の戦略
12/21(土)10時-12時|高校入試の提言について
▽2025年度
2/15(土)10時-12時|提言内容及び概要資料についての議論
4/25(土)20時-21時|団体立ち上げについて
5/16(土)20時-21時|仕切り直し初回
- 個別ヒアリング等
・森山誉恵さん(3keys)
・金光敏さん(こどもの未来応援ネットワーク)
・崔栄繁さん(DPI日本会議)
・遠藤まめたさん(にじーず)
・前北海さん(多様な学びプロジェクト)
・斎藤洋一(ReBit)
・中川綾さん(長野県教育委員)
・寺脇研さん(元文科官僚)
・室橋祐樹さん(日本若者協議会)
・今村久美さん(認定NPO法人カタリバ)
- 共同提言の作成
包括的インクルーシブ教育法(原案)+必要な政策案の作成・参加団体間での合意 ※内容はこちらから
- AISnetの立ち上げ
プラットフォームミーティングに参加してくれていた団体を中心に声をかけ、共同提言の内容を実現させるための新たな団体として「すべての子を包摂する学校づくり推進ネットワーク(AISnet)を結成。会則やHP{https://www.ais-net.com/}などを整備した。
- フォーラムイベントの開催
2025年の11/23(日)に東京のサイボウズオフィスにて「エンタクフォーラム〜民主的でインクルーシブな学校づくりのヒントを分かち合う1日〜」を開催。マイノリティ当事者の声を踏まえた教育実践を紹介し、AISnetの立ち上げと共同提言の内容を全国から集った教職員や保護者・議員等と共有した。
- 院内集会の開催
日本若者協議会と共同で学校における民主主義と包摂をテーマに国会の参議院議員会館にて実施。
- (ガイドブックを改め)パワーポイント資料の作成
学校現場においてインクルーシブ教育を進めるうえでの課題(不登校・特別支援教育を受ける児童生徒の増加・マイノリティの排除や困難)や、基盤となる考え方(社会モデル、子ども参加等)、提言内容などをまとめた
- その他イベント・クラウドファンディングなど
プラットフォーム団体の協力を得て、オンラインイベント「マイノリティを含むすべての子を包摂する学校って?」シリーズを4回実施。
(3keys,ReBit,こどもの夢応援ネットワーク,多様な学びプロジェクトに話題提供をいただいた)
・学校向けプログラムの実施(助成対象事業外):
100日間を1期としてオンラインコミュニティを基盤に連帯しながら各メンバーが自分の職場で「学校のインクルーシブ化」に取り組むプログラムを実施中。このプログラムと、本事業(政策提言活動)が両輪となるイメージ。クラウドファンディングも実施し、予算に含んでいた50万円を調達することができた。
◆事業計画の達成度 :
①プラットフォーム・ミーティング:
計画通り実施することができた。参加者同士が積極的に対話をし、当初想定していた以上に主体的な意見交換が生まれた点は、プロセスとして大きな成果があった。また、新たな任意団体立ち上げに至った点も非常に意義があると考える。
②調査活動:
量的調査としては、既存の調査データが一定あり、またそれ以上のN数を確保することが困難と思われたため、実施に至らなかった。質的な部分に関しては、プラットフォームミーティングの議論においてエピソードベースの当事者の困りごとが多く共有されたため必要な情報が得られた部分はあるものの、直接当事者の声を集める調査が実施できなかった点は課題であったと考える。
③フォーラムイベント(公開):
100名規模のイベントとしてエンタクフォーラムを実施した。インクルーシブ教育の必要性や、マイノリティ当事者及び現場の教職員の声の共有、それを踏まえた学校教育のあり方の提案は十二分にできたと考える。一方で、当初想定していたように文科省や国会議員など政策決定者・担当者を招く動きがうまくいかず、有志の地方議員や教育委員会の参加に留まった点は課題だった。
④共同提言の作成:
「政策集」のみならず、社会モデル発想での学校運営を求める基本法の制定を目指すという方向性が出てきたことは、当初のイメージとはズレたものの、妥当な着地であると考える。計画は達成できていると考える。
⑤書籍の出版: ①〜④の内容を一般流通する書籍の形式でまとめる。
これは実現に至らず、一時はガイドブックというような形で自分たちで印刷することを考えたが、それも形にできず、結果としてパワーポイント資料という形に留まってしまった。最大の反省点である。
⑥ロビー活動:
次期学習指導要領改訂についての記者会見と社会モデルと子ども参加を入れる提言活動を行った。また、新法制定に向けた院内集会を実施し、与野党から11名の国会議員の方が参加。秘書の参加や資料のみ取りに来られた方も含めると15名に提言内容を伝えることができた。また、それ以後国会議員2名との面談も行った。AISnetの団体立ち上げまでのプロセスと実務に時間を費やしてしまったため、提言活動の動き出しが遅れてしまった点は反省であるが、記者会見及び院内集会はメディアにも取り上げられ、一定の成果があったと考える。
以上より、本事業は計画に沿って概ね実施され、目的達成に向けた有効なプロセスを構築できたと評価する。
◆助成事業の成果
①インクルーシブ教育・学校におけるDE&Iを共に推進していく当事者/支援者団体と教職員団体のプラットフォームが生まれる。
2カ年にわたる緩やかな協働の結果、AISnetを立ち上げ、今後も連携しながら活動をするとともに、この輪を広げていく土台ができたことは非常に大きな成果だと考える。団体としてReBit、3keys、多様な学びプロジェクトはAISnetには入らないことになったものの、プラットフォームミーティングに参加してくれていたスタッフのかたが個人会員として参画してくれたケースもあり、また個別に相談・協力できる繋がりはあるため、今後の連携に期待したい。
②インクルーシブ教育/学校におけるDE&Iを推進するための施策が共同提言としてまとまり、具体化・整理・見える化される。
「法律案(余り書き込みすぎるとロビイングしづらくなるとの知見を得たため、シンプルなもの)」と「個別具体策(国・文科省向け、自治体・教育委員会向け)」が完成した。今後も適宜アップデートしていくが、骨子が明確になったことは大きい。また、なぜその法律が必要なのか、なぜそれらの施策の優先度が高いのか、ということが分かりやすく伝わるような資料の作成も必要だと考え、Canvaのスライドにまとめることができた。
③課題別の政策(ex,日本語指導・母語/母文化保障体制の充実、障害を理由にした地域の公立学校への入学拒否の禁止、不要な男女分けをなくす通知、異性愛を前提とした教科書記載の撤廃等)が具現化される。それに向けた機運が高まる。
④基盤的な環境整備としての総合的/包括的な政策(ex,少人数学級の推進、スクールソーシャルワーカーの増員等)について、具体的なロードマップが敷かれるなど前進し、それに向けた機運が高まる。
③④については、
次期学習指導要領改訂について社会モデルと子ども参加を明記してほしいという趣旨で記者会見提言手交を行った。また、新法制定に向けた院内集会を実施し、与野党から11名の国会議員の方が参加。秘書の参加や資料のみ取りに来られた方も含めると15名に提言内容を伝えることができた。また、それ以後国会議員2名との面談も行った。AISnetの団体立ち上げまでのプロセスと実務に時間を費やしてしまったため、提言活動の動き出しが遅れてしまった点は反省であるが、記者会見及び院内集会はメディアにも取り上げられ、議員の良好な反応もあり、一定の成果があったと考える。
◆助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:
【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか。
(1)当事者主体の徹底した確保
協働団体の方たちはそれぞれ日常的にマイノリティ当事者(児童生徒・元児童生徒)と関わっていたり、直接声を聞いたりしている方たちである。また事務局メンバーもそれぞれの仕事や活動の中でマイノリティ当事者と関わっている。その視点から活動を進めることはできたが、量的・質的な調査活動ができなかったため、直接声を反映することができず、また記者会見等の具体的なアクションへの参画も確保できなかったことから反省の多い項目であると考える。今後は、AISnetの輪を広げる中で当事者参画を意識し、活動を展開したい。
(2)法制度・社会変革への機動力
SVP(School Voice Project)として事業実施していた際も、SVPや参加団体の持つネットワーク・リソースを生かすことはできていたが、AISnetを立ち上げたことにより、これまで以上に多様な専門性を持つ方に参加してもらいやすくなった。また新法制定に関心を持ってくれる国会議員が出てきたことによって、彼ら彼女らの知識や方略を助言してもらうことも今後はできると考える。研究者や弁護士なども、会員やアドバイザーという形で協力してくれつつあり、この輪をさらに広げたい。
(3)社会における認知度の向上力
12月に国会で院内集会を実施した際には、SNSを活用してライブ配信を行ったが、その際にはトータル50名ほどの方がリアルタイムで見守ってくれた。その後、個人・団体ともに入会申請もあった。さらに教育新聞のみではあるが報道もしてもらえた。このようにSNSとマスメディアをうまく両方活用しながら、実際に活動する様子を発信していくことで、AISnetの存在感を示していきたい。
(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
これまで、課題認識や、提言内容、運動の方針について、共同団体(構成団体)の対話を重ねてきた。当然ながら食い違いもあったものの、見ている景色・ビジョンを共有しながら対話することで乗り越えていた結果、新法のアイデアが生まれたと考えている。このプロセス自体がこの事業の核心でもある。新法制定に関しては、政治家(国会議員)が、その他の政策については文科省や教育委員会が主な交渉先となるが、ここでもビジョンを共有することを大切にし、主張はしっかり伝えつつ、敵対せずに関係性を構築していくことを意識していきたい。
(5)持続力
AISnetは、個人会員からは年会費3,000円を取るものの、団体会員からは取らない。これは、まずは参画してもらうことを重視し、ハードルをなるべく下げるべきという判断である。個人会員は若干増えてきているものの、活動費用の捻出は今後の大きな課題といえる。思いのあるメンバーが集まっているため、今のところ手弁当で活動しているが、助成金申請に挑戦しながら、団体として安定的な運営ができていくように基盤を整えたい。
【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。
(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。
社会も組織も学校も、マジョリティに合わせて形成されていくという構造があること。そのため、マイノリティがバリアに引っかかっている。
マジョリティからはマジョリティからはバリアの存在が見えない。そのため、バリアの存在を訴え、除去を促していく必要がある。
(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。
仕組みや制度を変えることと、人のマインドや価値観に働きかけていくことを両輪で進める必要があると考えており、AISnetとしては、主に前者にアプローチすることで、実態として「共に学び、共に育つ」ことができる状況をつくり、その先に人のマインドや価値観の変化を期待したいと考えている。
(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。
AISnetはすでに複数の団体や有志の個人によるネットワークであるため、今後はさらに関係構築を進め、輪を広げていくべきだと考える。新たなプロジェクトというよりは、今ある「共同提言」を具現化することに注力したい。 ■




