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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第12回助成最終報告

NPO法人#YourChoiceProject(2025年6月)

助成事業名・事業目的

地方女子学生の進路選択のジェンダーギャップを解消するための調査・発信事業

 地方女子学生が「地域」「性別」の二重の壁を目の前に、進路選択において様々なジェンダーギャップに直面している問題について、課題の実態や有効な施策を明らかにするとともに、このような問題が広く人口に膾炙し、社会問題として認識されることを目指す。

 日本の難関大の女子比率は著しく低く、これは海外の難関大学の男女比がほぼ半々であることをふまえても極めて異例で不公正な状況であるが、そもそも女子比率が低いこともあまり知られていないばかりか、特に地方女子学生が首都圏女子学生や地方男子学生と比較して難関大学に進学しにくい状況にあることは意識すらされていない。また、そのような課題に直面する地方女子学生に対して、周辺のステイクホルダー(保護者や教師、地域住民など)が課題を把握せず無意識に悪影響を与えているケースが散見される。

 したがって、調査・発信事業の目的は、地方女子学生の難関大進学を阻む根本的な原因となるステレオタイプ・バイアスを明らかにし、課題について幅広く発信することを通して、当人たちを含む周辺のステイクホルダーが、それらを理解し、解消できるような環境・社会を整備することである。

 

助成金額 : 70万円 

助成事業期間 : 2024年1月~25年6月

実施した事業の内容: 

 調査事業では、全国からおよそ30名の地方女子学生や男子学生・保護者、首都圏学生へのインタビュー調査を行った。

 これをもとに、進路選択上のジェンダーギャップを包括的にまとめた白書の執筆を進め、これを完成、2025年2月5日に記者発表を行った(記者発表は助成期間終了後の2025年2月5日に実施)。白書および調査結果は弊団体HPに掲載したほか、各種メディアに取り上げられた。

白書はこちらから

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(2025年2月5日に行った、白書公開の記者発表の様子)

 白書は全部で7章であり、全体の構成として、まず日本の教育分野におけるジェンダーギャップの深刻さを第1章「現状」で確認し、その原因と考えられる問題について第2章「社会全体のステレオタイプ」第3章「家庭の問題」第4章「学生に内在化されたステレオタイプ」第5章「学校・塾の問題」と、学生を取り巻く環境と学生自身の意思決定の相互作用に着目し概説した。さらに第6章「大学の問題」では多様な学生を包摂するための進学後の環境整備から、第7章「その他の問題」では、以上の章では扱えなかった複合的な要素についての問題提起を行った。

 また、作成した白書は47都道府県各地域の教育委員会に送付した。現在は、白書内容をもとにし、高校生に向けた課題共有をしつつその進路選択を応援する講演会を行う方向で動いている。さらに、提言の際にも、白書内容を活用している。

 

助成事業の達成度 

 想定よりも遅れが出てしまったものの、満足のいく形で白書を完成・公開することができた。教育分野のジェンダーギャップについて包括的にまとめた文書は少なく、この問題について初めて知ろうとする人や実際に行動に移す際の議題整理・最初の一歩になるだろう。

 

助成事業の成果

 白書では、大学進学における日本のジェンダーギャップの実態とその背景要因を明らかにした。具体的には、年収や学問分野に関する社会全体のステレオタイプや、家庭におけるジェンダーバイアス、学生に内在化されたジェンダーバイアス、学校・塾の問題、大学の問題、生理や学生寮といったその他の問題が明らかになった。教育分野におけるジェンダーギャップの問題、その解決法を考える際には、本白書を通じて事実に基づいた理解を深め、議論の端緒とすることができ、解決の糸口を提示することができた。

 また、白書の公開に際して記者会見を行い、各種メディアに取り上げられることで、課題の周知を上げることができた。

 これらを通し、当初の目標としていた課題解決の取組に向けた土壌の整備・基盤つくりに対して一定の成果を上げることができたと考える。

助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか。

(1)当事者主体の徹底した確保

 インタビュー対象の確保が課題であった。学生への謝礼金の準備、および高校門前等での地道なチラシ配布などにより、インタビュー対象者を確保した。学生たちの声は【事例】として白書内に登場し、数字や理論の裏にいる学生の実際の声や体験を届けることで、当事者主体性の確保に努めた。

(2)法制度・社会変革への機動力

 私たちは、「政策の流れ」に関しては①団体の信頼性を向上させること、「政治の流れ」に関しては②政策関係者を紹介してもらうことを通して課題を解決しようと考えていた。①に関しては、NPO法人格の取得、数々のメディアへの露出、HPの更新によって順調に進行してきた。②政策関係者の紹介に関しても、内閣府担当者や政治家へのリーチに成功している。現在は、教育振興基本計画における「女子学生比率向上」の明記を目標として活動している。これによって、ジェンダーステレオタイプが障壁となり女子学生が学力に見合った選択をできないことから生じる、大学進学時点での男女差を是正していくことを目指す。

(3)社会における認知度の向上力

 白書公開時に記者発表を行うことで、朝日新聞や毎日新聞を始めとした各種メディアに取り上げられた。

 また、2024年7月にも、県人寮におけるジェンダーギャップを指摘したレポートを公表、記者発表を行い各種メディアに取り上げられた。

 加えて、Xやnoteでの情報発信に力を入れており、今後もメディア露出の強化に向けて動いていくつもりである。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 自治体との関係構築が課題である。すでに複数の自治体と関係構築はできており、より友好な関係を目指して活動していく。

(5)持続力

 チーム体制を新たに整えたことで、メンバー1人1人の負担を軽減し、より持続可能な体制を整えることに成功した。東京大学内での新歓を行い、同大学生を始めとする新入会のメンバーを多数受け入れたほか、東京外国語大学で講演を行い、メンバーを増やした。なおメンバーの中には、白書に感化され団体の活動への参画を決意した者もおり、白書公開が図らずも団体運営に対しての副次的な効果も見受けられた。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 女子学生当人および保護者等に蔓延る根強いジェンダーステレオタイプやバイアスが要因である。これらのステレオタイプやバイアスは、意識下・無意識下どちらにも存在しており、非常に払拭が難しい。また、解決が進まない要因は、国や自治体にとってこれらが重大な課題であると全くもって認識されていないことにある。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

 当法人で行うメンタリングコミュニティを通して、地道に地方女子学生本人が持つステレオタイプやバイアスの払拭に貢献したい。

 また、その周囲の人々(保護者や行政関係者)に向けて、白書を通して提言を行い、アプローチしたい。

 さらに、メディア露出や、X、note等での投稿を通して、一般の人々が問題に気づくことを促し、社会的なジェンダーステレオタイプやバイアスの解決に努めたい。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 現在、東京大学が行う、東大女子学生の学校訪問プロジェクトに弊団体も関与している。自治体との連携を強化しており、弊団体のメンバーが母校を訪問した際には、創設者2人による著書『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』を図書館におかせてもらうことや、それをもとにした関係構築、講演会の実施等を考えている。  

 

 

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