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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成

NPO法人レインボーコミュニティcoLLabo
SJF助成事業第3次中間報告(24年6月

 

助成事業名:『性的マイノリティ女性の地域と世代を超えたオンライン上のコミュニティ構築と実態調査  

 レズビアンやバイセクシュアル女性などのセクシュアルマイノリティ女性(以下「性的マイノリティ女性」と記す)は、性的マイノリティであることに加え、女性であることでの生きにくさを抱えている。そこには、見えにくさ(カミングアウトや発信の問題から、当事者にとっても不可視化されている現実)、声が届かないために自ずと対応する公的制度や民間サービスが不足し、コミュニティの不在といった課題があると考えている。そのため、本事業では2点を目的とする。

1)性的マイノリティ女性が、世代、名乗り(アイデンティティ)、住む地域や個人のネットワーク、生活形態を超えつながり、自己を肯定し、多様なロールモデルを知って未来を切り開いていく力をつけられるようなしくみを作ること

2)社会制度は待っていて与えられるものではない。人生の困難を軽くできるよう、自ら社会に変化を求めていく動きを学び、拡げていくこと

 

助成金額 : 290万円

助成事業期間 : 2023年1月~2024年12月 

実施した事業と内容(23年12月から報告時点までで)   

通年: みらいふWeb、せくたんページの記事・コンテンツ制作

2023年12月 登録時アンケート等の中間報告、みらいふサイトのデザイン・機能・運用方法の決定、専門家会議、調査会議

2024年1~3月 みらいふWebβ版(クローズド→オープン化へ)移行作業

3月 せくたんページの記事(一部中国語、英語公開) みらいふWeb評価準備(GA4導入) 

   URL https://sexualitiy-tansaku.super.site/

3月~6月 他団体との連携(性的マイノリティ女性を対象とした調査について)

4月 みらいふWeb正式公開、コメント参加開始

   URL https://miraifu.co-llabo.jp/

3月から、Webサイトのデザインも完成し、みらいふストーリー(多様な性的マイノリティ女性たちのライフストーリーを通じて、人生で出会う喜びや困難にどのように向き合い、挑戦をしてきているかを描く)を更新している(週1目標)。

 

Kaida SJF

 

4月20日、21日 TRP2024へのブース出展(みらいふWebの正式リリースを発表、事業の認知拡大のための活動-第2弾、他団体のトライアル調査に協力)

5月8日 SJFアドボカシーカフェ開催

6月~これまで個別だった制作や協力者等との会議の間口を拡げ、コミュニティ機能にもっと近づけていく場を毎月定例化

 

今後の事業予定 : 

 通年で、みらいふWeb、せくたんページの記事・コンテンツ制作、みらいふ連動の①コメント参加、②プログラム参加の拡充を図る

6月中 事業認知拡大のためオンラインでのPR強化(第3弾)

変更点:残り半年は、「事業認知拡大のための活動」を追加し、SNS強化(6月~)と併せ、各地のLGBTQコミュニティイベントで実施する。みらいふWebのPR、各地の参加者リクルート、対面での対話による各地の当事者からの聞き取り、他団体との会議を実施する(第3、4、5弾)

6、7月  みらいふWeb参加を促進する取組(オンラインプログラムとの連動)

7-8月  おひとりの記事検討、せくたんページとの合流方法、ライター増員

8月   コメント参加の評価、参加型コミュニティ方法の決定、認知・参加拡大の評価とそれを受けた計画調整

9月   事業認知拡大のための活動(第4弾)さっぽろレインボープライドでのブース出展と対面対話による実態調査(専門相談員)

他団体との実態調査開始

10-11月 事業認知拡大のための活動(第5弾)関西/四国

11月  助成事業としての評価・総括(コミュニティ参加目標は50名、5月末現在10組+8名登録)

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。

 とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、どのように変化したのかも記載。

(1)当事者主体の徹底した確保 

 レズビアンやバイセクシュアル女性などの当事者としての経験をもとに事業を行ってきた柱を持ちつつも、いかに性的アイデンティティの名乗りなどで細分化することなく連帯できるかが課題であるととらえてきた。その対策として、様々なセクシュアルアイデンティティをもつ(もたないも含め)方の姿を伝え、包括的につながれるよう呼びかけてきた。
 一方、せくたんページでは、セクシュアリティ探索プロセスを明らかにしていくため、多様なアイデンティティや出身地の当事者を作り手に迎え個別の当事者性も重視している。当事者性をもつ作り手も様々な経験をもつ人に拡大し、より多様な当事者にリーチしていけると考えている。

(2)法制度・社会変革への機動力

 当事者の中でも、自分事として社会の問題として社会に働きかける意識をもつかどうかには濃淡があることを課題としてきた。ライフストーリーを発信する協力者は、すでに具体的アクションに立ち上がった方々から始まったが、法制度や社会変革も、初めは身近な小さな一歩だったということを伝え、そうしたひとは特殊だ、と声をあげることに臆すひとにも、小さくとも一歩を起こすきっかけを届けられるしくみ(コミュニティ)を作ることを目指している。
 まだみらいふWebを通じて出てきた行動を評価はできていないが、ミクロからメゾ、マクロへの様々な動きを発信できているため、行動につながる機運を醸成していけると考えている。現時点ではみらいふWebに設けたコメント機能のハードルが高いようで、もっと簡易なリアクション機能を組み入れたり、注目を集めるタイムリーな話題(例:同性カップルの住民票続柄記載)でSNSと連動して、関心をもつひととつながれる瞬発力をもつ必要性を感じている。

(3)社会における認知度の向上力 

 4月20日、21日には、東京レインボープライド(TRP2024)にブース出展をし、推計300余名の来場者と対話を通じて、本事業の認知を向上することができた。普段自分たち以外の女性どうしのカップルと接していない関東圏の方々から、こういう形で発信するひとがいて嬉しいという声をいただき、潜在的関心を確信する。
 また、『心理臨床の広場』(日本心理臨床学会、2024年4月発行、Web版も)に「同性パートナーとかぞくになる」を寄稿し、認知向上につなげた。なお、みらいふWebを正式に公開した際一部メディアにリリースしたが、大型コミュニティイベント時の情報が溢れるタイミングで掲載に至らなかった。また、単なる当事者を可視化するだけのサイトとして見られると、真意が届かないため、PRの戦略を検討しているところである。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 重要なステークホルダーとして、女性が中心の性的マイノリティ当事者団体、参加する当事者、専門性や技術をもつ協力者ととらえてきた。基本的な目指す方向は一致しており共通の利害関係をもつと思うが、目前の課題や対象が異なる場合に、お互いに資源の限られるどうしの連携は、間口の広さと同時に、集中的・短期的に連携をはかることを学んでいるところである。
 また、専門性をもつ協力者が当事者である場合は、ミッションや共感だけでは不足する良好な関係を築く行動原理について学ぶ機会になった。

(5)持続力 

 これまでの活動手法と異なるサイト運営を核とした活動は、課題であった不足する専門性を補完する協力者を得てスタートできた。2年目初期にかけ、持続的に使えるテンプレート(サイトのイメージ、一貫性)を複数作れたことは、成果となったと考えている。その後、さらに協力者を増やし、記事コンテンツのテンプレートを複数化し、最小のエネルギーで運営できるしくみを目指している(記事を書く専門家、ライティングの心得がある協力者を増員)。
 2年目後半は、Webでの記事発信は重要な手段だが、そこに終始しないよう基盤を整え、今後も継続できるための財政基盤の確保が課題である。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 存在を前提とする制度がなく差別や偏見の残る社会で、性的マイノリティ女性がカミングアウトや声をあげることには壁がある。社会に気づきをもたらすには相当の努力が必要で、困難をも表明しにくいという悪循環がある。また、性的指向は恋愛ごととして矮小・個人化され、諦めやすく、社会的課題との認識をもちにくい。
 打開するには、ロールモデルを得て、カミングアウトや権利の主張の学習とピアの支えが有効と考えるが、当事者の環境によってはそれを提供するコミュニティは身近にない。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。 

 本事業は、みらいふWebにおいて、各地の出身の多様なセクシュアルマイノリティ女性のリアリティを発信し、セクシュアリティ探索、恋愛(する場合は)の後、どんな人生を送れるか、どのように困難に挑めるのかといった視点を発信する。1人の当事者より、カップルやかぞく単位になった時に、社会の理不尽さに気づきやすく、対処しようという意思をもちやすい。そのロールモデルに触れてもらうことで、親近感を生み、自分事感としてとらえ考え行動する機会を提供する。
 さらに、みらいふWebを核としたオンライン上のコミュニティ機能が充実すれば、環境による差異を超えると考えている。また、コミュニティで行う調査は、「性的マイノリティ女性」の課題を明確にし、回答し(声を発し)、他の当事者の実態を知る(共感する)経験により、社会へのアクションのきっかけとしても寄与できると考えている。

(3)他団体と連携したプロジェクトのアイディア、あるいは具体的な構想、あるいは希望などはあるか。

 【Ⅰ】の(4)でも述べたが、「お互いに資源の限られる団体どうしが連携」することに難しさがある。そのため、みらいふWebを充実させる過程で、他団体の強みを借り、記事制作やオンラインプログラム等での協働を検討している。事業名にある「実態調査」は、みらいふWebとつながるコミュニティを作り、その場を活用して「当事者の実態やニーズ調査を通じて課題を明確化する」ようなしくみ作りとして計画してきた。
 実際の事業に取り組む中で、サイトの構築、コミュニティ機能を充実して、そこで新規に参加者への調査を行うことは時間を要することが分かってきた。そのため、当初挙げた事業計画を継続することと併行し、前回報告に触れた、同じ問題意識を持つ他団体との調査を行うことにした。これにより、本事業が見落としていた課題発見や、仮説作り、調査体制の模索に活かしていく。■

 

 

 

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