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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成

一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ
SJF助成事業第3次中間報告(24年6月

 

助成事業名:『U30: ジェンダー/フェミニズム視点を醸成する若年層向けワークショップ  

 本事業の目的は、次世代のフェミニズム視点を持ったアクティビスト、研究者、公務労働者、企業労働者などを育成することにある。この目的を達成するため、本事業では、18歳から30歳までの若年層を対象に、インターセクショナリティの視点を重視した連続講座(ふぇみ・ゼミU30講座)について、年間を通して実施するとともに、フィールドワークツアーの開催等を通して、参加者間のネットワークづくりを行う(当初サマーワークショップの開催を企画していたが、フィールドワークツアーが参加者に大きく影響を与えることが分かり、2024年度も引き続きフィールドワークを行う)。 

 

助成金額 : 300万円

助成事業期間 : 2023年1月~2024年12月 

実施した事業と内容:   

リアルタイム日本語字幕の効果
 2023年度「ふぇみ・ゼミU30」は約40名の若い世代が、通年で参加し、終了した。講座にリアルタイムの日本語字幕が付いていることで、日本語を第一言語としない人の参加も多くなっている。
 2023年4月~2024年1月 2023年度「ふぇみ・ゼミU30」連続講座を実施
 2024年4月~2025年2月 2024年度「ふぇみ・ゼミU30」連続講座を実施
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※2024年は下記の日程で「ふぇみ・ゼミ30」を開催している。
プレ4/27水)無料公開ガイダンス
1 5/29(水)19:00〜21:00 宋連玉さん「経験から出発する私流フェミニズム」
2 6/26(水)19:00〜21:00 高柳聡子さん「フェミニスト文学とは何か―「書く」女たちを追え」
3 7/17(水)19:00〜21:00 松元元樹さん「部落問題の基礎基本」
4 9/14(水)19:00〜21:00 Aya Konishiさん「数年がかりで実現した全米最大の大学職員ストライキ」
特別回 10/12(土) 10:00~17:00(予定)押田五郎さん フィールドワーク 「いま、知るべき部落のお仕事のこと―差別との闘いとともに(仮)」※選択参加/別料金
5 11/13(水)19:00〜21:00 増岡広宣さん「同性婚は差別問題解決の道なのか?~婚姻制度反対の立場の当事者より」
6 12/11(水)19:00〜21:00 茨木尚子さん「当事者主体の社会福祉政策とその運営のあり方を考える―障害者制度改革の『中の人』としてかかわった経験をもとに―」
7 1/22(水)19:00〜21:00 金静寅さん「コミュニティの中の性差別を考える―性差別撤廃部会立ち上げの経緯」
8 2/12(水)19:00〜21:00 吉野靫さん「日本のトランスジェンダーと規範/制度/医療」
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参加者のネットワーキングと自主活動

 U30に参加していた留学生たちが2024年3月に明治大学のシンポジウムで性暴力の告発を受けた人物が登壇することについて、公開質問状を出し、署名活動を行うなど、参加者たちの独自の活動も活発に行われた。
 また、夏季長期休暇中の事務所オープンデーを利用した人たちの中から、事務所を利用して自主的な勉強会やワークショップを行う人も出てきた。活動の方法や、具体的なノウハウ、利用できる制度などの相談がゼミ生やスタッフからもちこまれることも多く、インキュベーターとしての役割を果たしている。
 また、2023年度にゼミ生だった人たちが、2024年度に寄付者となってふぇみ・ゼミ&カフェの活動を支えたり、別の講座に引き続き参加してくれるようになっている。ふぇみ・ゼミ&カフェの講座内での紹介をきっかけに、他の団体が開催してる社会運動の講座やイベント、デモに参加する人も増えている。

 

専門技術を持ったスタッフの育成

 講座の運営は大学院生、学部生を中心とした若いスタッフが有償で担い、社会運動の実践のOJTの場として機能している。講座の配信や宣伝動画作成についても20代の配信スタッフがチーフを担い、専門技術を持ったスタッフが育ってきている。スタッフとゼミ生が協働で自主活動を行う例も見られた。

 

フィールドワークツアーにおける学び

 2023年度にサマーワークショップに変えて行ったフィールドワークツアーは、参加者同士の学び、ネットワーキングに大きな効果があった。それに加えて、運営を担う側のスタッフにとっても、普段の講座と異なる環境での運営や、様々な場面での参加者、外部協力者への応対などを経験する成長の機会となった。

Kaida SJF

 

 

今後の事業予定 : 

 今後の「ふぇみ・ゼミU30」の予定については、上掲「実施した事業と内容」の欄を参照のこと。
 さらに、「ふぇみ・ゼミU30」講座の他、国際シンポジウム共同開催(ジェノサイドに関するもの、中華圏の若手フェミニズム運動など)、学生の長期休暇時期に、事務所オープンデーワークショップを開催予定。具体的には、アクティビストアートワークショップ、アクティビズムの方法論をテーマのワークショップ、多言語プログラムの基礎などを準備中。

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。

 とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、どのように変化したのかも記載。

(1)当事者主体の徹底した確保 

 ジェンダーと多様性をめぐるさまざまなテーマを通して、既存社会に根差している差別構造を多角的に理解し、そうした構造を変容させていくための方法論を身につけた次世代リーダーを養成することを目的に、(a)若い世代を主体とした交流会の開催、(b)事務所で広報活動有償ボランティア活動開催、(c)大学のゼミと「ジェンダーとエスニシティ」について、関東大震災朝鮮人虐殺フィールドワーク、朝鮮学校無償化問題を考えるフィールドワーク開催などを行った。(b)事務所レンタル拡大を通じて、他団体の人々との交流、活動イシューを拡大できた。

(2)法制度・社会変革への機動力

 現在日本社会でも課題になっているギグワーカーについての国際シンポジウムを3月10日に香港からのアクティビストを招き、インターセクショナリティフェミニズム研究会などと共同開催した。また、立教大学のジェンダーゼミ等からフィールドワーク企画依頼を受け、実施し、ふぇみ・ゼミ&カフェのスタッフと学生が連携して活動する機会を設けた。このほか、社会変革の主体であるジャーナリズムとの連携のために、フェミニストジャーナリスト交流会を開催し、メディアに関心のある若年層にも正義のある報道を学ぶ機会を提供した。

(3)社会における認知度の向上力 

 SNS発信のシステム化の構築、チケットサイト、メーリングリスト参加者に、ふぇみ・ゼミ&カフェの広報活動を体験する有償ボランティアを企画し、述べ30名ほどの若者が活動。結果、各回に知らせる意義を理解させることができ、また広報先には、ふぇみ・ゼミ&カフェの認知度をあげる効果をもたらした。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 2023年には、故岡正治氏による性暴力等に対して、被害者を支持し、加害者が所属していた団体に組織としての対応を求める声明を出した。これに対し、長崎人権平和資料館(旧岡まさはる記念長崎平和資料館)理事会は非常に真摯な応答を行い、ふぇみ・ゼミ&カフェのHPでもその応答を紹介した(https://femizemi.org/2024/02/07-2/)。
 このような、批判や意見交換を通じた関係構築のみならず、講座の宣伝を体系化する中で、全国の商工会議所や中小企業等、従来保守的と考えられてきたが、社会の中核を担っている層に対しても、講座の宣伝をダイレクトメール(郵送、メール)やプレスリリースの形で届けている。
 こうした宣伝業務は、ふぇみ・ゼミU30のゼミ生を含む短期のアルバイトと、常勤の学生スタッフが担っており、若い世代に社会に対して広く広報を行うパブリック・リレーションのOJTとして機能している。SNSのフィルターバブルに留まることなく、こうした地道な「どぶ板式」の広報を行う中で、まだ少数ではあるが、講座受講や問い合わせと言ったプラスの反応が出てきている。

(5)持続力 

 スタッフ職種を新たに増設し、「事務所管理スタッフ」として新たに2名の学生・社会人ダブルワークアルバイトを雇用。(運営スタッフは2名雇用)背景の一つには、他のユース団体、社会運動団体が、ふぇみ・ゼミ&カフェの事務所を活動の場として活用したいとのニーズが増加したためである。利用増加の背景には、公的施設の利用の複雑さと多義的な制約、民間のレンタル施設の利用料高騰などがある。現在の利用者は、知り合いの紹介に限定しているが、今後は一般にも利用できるようシステム構築中である。他団体が利用することで、管理スタッフ、既存のスタッフには新たな出会いがあり、来訪をきっかけに、レンタルした団体で活動を始めたスタッフもいるなど、活動の広がりがあった。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 ジェンダーやセクシュアリティに関する規範はもとより、それらと深く関係しているにもかかわらず、メインストリームのフェミニズムにおいて十分に反省されてこなかった植民地主義、自民族中心主義、優生思想、労働構造の非対性が問題だと考える。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。 

 レイシズム、トランス差別、障害者差別の問題を、フェミニズムの問題として把握する視点をもった人材を育成し、輩出することで貢献できると考える。

(3)他団体と連携したプロジェクトのアイディア、あるいは具体的な構想、あるいは希望などはあるか。

 現在も他団体と連携は行っているが、現在考えているのは、1年間共同開催の講座、継続的な人的交流プログラムである。■

 

 

 

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