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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成

明日少女隊(Tomorrow Girls Troop)
SJF助成事業第3次中間報告(24年6月

 

助成事業名:『明日少女隊 個展  

 明日少女隊はこれまで、性犯罪の刑法改正、広辞苑の「フェミニズム」の定義の改訂、アート界のセクハラ、「慰安婦」をめぐる議論など、多岐にわたる日本のフェミニズムの課題について、アートとアクティビズムのプロジェクトを展開してきた。
 これまでの明日少女隊の過去の作品の展示を東京で開催し、日本の女性問題を広 く学べる場を提供する。
 日本と東アジアの若年層の女性や性的少数者に向けて、ジェンダー問題の啓蒙活動を行い、ジェンダー平等な世の中を目指す。具体的には、アート作品の制作と発表、マーチのオーガナイズ、署名運動、市民参加型のワークショップ等、アートやデザインの手法を取り入れて問題解決を目指すアクションを行う。

助成金額 : 300万円

助成事業期間 : 2023年1月~2024年12月 

実施した事業と内容:  

 2023年7月21日から8月6日まで、東京の北千住にあるギャラリーBUoYにて、個展を開催し、372名が来場した。
 個展では、ニュージャージーシティーカレッジ教授であり、美術史家の由本みどりさんをキュレーターに招き、個展開催と同時にアートダイバー社から出版した本も販売した。
 東京芸術大学でのレクチャーを、個展開催の直前にすることで、当初の目的だった、日本のクリエイティブ業界の若年層の女性を多く招くことができた。
 記録として個展内容を紹介する動画も作成した(視聴はこちらから)。ASTA

 キュレーター•ライターの宮原ジェフリーさんが書いてくださった明日少女隊の個展レビューが月刊アートコレクターズで掲載された。

 今回の個展がきっかけで、アメリカの東海岸にある大学、University of Connecticut、Fashion Institute of Technology2校でのレクチャー、State University of New York SUNY Old Westbury、New Jersey City University2校でのレクチャーと個展が決定。キュレーションを手がけてくださった由本みどりさんが、アメリカ帰国後、知り合いのキュレーターに、東京での展示の様子などを報告してくださったためだ。

  個展に来ていたフランスのジャーナリストから慰安婦問題についてのパフォーマンスについて取材され、フランスの雑誌へ掲載された。

 1月には文化研究者の山本浩貴さんがポリタスTV「アートと学ぶジェンダー#4 ジェンダーとインターセクショナリティ」で明日少女隊の活動の紹介をしていただいた。

 2月にはLOYOLA MARYMOUNT UNIVERSITYにて登壇。

 3月の世界女性デーにはロサンゼルスのアクティビズム団体AF3IRMが主催するグループ展”Keepers of memory”に出展。

 6月にはTBSでラジオやテレビでも活躍中のキニマンス塚本ニキさんにお声がけいただき、インターネットメディアとして発信するポリタスTVに出演。明日少女隊の活動の紹介や「レイプカルチャー」をテーマにトークを行った。

 

今後の事業予定 : 

 7月14、15日に去年出版した「We can do it!」の出版イベントを東京で行う。会場はIRREGULAR RHYTHM ASYLUM(IRA)、本屋B&B。

 IRAでは読書会や座談会の形式を用いて本の内容をもとに来場者とディスカッションを行う。B&Bでは、ゲストに弁護士の太田啓子さん、エッセイストの藤井セイラさんをお呼びして隊員の尾崎と「共同親権」についてのトークを行う予定である。

 出版イベントの2週間前ごろから本屋さんの店頭に、去年の個展で制作したポスターやステッカーなどを置かせてもらい活動の啓蒙も行う。

 11月10日から17日にアメリカの東海岸にある大学、University of Connecticut、Fashion Institute of Technology2校でのレクチャー、State University of New York SUNY Old Westbury、New Jersey City University2校でのレクチャーと個展が決定。ニュージャージーのフォートリー市にある慰安婦像の前でのパフォーマンスも実施する。

 同月11月にニューヨーク在住のアーティストCoralina Meyerとのコラボで11月のアメリカの大統領選挙をテーマに作品制作、発表を行う。

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。

 とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、どのように変化したのかも記載。

(1)当事者主体の徹底した確保 

 今回個展を開催したギャラリーは、演劇関係の方々がよく利用する会場であったため、アート活動を行う人はもちろん、演劇関係の若いクリエイターの姿も見えた。また、東京芸術大学でのレクチャーの効果もあり、音楽活動を行う学生も多く訪れていた。アートのみならず様々な表現活動を行う若者、女性や、性的マイノリティーの表現者たちがクリエイティブ業界の性差別が深刻である現状に共通の問題意識を持ち、会場を訪れていた。
 会場には常に隊員が在中していたため、鑑賞者の多くは会場で日頃感じる違和感や差別の被害などを語っていたのが印象的だった。それは展覧会の会場がセーファースペースの役割を担えていたためではないかと思う。

(2)法制度・社会変革への機動力

 会場では訪れた鑑賞者に積極的にジェンダーギャップ指数パフォーマンスに参加してもらった。普段受け身な方でも自身でチョークを握り黒板に記入するという行為を通して、より日本の抱えるジェンダーギャップの問題を身近に捉えられる機会となった。
 刑法性犯罪、「慰安婦」問題、トランスジェンダーの問題などを訴える作品を展示することで、多くの鑑賞者にこれらの問題が独立した問題ではなく、通底した問題であることを意識させることで社会改革への機動力を与えた。

(3)社会における認知度の向上力 

 マスメディアに多く呼びかけ、普段はジェンダー問題にあまり積極的ではないアート系の媒体でもとりあげられた。
 個展後SNSのフォロワーも少数ながら増加し、また、インターネットメディアのポリタスTVにも活動が取り上げられた。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 「慰安婦」問題に関する作品の展示もあり、当初は右翼の攻撃を心配していたが、そのような攻撃はなく無事に展覧会を終了できた。
 個展終了後は、ジェンダーをはじめとするあらゆる差別・暴力をなくすため活動を行っているちゃぶ台返し女子アクションから2024年3月に同団体が出版した「性のモヤモヤをひっくり返す!: ジェンダー・権利・性的同意26のワーク」の献本をいただいたり、「インターセクショナリティ・ガイドライン(仮)」制作のためのインタビュー依頼があるなど、良好な関係性を築けている。

(5)持続力 

 既存メンバーは引き続き活動を継続している中、個展をきっかけに2人の新しい隊員の入隊があった。それぞれの隊員は積極的に活動に参加してくれており、これまで人手が足りず滞っていた明日少女隊HPの更新やデザインの見直しを行うことができた。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 アート業界も含むクリエイティブ業界は、まだまだ決定権を有する立場に女性や性的マイノリティや、あらゆるルーツを持つ人が少ないこと。美術の教育現場においても、男性教員が圧倒的に多く、フェミニズムなどのテーマに嫌悪感を示す人も少なくないことから、学生がきちんと社会問題について学校などで学べる機会がほとんどない。その結果SNSなどで情報収集をし、誤った情報を鵜呑みにしてしまうこともしばしば起きている。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。 

 今回、明日少女隊が出版した書籍は、フェミニズムアートの入門書となるよう、若い世代が読めるような内容にすることを意識した。
 展覧会には、アートに関心はあるがジェンダーやフェミニズムはよくわからない、という方や、フェミニズムに関心はあるがアートには詳しくない方なども多くきており、様々な方向からクリエイティブ業界の不均衡について知ってもらう、考えるきっかけを与える場となった。
 SNSやHPなどでの定期的な活動報告は若者がフェミニズムについて知りたいと思った時の、情報原として貢献できる。

(3)他団体と連携したプロジェクトのアイディア、あるいは具体的な構想、あるいは希望などはあるか。

 11月にニューヨーク在住のアーティストCoralina Meyerとのコラボで11月のアメリカの大統領選挙をテーマに作品制作、発表を行う。前回のコラボでは、ロサンゼルスでのウィメンズマーチで、「カントキルト」という作品を制作した。着古した女性の下着をあつめ、女性問題の専門家を呼んで話を聞き、そこからデザインアイデアを得て、下着をみんなで縫い合わせて旗をつくり、ウィメンズ・マーチを歩くというものであった。
 選挙に向けて、アメリカはこれから混沌としていくことが予想されるため、アメリカ在住のフェミニストアーティストに話を聞くような対談も、9月、10月ごろ開催を予定。■

 

 

 

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