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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成最終報告

一般社団法人ソウレッジ(2024年7月)

助成事業名・事業目的

おひさまLINE

 「おひさまプロジェクト」の一環として進めていく事業である。「おひさまプロジェクト」で目指しているのは、「妊娠やそれに伴う不安を理由に将来の可能性が制限されること=羽を折られること」がない社会を実現することである。そのような社会のために「教育現場や支援から取り残されている若者に知識や情報を届けること」「その知識を基に若者が行動を起こすことができる制度を整える(緊急避妊薬やミレーナ(子宮内避妊具)の無償提供をする)こと」の両輪で事業を進めていく。「おひさまLINE」が担うのは主に前者である。その目的を以下に挙げる。受益者は、現時点で妊娠を希望していない22歳以下の若者である。

  1. 性教育のアウトリーチを行うことで、若者の主体的な性にまつわる選択肢を増やす。
  2.  性知識だけでなく福祉情報を共に届けることで、緊急避妊が必要な場合、その状況から抜け出すためのサポートを行う。
  3. 「おひさまLINE」を通して実施するアンケートや交流イベントで、背景にある実態を調査・可視化し、女性主体の避妊具の多様化と必要性などについての政策提言につなげる。

 

助成金額 : 161.5万円 

助成事業期間 : 2023年1月~24年6月

実施事業の内容: 

・「おひさまプロジェクト」事業

  • 連携病院の増加と受益者の増加
    携病院数は、21病院に拡大した。病院の所在地は、関東甲信越15病院・東北1病院・関西3病院・中国地方1病院・沖縄1病院となった。
    それにより受益者数が増加し、2024年3月末までに405件の避妊薬無償提供を実施した。
  • Instagram「おひさまぐらむ」(ID : ohisamagram0819)の公開
    これまでおひさまLINEで発信してきた内容をInstagramにも投稿し、「おひさまぐらむ」を公開。
  • 連携若者支援団体の増加(計画c)
    (1) おひさまプロジェクトの紹介(紹介カードの設置や、オンラインでの紹介など:イベント時等におひさまプロジェクトの紹介カードを配布し、広くおひさまプロジェクトを紹介してくれる団体を募集した。

(2) アウトリーチ活動での連携

  1. 2023年7月と9月に、新宿歌舞伎町でのアウトリーチ活動に、弊団体が参加し、若年女性たち(合計約30名程度)におひさまプロジェクトの紹介カードを配布した。

 上記の取り組みにより認知度が上昇し、当事業の受益者も着実に増加している(図1)。費用負担の条件に「おひさまLINE」への登録を必須としているため、今後はLINEを通じて受益者へのアンケート調査などを行っていく。

(図1)緊急避妊薬、ミレーナ、低用量ピルの費用負担実績数推移

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
緊急避妊薬 1 2 5 2 5 7 10 22 12 36 35 59 56 39 43
ミレーナ 3 4 2 0 3 8 2 1
低用量ピル 5 0 8 13 17 4 1 0

※緊急避妊薬と低用量ピルを同時に処方する病院もあるため、費用負担数と受益者数は一致しません。
※無償提供の実施期間は3月末までのため、3月末までの数値を記載しております。

 

  • 受益者との交流会、アンケート実施
    • 受益者と弊団体メンバーの交流会の実施
      • 2023年3月に、3日程に分けてオンラインで実施
      • 集客方法:おひさまLINEと団体SNSを通じて告知
      • 参加者数:8名
      • 実施内容:①性について困ったことがあることや、知っておきたかった性知識に関するアイディア出し②緊急避妊薬についてのヒアリング
      • 実施後の振り返り:緊急避妊薬というセンシティブなテーマに対する交流会は参加ハードルが高く、当初対面での実施を想定していたが集客が難航したためオンライン・少人数制(複数回開催)に変更した。
      • 実施後の活用:ヒアリング内容を匿名化・個人が特定されないよう加工したうえで、政策提言へ活用している(提言資料の中に「当事者の声」等として記載)
    • アンケート実施の準備
      • 2023年8月より、外部の有志プロボノにより受益者向けアンケートの設計を開始
      • 配布方法:おひさまLINEを通じておひさまプロジェクト受益者へ配布
      • 回答者数:31名
      • アンケート結果の集計、分析の実施{下記「助成事業の成果」参照}

・性教育研修事業

  • 性教育研修の実施(計画c)
    • 教職員や保護者向け研修を支援現場等に広げるため、若者・こども支援NPO法人等の職員への研修を実施。
  • 研修専任講師との契約と社内研修の実施
    • 2023年10月よりジェンダーに関する研修の実績がある研修講師と契約を結び、より多くの研修を実施できる体制を作っている。
    • また、同講師による社内向けの研修も実施しており、2023年11月にはトランスジェンダーに関する勉強会を実施した。

 

・行政への働きかけや連携について

  1. 署名活動の実施
    1. 政策提言の実施のため、「若者の安全を守るため、中学で正しい避妊方法を教えてください!#STOP意図せぬ性加害 #避妊を教えて」の署名(https://chng.it/nkPRwjJnhx)を実施。2024年7月現在、9,950人が賛同している。
    2. 本署名は、避妊薬の無償提供を求めるにあたり、その背景として避妊に関する知識が足りてない旨を訴求するため、実施した。署名の提出等は今後実施する。

Kaida SJF(緊急避妊薬無償化を目指すための資金集めのため、街頭にて募金集めを行う様子)

 

助成事業の達成度: 

  1. 緊急避妊薬・ミレーナの無償提供と並行して、受益者と団体メンバーの交流会を実施し、若者が抱える困難の実態を調査する。
    1. 緊急避妊薬とミレーナの無償提供
      1. 緊急避妊薬を334件、ミレーナを23件、低用量ピルを48件提供した。
      2. 無償提供を行うという目的を達成できた。
    2. 交流会とアンケート
      1. 交流会を2024年3月、アンケートを2024年4月に実施した。
      2. 交流会へは8名参加、アンケートは31名が回答した。
      3. 実施予定時期より遅れた点は改善の必要があるが、「若者が抱える困難の実態を調査する」という目的は達成できたと考える。
  2. 受益者(LINE登録者)だけでなく、InstagramなどのSNSを利用して、緊急避妊薬を必要としない人にも、性知識と福祉情報を届ける
    1. おひさまLINEに加え、Instagramのアカウント「おひさまぐらむ」を開設した。55件の性知識を投稿した。
    2. 開設・投稿は行ったが、告知や宣伝が足りず、十分に情報が行き届いたとは言えないと考える。
  3. 妊娠不安を抱える若者をサポートする環境を整えるために、連携できる若者支援団体と医療機関を増やす
    1. 全国の21病院と連携し、10の若者支援団体と連携を行った。
    2. 結果として、(a-i)無償提供数に繋がったため、達成できたと考えられる。
  4. 性教育教材の寄付や研修・講演会は継続して行い、問題の認知度向上と事業の周知に努める
    1. 性教育教材「性教育トイレットペーパー&ガイドブック」のPDFファイルをオンラインで無料公開した。また、同教材を研修後に希望があった教育現場や支援現場に寄付した。
    2. おひさまLINEの内容をポスター化し、オンラインで販売を行った。また、職員向け性教育研修を実施した施設に寄贈した。
    3. 問題の認知度向上と事業の周知を行う目的は達成できたと考える。
  5. 避妊具の拡充を目指すために海外の製薬会社の財団へ連絡、提案書の作成
    1. 国内の製薬会社
      1. 国内の製薬会社3社へ提案を実施
    2. 海外の製薬会社・財団

海外の製薬会社への提案は叶わなかったが、海外のSRHR財団への視察を実施した。

 3. 提案の実施という当初の目的は達成したが、避妊具の拡充へは、長期の時間と別手段でのアプローチが必要だと考える。 

 

助成事業の成果:

 性知識の提供と避妊薬の提供、アンケート調査やヒアリング等の実施により、以下の成果を出すことができたと考えている。

a.おひさまLINEと避妊薬の無償提供を通じて、受益者のジェンダー規範などによって束縛されていた力を解き放つことができた。

i)おひさまLINE

 本事業を通じて、おひさまLINEによる性知識と福祉情報の提供を490名に行うことができた。おひさまLINEでは、性知識のおたよりによって主体的に避妊のための行動をとれるようになること、福祉情報を受け取ることによって、困った時に頼れる窓口を知ることができ支援につながりやすくなること、SRHR・ジェンダーの視点を意識したおたよりにより、自分を大切にすること、自分で人生を選ぶことができるイメージを持ってもらうことを伝えた。

ii)避妊薬の無償提供

 334人への緊急避妊薬の無償提供を通じて、予期せぬ妊娠を防ぐことができた。また、通常時の避妊を提供することで、緊急避妊薬を繰り返し必要とする状況からの脱却など、受益者の根本の課題解決を図るため、ミレーナを23件、低用量ピルを48件提供した。

 緊急避妊薬から通常の避妊薬への接続に関しては、実際に受益者へのアンケートの中で、「学生でお金がほんとになくて、親にも相談できず、誰にも頼れない状態で、おひさまプロジェクトを知って、助けていただいてほんとに助かりました。いまは、低用量ピルを服用していて、その相談もおひさまプロジェクトを活用させていただいた日にさせてもらいました」という声もあった。

 

 これらにより、知識を得ることでジェンダー規範から解き放たれること、また、妊娠や避妊について自主的に選択し自分の人生を主体的に生きられることをサポートすることができたと考える。

 

b.受益者へのアンケートやヒアリングを通じて当事者の声を集めることや、署名運動を通じて広く様々な人に届けることで、当事者の声の救い上げと、認識の変容への貢献ができたと考えている。

i)受益者へのアンケートとヒアリング会の実施と、それらの声の活用

 受益者アンケートでは、緊急避妊薬の入手ハードルについて調査した。「あなたが「緊急避妊薬(アフターピル)」を服用する上で、困ったと感じたことを全て回答してください」という質問(複数回答可)に対して、最も多かったのは「緊急避妊薬の値段が高かった」の67.74%だった。次いで「親にバレるのが怖かった」の45.16%、「薬を服用することが怖かった(副作用など)」の41.9%となった。

 これらの回答を通じて、実際に緊急避妊薬の金銭的ハードルを下げることの必要性を再認識できた。また、薬に関する知識の必要性や、親以外の大人へ気軽に相談できる環境づくりの必要性についても、確認することができた。

 ヒアリング会では、無償提供の受益者だけに限らず、広く緊急避妊薬の服用経験のある若者へのヒアリングを行った。服用した際の困りごとについてアンケートよりも深くヒアリングを行うことができた。

 例えば、費用面の負担について相手男性に言い出せずに自分が全額負担してことが精神的にも資金的にも負担だったことなどの話があった。

 費用負担が妊娠不安の当事者である女性に偏っていることを提言の際の問題提起にするなど、服用した経験者からの声を届けることで必要性を伝えている。

ii)署名活動の実施

 政策提言の実施のため、「若者の安全を守るため、中学で正しい避妊方法を教えてください!#STOP意図せぬ性加害 #避妊を教えて」の署名を実施。2024年7月現在、9,950人が賛同している。

 本署名は、避妊薬の無償提供を求めるにあたり、その背景として避妊に関する知識が足りてない旨を訴求するために実施した。

 署名の賛同者を集めるにあたり、X上で「性教育で教えて欲しかったこと」について発信するキャンペーンを行うなど、人々の思いや声が届けられる機会を作った。

 

c.支援現場の職員向け性教育について

 おひさまプロジェクト連携団体や、子ども/若者支援現場での性教育研修の実施を通じて、子ども/若者が性被害に遭いにくく、何かあった際に適切にケアされる環境づくりを目指した。

 具体的には、職員に対する性知識の研修に加え、「おひさまLINE」で配信している性知識の内容をポスターとして現場に提供するなど、職員の知識だけでなく性について話しやすい環境づくりのサポートも行った。

 実際にこの研修によりどれだけの子ども/若者が救われたかの具体的な成果は測れていないが、子ども/若者の性の課題について認識し取り組む人を増やすことで、社会の仕組みや法制度をつくる基盤づくりの一助となったと考える。

 

助成事業の目的と照らし合わせた成果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

(1)当事者主体の徹底した確保

 中間報告までの間に、他団体と連携したアウトリーチ活動への参加や、社内でのトランスジェンダー勉強会など団体スタッフが当事者主体を確保できるよう、取り組みを行ってきた。

 新たに実施したおひさまプロジェクト受益者へのアンケートでは、アンケートの言葉遣いが当事者にとって適切かどうかをレビューを重ねながら検討した。また、ヒアリング会では当事者のプライバシーを確保しているかなどを当事者に近い年齢のメンバーも企画段階から交えて検討を行った。実施結果として、ヒアリング会では、複数人の同時ヒアリングであったことから答えにくい内容があるなど、一部配慮が足りない部分があった。少人数で3回に分けて行ったため、次の回では聞き方を変えるなど、実施する中で改善を行った。

 今回のヒアリングでの声も団体内で共有し、ユースセンター等若者の集まる現場に行く機会を引き続き定期的に作るなど、今後も当事者主体の徹底した確保ができるよう、取り組みを行っていく。

(2)法制度・社会変革への機動力

 申請時に挙がっていた課題として①緊急避妊薬OTC化(薬局でアクセスできるようにする)の議論があまり進んでいないこと、②新型コロナウイルスの影響でオンライン診療に関しての指針が再度変更になる可能性のあること、③はどめ規定をはじめとするさまざまな制約により教育現場における性教育が進まないという状況 があった。

①のOTC化に関しては、中間報告時と大きく変わらない状況である。7,000円〜9,000円と費用面での負担が大きいため、提言を行っている。中間報告時点では自治体に注力していたが、現在は国への提言に注力をしている。東京都が都営のユースクリニック「わかさぽ」にて緊急避妊薬代の負担を行う事業を2024年5月より開始したため、そのモデルを全国に広めることを目指している。

②に関しては、中間報告時点と変更なく、おひさまプロジェクトは病院での対面処方を主軸として実施した。

③に関しては、中間報告時点での自民党の勉強会に参加や若者支援の現場など「はどめ規定」などの制約がないところでの性教育の普及に加え、署名活動による世論喚起や提言の強化を行った。署名の提出はこれからであるが、変化を求める声が1万件弱集まっており、変化のための声を届ける力となったと考える。

(3)社会における認知度の向上力

 緊急避妊薬の薬局での試験販売が始まったことで、申請時よりは社会での認知度は向上したと考えているが、まだ大多数に認知された課題になっているとは言い難いと考えており、今後も取り組みは必要である。

 自治体や教育現場での研修や講演会といった草の根活動としては、保護者や教員、若者支援に関わる職員向けの研修は継続的に行っている。加えて、海外の性教育やSRHRを視察する事業を開始し、この視察の報告会やオンラインセミナーでは200名以上が参加するなど、関心を集めることができた。

 また、新聞・雑誌などへの寄稿などの活動では、これまで積極的に行えていなかったメディアリレーションも強めている。現在、テレビや大手新聞などに企画の持ち込みを行っており、今後番組や記事化に向けて動いていく。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 政党の勉強会や研修への参加、地方や国の行政・議員への提言を通じて、どのような形であれば多くのステークホルダーや、性教育や避妊具の拡充に消極的な姿勢をとっている人々を巻き込めるのかを試行錯誤してきた。

 当初は「緊急避妊薬の無償化」を大きく掲げて提言を進めてきたが、避妊薬の話でいきなり共感を集めることが難しいことが見えてきた。そこで、より多くの人が賛成しやすい「プレコンセプションケア」の文脈に乗せて「若者が性に関する相談ができたり、知識がつけられる状態を実現するために、ユースクリニックを増やす」ことを提言する形に変更することとした。プレコンセプションケアであれば、性教育や避妊だけでなく、心身の健康や将来的に不妊で悩まないためのケアなど、別の観点から賛同できる人を増やせるからである。

 そのユースクリニックの中で、医療費補助の一つとして、緊急避妊薬の費用負担も行う形を提言している。

 提言を進める中でさらに形を変えていく可能性はあるが、より多くの人を巻き込み関係構築する方法を模索することができていると考える。

(5)持続力

 申請時に課題として挙げていた緊急避妊薬のOTC化議論が平行線をたどっているという点は、(2)に記載の通り解消されてきている。一方で、緊急避妊薬が高価であるという点は引き続き課題が残っており、安定して無償提供を行うために自治体や他の団体と連携して仕組みづくりを行う必要がある。

 中間報告時点では、自治体予算を確保するために、該当病院内での無償化を実施するステップを考えていたが、東京都のユースクリニックの事例をもとに、国での無償化に向けて提言を進めている。

 また、将来的な展望としては、公費だけに頼らず避妊薬代の負担を下げるために、海外の安価な緊急避妊薬のライセンスを得るために動きを進めている。現在、アメリカで安価な緊急避妊薬や低用量ピルのライセンスを持っている会社との連携を相談している。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 当事業は若者の予期せぬ妊娠・出産や妊娠不安にまつわる課題に取り組んでいる。若者の予期せぬ妊娠や妊娠不安という課題の背景には、①避妊薬の費用が高く種類が少ないこと ②適切な避妊方法を選択するための性教育の不足 ③女性の自己責任として捉える風潮 ④相談できる大人の不足がある。

 これらの課題は、相互に関係性がある。

 避妊薬を使う人が少なく市場が小さいため、販売価格が高い。また、市場が小さいため海外で認可されている避妊薬を国内で新たに認可を取り販売しようとする製薬企業が少ない。その結果、国内で認可されている避妊薬の種類は少なく、価格も高い。

 義務教育では具体的な妊娠の過程を取り扱わないため、避妊薬に関する知識をしっかり持つことができる若者は少ない。

 また、性教育の不足により避妊薬について誤った悪い印象を持っている人も多く、避妊薬の使用が広がらない。若者が低用量ピルなどの避妊薬を服用しようとしても、保護者からの反対で服用できないケースもある。

 予期せぬ妊娠や妊娠不安を自己責任と捉える風潮があることから、緊急避妊薬の薬局販売や公費負担もこれまで行われてこなかった。

 また、若者が妊娠不安を相談できる大人が不足している。家庭で普段から性に関する話がタブーだと感じていて親に言えない、親との関係性が良好でなく話せない、学校の先生にも怒られるのではないかと話しづらい。結果として妊娠不安があったが誰にも言えないまま抱え込んでしまい、緊急避妊薬を服用できる期間や中絶できる期間が過ぎてしまうというケースもある。

 そのため、性知識の普及と市場の拡大、課題の認知拡大、若者が性に関して相談できる場所の拡充が必要である。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

 避妊薬の費用が高く種類が少ないことについては、政策提言による公費負担と、海外の製薬会社とのライセンス等での提携により、費用負担の低い避妊薬の販売が可能となると考えている。

②適切な避妊方法を選択するための性教育の不足については、「はどめ規定」を解消するための指導要領の改訂を目指す。また、学校現場や支援現場での性教育の拡充のために行っている研修事業も貢献していると考えている。

③女性の自己責任として捉える風潮の解決については、現在、メディアへのアプローチを積極的に行っており、当事者を取り巻く環境や、根本的な課題について取り上げられる回数を増やすことで、人々の認知の変容を生み出すことができると考える。

④相談できる大人の不足 ユースクリニックのような、性に関する相談ができる場所を増やす取り組みが必要である。一つは、海外の性教育やSRHRを視察する事業により、ユースクリニックなどの実践をする人を増やす。また、ユースクリニックの取り組みを後押しするために運営のサポートを行うことで、相談できる大人を増やすことに貢献できると考えている。

(3)他団体と連携したプロジェクトのアイディア、あるいは具体的な構想、あるいは希望などはあるか。

 現在構想しているのは、各地のユースクリニックの運営をサポートする取り組みである。現在民間で運営しているユースクリニックは、産婦人科医が個人の持ち出しで実施しているところが多く、資金的な負担から頻繁に開催することが難しく、避妊薬代の負担までは行えていない状況がある。そのため、ユースクリニックの認知を高め資金を集めるサポートを行う。 ■

 

 

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