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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第7回助成

NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク=SJF助成事業中間報告(2019年6月

 

団体概要

 日本に暮らす移民・移民ルーツをもつ人びとの権利と尊厳が保障される法制度の確立を目指して、全国レベルのアドボカシー活動を中心に活動しています。草の根で活動する団体や個人がつながり、移民や移民ルーツをもつ人びとのニーズや課題を集め、法制度改革や社会認識の変革につなげることが目的です。また、海外のNGOとも連携し、国境を超えた視点での移民の権利向上にも努めています。これらにより、誰もが安心して自分らしく生きられると同時に、多様性を豊かさと捉える社会を目指しています。

 

助成事業名:『移住者による移民政策―市民立法としての移民基本法の制定を目指して 

 1980年代末より来日する移民が増え、日本に定住するようになってから30年が経過している。しかしその間、入国・在留管理に偏る政府の移民に対する方針に変化はない。また、人権侵害や労働問題が頻発する技能実習制度も改善がないままに温存されている。そのような中、日本政府は大規模「外国人材」受け入れの方針を打ち出し、中身ある議論を経ずに新たな在留資格「特定技能」を創設した。
 こうした状況に対して、移民・外国人労働者を使い捨てる政策を繰り返さないため、80年代からの移民・外国人労働者受け入れの経験を直視・教訓化し、移民が日本に定住する市民であることを前提に、その生活を包括的に支える「移民基本法」の制定を目指す。
 具体的には、移民・外国にルーツを持つ人々の声を反映させた政策提言を作成する。これまで移民問題に関心のなかった層へもリーチすることを念頭に中高生にも読みやすい内容にし、2日間にわたる移住者と連帯する全国フォーラムin東京を開催し、政策提言を発表、さらに提言をより拡散・周知すべく、プレ・フォローアップイベントを開催する。

 

事業計画 

<事業実施済分>
2019年2月 東京フォーラムの前段となるプレフォーラムを実施。4月施行の新たな外国人労働者受入れを受けて、様々な現場の目線からお話いただき、社会においてこれから求められる対応と、「移民基本法」制定の必要性を議論した。
2019年3月 日本で働く外国人労働者が声を上げる外国人権利春闘「マーチインマーチ」を開催(追加企画)。
2019年5月 東京フォーラムプレイベントとして前日フィールドワークツアー(新大久保と上野の2コース)を開催。
2019年5月 移住連政策提言の冊子の最終仕上げ、印刷。また、Webページをリニューアルし、移住連ネットワークに関する情報をより広い層に広めるようなデザインへ変更した。
2019年6月 東京フォーラムを開催。多様な層からなる900名の参加者を迎え、政策提言を発表し、これを踏まえた未来の日本社会のあり方を議論した。

<事業実施予定分>
2019年10月 移住連機関誌で東京フォーラムの特集を組み、発信する。政策提言を踏まえた省庁への要請書を作成する。
2019年10月 政策提言「移民社会20の提案」をベースに各課題を掘り下げて具体的に必要な制度・政策について議論するシンポジウムを開催する。(シンポジウムのテーマについては、当初の予定から変更)
2019年11月 省庁との交渉を行う。移住者を担い手とした政策提言をとどけ、「移民基本法」制定に向けたロビイングを実施する。
2019年12月 「移住者デー」を開催。外国にルーツを持つ若者など、当事者を中心に、実際に声を上げる機会を作るとともに政策提言の重要性に対する認識を高めるような参加型ワークショップを開催する。

 

助成金額 : 100万円    ~公益財団法人 庭野平和財団との協力による助成です~

助成事業期間 : 2019年1月~2019年12月

実施した事業と内容: 

 事業前期は、移住連が2年以上かけて作成した政策提言の最終仕上げと、その政策提言を発表する場として準備してきた東京フォーラムを開催した。その開催にあたって、幅広い層に向けて、改めて移民がこの社会の一員として「ここにいる」ことを発信するとともに、日本に暮らす移民を取り巻く状況や多民族・多文化共生社会への認識を向上させるようなプレイベントを開催した。

 開催されたプレイベントは、以下の通りである。

 

  • 「私も言いたい移民政策~外国人労働者受入れ政策を問う~」(日時:2019年2月23日、会場:明治大学)

移住連1

移住連2(写真左=当事者アピール)

 

  • 「移住労働者の権利のための行動 『マーチ・イン・マーチ March in March』」(日時:2019年3月3日、会場:上野水上音楽堂)

移住連3

移住連4

 

  • 「フォーラム前日 上野・御徒町ツアー」(日時:2019年5月31日、場所:上野・御徒町)
  • 「フォーラム前日ツアー マルチ・エスニックタウン新宿・大久保のまちを歩く」(日時:2019年5月31日、場所:新大久保)
  • 「移住者と連帯する全国フォーラム・東京2019」(日時:2019年6月1~2日、会場:日本教育会館)

移住連5

 

 2019年2月から定期的に開催したプレイベントを通して、主に20~30代の若年層を中心に、これまで移住連の活動に関わったことのない層を開拓することができた。そうした新しい層の参加者とともに改めて日本における移民を取り巻く課題について検討するとともに、6月のフォーラムの広報も精力的に行った。そうした結果、6月1~2日に開催された東京フォーラムは約900名もの多様な参加者を迎え、多様な人々がともに生きる多民族・多文化共生社会実現に向けた検討を行い、多くの参加者から非常に充実していたという感想をいただいた。

 この東京フォーラムにおいて、移住連が時間をかけて取り組んだ政策提言「移民社会20の提案」を発表した。数多い課題の中から特に重要な部分を抽出し、分かりやすい提案内容にまとめることを重視したことにより、誰にとっても読みやすいと同時に、要点をしっかり理解できる完成度の高い政策提言に仕上がった。900名もの参加者に向けて発表したことにより広く周知され、6月1日の発表から6月末までで約700冊以上の政策提言が拡散している。

 

 

今後の事業予定とその課題や展望: 

 事業前期は、幅広い層に向けた分かりやすい政策提言とその冊子の作成、それを幅広い層に発信する最適な発表の場として準備をすすめてきた東京フォーラムを開催した。事業後期は、発表した政策提言「移民社会20の提案」を更に広めるための学習会やワークショップ、シンポジウムといったイベントを開催する。また同時並行で、移民基本法の制定への賛同者を増やすべく、新たな層を開拓するための企画を打ち出す。

 

  • 政策提言を社会に広める

 10月に秋のシンポジウムとして政策提言内容をベースに個別課題を掘り下げるシンポジウムを開催する。現状では、6月のフォーラムで関心が高かった「教育」の問題を扱う予定である。他にも、フォーラムでの政策提言発表後のフォローアップとして、全国各地で課題別等のタウンミーティングを開催したり、連続セミナーのような形式の企画を実施する予定である。

 

  • ロビイングへ政策提言の内容を反映させる

 2018年12月に入管法改定案が成立し、2019年4月から新たな在留資格「特定技能」での外国人労働の受入れがスタートした。しかしながら昨年秋の国会でも、外国人労働者の受入れや共生にかかわる政策議論は十分にはされていないため、今後は特定技能制度において発生しうる労働問題や人権侵害についても注視する必要がある。移住連のこれまでの国会議員とのパイプや省庁との交渉の枠組みを活用し、新たに発表した政策提言の内容を、今後の政策議論・ロビイング等に反映させていく。

 

  • 外国にルーツを持つ当事者が声を上げる場をつくる

 移住労働者権利条約が採択された日である移住者デー(毎年12月18日)を記念して、外国にルーツを持つ当事者ユースを中心に、当事者が実際に声を上げる機会を提供する参加型ワークショップを開催する。企画を通して、当事者ユースをエンパワーするとともに内側から移民基本法の必要性への認識を高めること目指す。また、当事者ユースが表現力をつけ、積極的に日本社会で発信していくことをサポートするためのフォトワークショップを開催する。成果として、当事者の視点から写された写真を2020年のカレンダー制作に反映させ、写真という新たな切り口から移民と外国にルーツを持つ人々の存在を社会にアピールする。

 

 

 

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