ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第4回助成
NPO法人WorldOpenHeart＝SJF助成事業中間報告（2016年7月）
◆団体概要：
支援の網の目からこぼれる社会的弱者や少数者を支援することを目的としている。日本において、あらゆる支援の網の目からこぼれてきた「加害者家族」に対する直接的支援、社会啓発活動及び、調査研究を行っている。
◆助成事業名：『加害者家族の現状と支援を考えるシンポジウムの開催』
参加者100名程度を対象とした加害者家族支援に関するシンポジウムを各地で開催する。NPO法人WorldOpenHeartの拠点である仙台、スタッフや協力者がいる、東京、名古屋、大阪、福岡で開催予定。参加者数（規模）やシンポジウムの内容は、初回開催の反応を見ながら修正していく。各地でのシンポジウム内で議論された内容やアンケートの集計、協力団体のリストなどをまとめた報告書を作成。
◆事業計画 ：
2016年12月までに、全国5ヵ所にて加害者家族に関するシンポジウムを開催する。テーマの絞り込み、シンポジストの設定、スタッフやボランティア募集など準備期間を助成期間前半7月までとして、8月以降に開催。開催地については、協力者や協力団体が既に存在する仙台、東京、名古屋、大阪、福岡を予定していたが、むしろ、まだ支援ネットワークの弱い地方での開催を検討。開催してほしい地域を募集したところ、全国の研究者、弁護士、市民活動家などから要請があり、開催地域について再度検討中。現在、決定している地域は、11月13日（日）午後、都内で開催。11月中、広島、沖縄、福岡のいずれかで開催を検討中。10月、関西と東北で開催（開催地は検討中）。
◆助成金額 ： 100万円
◆助成事業期間 ： 2016年1月～2017年3月
◆実施した事業と内容：
１．会場ボランティアと開催地、テーマの募集
シンポジウム開催後、開催地での支援ネットワークの基盤ができるように、ホームページ、フェイスブックなどを通じて、全国各地から開催地の募集とボランティアの募集を行った。
２．テーマの募集と絞り込み
「加害者家族」問題について、どのような切り口からアプローチするかを実行委員会で検討。本事業は、支援者養成や研修を目的としたものではなく、広く市民に向けて問題提起を行うことを目的とするものであることから、犯罪報道などを切り口としたテーマを検討中。「加害者家族と犯罪報道―加害者家族問題から考える実名報道」や多くの人が当事者意識を持ちやすい問題として「交通事故加害者家族の現状と支援」、5月のアドボカシーカフェで評判の良かった「加害者家族支援と被害者家族支援」修復的司法などを題材として、被害者と対談する企画などを検討中。
３．実行委員会の開催
現在、東北と関東で結成。シンポジウム開催に向けて活動中。
※ 東北弁護士連合会の定期弁護士大会（2016年7月1日、山形市）で、犯罪加害者家族をテーマにシンポジウムが開催された。国に加害者家族への支援を求める決議を採択するとともに、同連合会の弁護士が加害者家族支援に積極的に関わっていく方針が示された。これは、本助成事業の最終目的である「人権問題としての問題提起」の第一歩となる。この決議をきっかけとして、全国各地の弁護士との連携が期待される。
◆今後の事業予定とその課題や展望：
１．課題―「加害者家族」という存在の可視化
加害者家族は、報道によるプライバシーの侵害や、周囲からのハラスメント、インターネット上での誹謗中傷、結婚差別や就職差別といった問題を抱えていることから、「人権問題」として位置づけられ、「人権教育」のなかにも加害者家族理解というテーマが取り入れられることを目指す。社会内での議論が活発になり、加害者家族というテーマを扱った報道や出版物などが徐々に増えていくことを期待するとともに、法務省人権擁護局の日本における人権課題として、「加害者家族」という集団が支援を必要とするマイノリティとして明記されることを目指す。
２．法律家を中心としたワーキンググループの結成
加害者家族の人権問題について、調査を行うワーキンググループを結成。報道の在り方について、差別的表現（ヘイトスピーチ）への対策、子どもの権利に関する問題、受刑者の家族の権利など、加害者家族に関する各人権問題について検討する委員会を形成し、調査や勉強会を重ね、条例制定といった法整備の検討を行う。
