ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第3回助成事業最終報告
生活保護問題対策全国会議 活動報告(2016年2月)
◆団体概要:
すべての人の健康で文化的な生活を保障するため、貧困の実態を明らかにし、福祉事務所の窓口規制を始めとする生活保護制度の違法な運用を是正するとともに、生活保護費の削減を至上命題とした制度の改悪を許さず、生活保護法をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として、2007年6月に設立された団体です。法律家・実務家・支援者・当事者などで構成されています。
◆助成事業名:『生活保護基準の引下げを阻止するともに生活保護の捕捉率100%を目指す事業』
声をあげにくい立場にある生活保護利用者とともに生活保護制度のさらなる削減に抵抗すること。
また、「最後のセーフティネット」である生活保護制度が、その利用資格のあるすべての人が制度を利用できるようになり、名実ともにこの国で暮らすすべての人の最低生活を支える制度となるよう、制度の内容を周知し、偏見を取り除くキャンペーンを行うこと。
◆事業計画 :
生活保護制度の削減を阻止するための活動としては、下記の諸活動を適時に組み合わせて行う。
1. 意見書の発表(多くの他団体に連名を募ることも多い)
2. 厚生労働記者会における記者会見(意見書の発表等に合わせて開催)
3. 別会場における勉強会的記者会見(関心のある記者に時間をかけてレクチャー)
4. 市民集会、国会議員会館における院内集会の開催
5. デモ
6. 書籍の発行
年間の最も効果的な時期に3~5回程度、市民集会又は院内集会を開催する。
また、同様に3~5回程度、意見書等の発表に伴い記者会見を開催する。(節目としては、新年度予算が始まる前である3月ころ、新年度 開始後しばらくした7月ころ、概算要求が終わり年度末の予算編成に向けた9月ころ、最終予算編成の詰めが行われる11月、12月が予想される。)
捕捉率100%のホームページについては1年目に内容等の検討を行い、2年目には開設にこぎつける。
◆助成金額 : 60万円
◆助成事業期間 : 2015年1月~2016年2月
◆実施した事業と内容:
15年1月8日 生活保護の住宅扶助・冬季加算削減の動き等に関する記者会見(厚生労働記者会)。「住宅扶助基準と冬季加算の削減を既定路線とすることに厳重に抗議する声明」発表
3月5日 大阪市に「プリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望書」提出(160団体賛同)。記者会見(大阪市政記者会)。
3月29日 集会「徹底検証!!生活保護の住宅扶助基準・冬季加算引き下げは何をもたらすのか」(東京ウィメンズプラザホール)
5月15日 山本太郎議員が生活保護と奨学金問題に関する国会質疑
6月18日 厚生労働省に「住宅扶助・冬季加算削減の例外措置の周知徹底と柔軟適用を求める要請書」提出。パンフレット「Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?あきらめないで。闘うすべはある!」等発表。記者会見(厚生労働記者会)。
6月28日 東京新聞が「高校生奨学金割れる対応」「進学目的塾代充当で減額も」との記事掲載
7月4日 設立8周年記念集会「“生活保護バッシング”を乗り越えて~つくりだそう、真の福祉国家を!」(日司連ホール)
(写真=7月4日に開催した設立8周年記念集会「“生活保護バッシング”を乗り越えて~つくりだそう、真の福祉国家を!」では、スウェーデン在住の研究者のほか、生活困窮者支援団体、障害者団体、労働団体のメンバーが、これからの運動のあり方について熱い議論を交わしました。)
7月 コミック「神様の背中~貧困の中の子どもたち」(さいきまこ)
10月28日 「人間らしく生きたい。10.28生活保護アクションin日比谷(25条大集会)」開催
(写真=「人間らしく生きたい。10.28生活保護アクションin日比谷(25条大集会)」では、これまでにない幅広い方々が呼びかけ人になってくださいました。生活保護のワンイシューでは前例のない4000人の人々が全国から集まりました(詳しくは公式HPをご参照ください)。)
16年2月1日 「資産申告書に関する保護課長通知の撤回等を求める要望書」の提出。「資産申告書問題Q&Aハンドブック」の公表。
※ 他に、生活保護の捕捉率100%を目指すPT会議開催(2月3日、4月10日、6月4日、7月3日)
◆事業計画の達成度:
1. 生活保護基準削減を阻止する活動については、例年通り、国の動きに合わせて適時に必要な対応を講ずることができた。特に、住宅扶助基準・冬季加算削減問題については、Q&Aを分かりやすくまとめたパンフレットを作成し、現場での具体的対抗手段として支援団体や当事者等から好評を得た。また、奨学金の収入認定問題については、国会議員の質問、新聞報道との連携により、8月6日、福島県のケースについて当事者の訴えを認める再審査請求の裁決と運用を改善する厚生労働省通知が出されるという大きな成果を得た。
2. 生活保護の捕捉率100%を目指す活動としては、当会会員でもあるさいきまこ氏がコミックを出版した(当会が内容について監修)。別に実行委員会を組織しての取り組みであるが、当会会員らも中心メンバーとして10月28日に400人を集めて「25条大集会(公式HPあり)」を成功させた。一方、独自のHP作成については、会議を何度か重ねたものの得意分野でもなく他の取り組みを先行させる必要もあり、率直に申し上げて、大きな進展が見られていない。
◆助成事業の成果・助成の効果:
上記のとおりの大きな成果があったが、特に住宅扶助・冬季加算削減問題のQ&Aパンフレットについては、ソーシャル・ジャスティス基金の助成があったおかげで当事者・支援者版だけでなく、福祉事務所版を作成し、全国の全福祉事務所に無償送付することができた。その結果、幾つかの福祉事務所からは「参考になる」と感謝の電話があったり、追加送付の依頼があったりもした。また、資産申告書問題Q&Aパンフレットについても、同様に貴基金の助成のおかげで、全福祉事務所に無償配布できた。
また、基金の助成を利用して7月4日に開催した8周年記念集会は、同集会にパネリストとして登壇していただいた生活保護受給者支援団体、障害者団体、労働団体のメンバーらが、10月28日の「25条大集会」の実行委員会等において連携して主要な役割を果たし、同集会の成功の重要な素地を築くことができた。
◆助成事業の成果をふまえた今後の展望:
生活保護制度をめぐっては今後も削減の動き等が予想され、今後とも国の動きに合わせて適時の取り組みを行っていく必要がある。その意味で今後とも貴基金からの助成をいただけると大変ありがたい。
一方、捕捉率アップ等を目指す運動については、25条大集会の成功を踏まえ、当会だけでなくより幅広い枠組みでの取り組みが発展していく兆しがある。当会幹事でもある藤田孝典氏(「下流老人」の著者)も活躍する中、費用と労力を費やしてHPを作成することにどれだけの効果があるのかも含めて、幹事会においてよく検討したい。