ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第3回助成事業最終報告
NPO法人 市民科学者国際会議 活動報告(2016年1月)
~第5回市民科学者国際会議(15年9月)の公開アーカイブ映像はこちらから~
◆団体概要:
放射線の健康・環境影響に関する科学的知見を集め、市民社会で共有し、国内外の専門家と市民による議論の場を提供し、また効果的な防護対策を最善の形で生かしていけるよう、国際的なネットワークを発展させることを目的に活動している。
◆助成事業名:『放射線防護について情報・知見・取り組みを、市民と科学者が共有し、共に次の一歩を模索していくための第5回市民科学者国際会議の開催』
第4回までの市民科学者国際会議で得られた知見の発表と、第5回市民科学者国際会議へ向けた準備と開催を行う。テーマを決めた講演を行った後、円卓会議で様々な立場からの提言・議論へと繋げる。
◆事業計画 :
・2015年1〜8月:第5回市民科学者国際会議の内容検討、発表予定者への打診、会議場などロジスティック関連。
・2015年4〜9月:会議内容、発表者、開催細目の確定。
・2015年9〜10/11月:会議資料の編集・翻訳・印刷など。
・2015年10/11月:会議開催、国会議員、関係省庁への働きかけ、院内勉強会・集会等。
・2015年10/11〜12月:会議の成果発表(会議録画のwebサイト掲載、会議録の編集・翻訳・発行、科学誌への論文掲載など)。
◆助成金額 : 80万円
◆助成事業期間 : 2015年1月~2015年12月
◆実施した事業と内容:
事業計画に基づき、第5回市民科学者国際会議を以下の要領で開催しました。
【日程】2015年9月20日〜22日
【場所】国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)
国際交流棟 国際会議室
【参加者】国内外の放射線防護に関連する研究者・専門家、アーティスト、
原発事故被災者、一般市民
【内容】
9 / 20 NOddIN×CSRP 科学と芸術の狭間
9 / 21 セッション1:生物学的影響と公衆衛生
円卓会議:低線量被曝と公衆衛生の課題
9 / 22 セッション2:原発事故後の言葉、法、倫理
円卓会議:(同左)
【招聘した研究者・専門家、アーティスト】
- 第1日目: 丹下紘希 (映像・インスタレーション / NOddIN) /永幡幸司 (サウンド・スケープ / 福島大学) / ショウダユキヒロ (映像 / NOddIN) / 谷一郎 (映像 / NOddIN) / ブリス・セシル (コラージュ / Centre National de la Recherche Scientifique) / よしむらしゅういち (展示 / NOddIN) / 関根光才 (映像 / NOddIN) / 平井有太 (モデレーター / 有太マン) / おしどりマコ・ケン (展示 / パネリスト / L.C.M. PRESS) / グレン・カズマ (ダンサー) / 渡邊晃一 (美術家 / 福島大学) / クリス・ユバーマン (映像) / 506 (映像) / ガストン・メスケンス (哲学 / M..E..T..A..S..P..E..C..T) / 児玉龍彦 (パネリスト / 東京大学先端科学技術センター) / 影浦峡 (パネリスト / 東京大学情報学府) / Shing02 (レクチャー / ラッパー)
- 第2日目: キース・ベーヴァーストック(東フィンランド大学)/ 島薗進(上智大学)/ ティモシー・ムソー(サウスカロライナ大学)/ 濱岡豊(慶応大学)/ ジョン・マシューズ(メルボルン大学)/ 津田敏秀(岡山大学)/ 春日文子(国立医薬品食品衛生研究所)
- 第3日目: オルガ・クチンスカヤ(ピッツバーグ大学)/ 藍原寛子(株式会社Japan Perspective News)/ セシル・ブリス(フランス国立科学研究センター)/ ガストン・メスケンス(ゲント大学)/ 吉村良一(立命館大学)/ 高嶌英弘(京都産業大学)ほか多数
◆事業計画の達成度:
【来場者分析】
昨年度との比較で、参加のべ来場者数は昨年度の389名から若干減少したものの、年代分布は40代以下が37.6%から48.2%へ増加するなど、当会議が狙いとする次世代を担う若者層への訴求が見られた。
のべ |
10代 |
20代 |
30代 |
40代 |
50代 |
60代 |
70代 |
不明 |
|
男性 |
202 |
3 |
7 |
36 |
44 |
48 |
31 |
9 |
24 |
女性 |
142 |
1 |
15 |
22 |
40 |
31 |
12 |
5 |
16 |
不明 |
4 |
— |
— |
— |
— |
— |
— |
— |
4 |
合計 |
348 |
4 |
22 |
58 |
84 |
79 |
43 |
14 |
44 |
比率 |
100% |
1% |
6% |
17% |
24% |
23% |
12% |
4% |
13% |
【ライブ・インターネットストリーミング視聴者数】
会議当日のインターネット中継の視聴者数は以下のようになった。
<日本語>
20日 合計視聴者数 183、ユニーク視聴者数 85、のべ視聴 61.47時間
21日 合計視聴者数 629、ユニーク視聴者数 262、のべ視聴 264.72時間
22日 合計視聴者数 676、ユニーク視聴者数 260、のべ視聴 265.66時間
<英語>
20日 合計視聴者数 14、ユニーク視聴者数 10、のべ視聴 1.8時間
21日 合計視聴者数 44、ユニーク視聴者数 32、のべ視聴 19.05時間
22日 合計視聴者数 35、ユニーク視聴者数 20、のべ視聴 4.21時間
3日間の合計視聴者数 1,581
◆助成事業の成果・助成の効果:
福島県民健康管理調査の一環として行われている甲状腺スクリーニング検査における小児甲状腺がんの多発状況について活発な議論が行われた。特に2つの大きな見解、放射線誘引である/スクリーニング効果もしくは過剰診断(診療)、に関連してそれぞれ根拠となるデータを用いた議論が行われたことは、福島県民健康調査検討委員会、甲状腺部会、また国の環境省の委員会などによる公の議論がなされない中、活気的な議論となり、また一般来場者にとっても科学者同士の議論のあり得べきあり方を経験したことは誠に大きな成果といえる。この場での議論は、11月にパリ・フランスで行われたシンポジウムに持ち越され、津田氏・ウイリアムス氏による議論がおこなわれるなど、国際的な学術の場での論議へと発展しており、情報ガラパゴス化しやすいローカルな日本の原発事故影響という枠組みを越えた国際的な議論への道筋の一つに貢献できたことはとても喜ばしい。
十分な広さの会場を確保でき、映像配信、音声スタッフに助成金を活かすことができたことで、通訳ブースの設置と合わせて日英の両言語ともに聴きやすいライブ配信が可能となった。またアーカイブ映像を速やかに準備することができた。またスライド等の資料翻訳に助成金を使うことができて、事前の準備を滞りなく行うことができた。
第1日目の“科学と芸術の狭間”をテーマにしたことで、これまでとは異なる関心層・年齢層の来場者を迎えることができた。特に20代、30代の来場者が顕著に伸びたことは次回に繋がる大きな一歩と目している。
◆助成事業の成果をふまえた今後の展望:
今回は福島県民健康調査検討委員会や環境省の委員会にも委員として連なる方々をディスカッサントとして招待し、とても活発な議論が展開できた。第6回では更に、政府、自治体に委員を担当されている科学者・専門家の方々をお招きして、今後の対策を協議していく場としていきたい。
第6回目となる今年は福島県二本松市での開催を予定しており、第5回の1日目のゲストスピーカーであった渡邊晃一教授が主宰する福島現代美術ビエンナーレとの共催が決まっている。会期前後に共催イベントの企画と実施の試み、被災住民、福島県内各自治体関係者、また他分野から東電原発事故に関連した発信をされてきた方々をお招きし、より学際的で被害者や国内外から関心を寄せる市民に身近な問題として考察する場を創りあげたい。
◆第5回市民科学者国際会議(2015年9月)の内容については、以下のサイトに公開しています。ぜひご覧ください◆