ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第3回助成
特定非営利活動法人 市民科学者国際会議=助成事業中間報告(2015年7月)
◆団体概要:
【団体設立までの経緯】
福島市をはじめとする汚染が心配された地域に、いちはやく、市民みずから放射能測定ができる測定所を開いた「市民放射能測定所」のメンバーを中心に、2011年10月から、「放射線防護に関する市民科学者国際会議」と銘打った会議を、年1度のペースで開催してきました。
政府や業界、その影響を受けやすい学会のメインストリームから独立を保ち続けてきた内外の専門家による最新の科学的知見を紹介、また、専門家と市民、被災地住民の意見交換を通して、科学の知見を現場の放射線防護に活かす道をさぐってきました。
東京電力福島第一原子力発電所事故は、多大な量の放射能を放出し、福島県とその周辺地域を中心に、東日本はもちろんのこと、北太平洋、さらには北半球の広範囲を汚染しました。環境、特に海洋への流出を確実に止める技術は確立されず、放射能の放出はいまも続いています。汚染地域の人々の不安は、放射線被ばく、特に低線量被ばくの健康被害がまだよく分かっていないこと、そして何よりも政府の情報と放射線防護、放射能対策が信用できないことでいっそう助長増長されています。
いま求められているのは、住民の健康被害を極小化するための、予防原則に立脚した、放射線防護・放射能対策です。
その思いをそれぞれに持ち活動する個人や団体や専門家が集まって、放射線の健康影響に関する世界の最新の科学的知見を共有し、議論する場を設けるため、2011年から年1回、「市民科学者国際会議」を開催してきました。これをさらに継続して、議論を蓄積し、効果的な放射線防護対策を生かす国際的なネットワークを発展させていくために、2015年、「市民科学者国際会議」は法人化しました。
【団体のミッション / 活動の目的】
東京電力原発事故と、それがもたらした放射能汚染は、近代科学技術がもつネガティブな側面を露呈した象徴的事件であり、現代社会が直面している他の問題(化学物質汚染、生命操作、食の安全など)にも通底しています。
政府主導の「復興」の名のもと、残念ながら、潜在的な放射線被ばくによる膨大な数の被害者に対する将来の賠償額を抑えるために、放射線の健康影響が過小評価されている現状があります。政府の庇護を受ける「科学者」がこのような政策に「科学的」根拠を与えてみせる一方で、事故の被害者や事故処理にあたる労働者、そして被災地域の住民は「非・科学者」と扱われてその意思決定から排除され、被ばくを余儀なくされています。これこそ、現代の「科学技術社会」がもたらす負の側面の縮図にほかなりません。
いま必要なのは、政治や産業から独立した、本来の意味での「科学」(利益相反のない、事実にもとづいて検証可能な形で知を追求する手続き)にもとづいて放射線の健康影響を再評価していく試みです。科学者だけでなく、被害者や市民団体、他分野の専門家、自治体・政府関係者なども含めた、多様で異なる立場からの提言・議論にもとづく意思決定により、この答えのない現状から被災者の人間の復興のための道を見出していくプロセスの確立が必要だと考えます。そのプロセスを提案、実践するために、市民科学者国際会議は活動しています。
【現在の活動内容 / 今後の活動計画】
- 第1回〜第3回市民科学者国際会議 (2011年〜2013年)来場者 延べ約1000~1200名Ustream リアルタイム視聴者+アーカイブ視聴者数 約20000~25000
- 第4回市民科学者国際会議の開催(2014年11月22日〜24日 国立オリンピックセンター)来場者数 延べ450名Ustream リアルタイム視聴者数 日本語配信 2500名、英語配信 300名
◆助成事業名:『放射線防護について情報・知見・取り組みを、市民と科学者が共有し、共に次の一歩を模索していくための第5回市民科学者国際会議の開催』
第4回までの市民科学者国際会議で得られた知見の発表と、第5回市民科学者国際会議へ向けた準備と開催を行います。第5回市民科学者国際会議で予定している基本的なプログラム構成は、セッション1として、新たな生物学的知見(人間以外の環境・動植物影響を含めた)メカニズムの解明、セッション2として、被ばく影響に対する公衆衛生の取り組みと対策(案)、セッション3として、それらの知見から予測される健康影響と、それを未然に防止するために必要な法的枠組みと実践を予定しており、その後の円卓会議で様々な立場からの提言・議論へと繋げます(参考:第3回会議のアーカイブ映像をhttp://csrp.jpに掲載)。
スタッフの職務としては、(1)第4回会議の会議録の翻訳・編集、(2)得られた知見の医学・科学雑誌への発表、 (3)第5回開催のための準備(会議内容の企画、発表候補者への打診・交渉、予稿原稿の翻訳・編集・発行、ほかロジスティック全般)、(4)会議当日の設営・運営・通訳など、(5)会議後の成果の編集・翻訳・発行が主たるものです。ほとんどの作業が放射線関連の専門知識と日英バイリンガルの能力を要します。
◆事業計画 :
・2015年1〜8月:第5回市民科学者国際会議の内容検討、発表予定者への打診、会議場などロジスティック関連。
・2015年4〜9月:会議内容、発表者、開催細目の確定。
・2015年9〜10/11月:会議資料の編集・翻訳・印刷など。
・2015年10/11月:会議開催、国会議員、関係省庁への働きかけ、院内勉強会・集会等。
・2015年10/11〜12月:会議の成果発表(会議録画のwebサイト掲載、会議録の編集・翻訳・発行、科学誌への論文掲載など)。
◆助成金額 : 80万円
◆助成事業期間 : 2015年1月~2015年12月
◆実施した事業と内容:
●ワークショップの企画、実践
(2015年1月〜3月)
2月4日 まつもと子ども留学 勉強会 参加者46名
2月14日 311受入全国協議会 ステディツアー 35名
3月1日 放射能リテラシーワークショップ 50名
3月22日 エスポワール・ド・ソレイユ チャリティーコンサート 250名
3月24、25日 CRIRAD記者会見および一般集会 250名(フランス)
3月28日 東京電力原子力発電所事故シンポジウム “智慧と無知” 100名
6月14日 SJFアドボカシーカフェ「リテラシー・ワークショップVol.3 〜原発事故後の言葉と民主主義〜背景にある情報の意味に気づく」
●投稿記事の企画、執筆、投稿
3月末 岩波書店「科学」4月号 キース・ベーヴァーストック博士インタビュー記事 1万部
●事業計画の見直し
・2015年1〜8月:第5回市民科学者国際会議の内容検討、発表予定者への打診、会議場などロジスティック関連。
・2015年4〜9月:会議内容、発表者、開催細目の確定。会議資料の編集・翻訳・WEB作成、印刷など。
・2015年9〜10/11月:会議開催、国会議員、関係省庁への働きかけ、院内勉強会・集会等。
・2015年10/11〜12月:会議の成果発表(会議録画のwebサイト掲載、会議録の編集・翻訳・発行、科学誌への論文掲載など)。
●プログラム構成の変更
9月20日(日)DAY1: 科学と芸術の狭間/Between Arts and Science
午後より映像作品上映、パネルディスカッション、作品展示ほか
9月21日(月・祝)DAY2: 公衆衛生と放射線防護 (発表 国内3名、海外3名)
円卓会議:低線量被曝と公衆衛生の課題
9月22日(火・祝)DAY3: 原発事故後の言葉、法、倫理 (発表 国内3名、海外3名)
円卓会議:原発事故後の言葉、法、倫理
◆今後の事業予定とその課題や展望:
【今後の活動計画】異なる意見、立場をもつ科学者・専門家の招聘
- バランスの取れたフェアな議論の場の構築
- 会議準備−発表予定者への打診、会議場などロジスティック関連
−会議内容、発表者、開催細目の確定
-会議資料の編集、翻訳、印刷、WEB作成、フライヤ・ポスターデザイン配布など
3. 市民科学者国際会議(CSRP2015)
-開催日 2015 年 9 月 20 日 (日) ~9月22日 (火・祝) (予定)
-会 場 国立オリンピック記念青少年総合センター(国際交流棟 国際会議室)
-所在地 〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3-1
-主 催 市民科学者国際会議実行委員会(CSRP実行委員会)