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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ報告

 

◆ 次回企画 ◆  ~ ご参加募集中 ~
『働く世代の貧困問題と生活保護法改正――生活保護と日本の貧困問題 第2回』
詳細・ご参加の受付はこちら  http://socialjustice.jp/p/20130924/

 

 

セクシャル・マイノリティから見た、日本の「新しい」家族と生活

・・・2013年8月31日、早稲田奉仕園にて、SJFは第18回アドボカシーカフェを開催しました。「セクシャル・マイノリティのことを知り、誰もが生きやすい社会を目指して」をテーマとする企画は3回目の今回も、新たな視点が参加者から多く提起され、活発な対話が繰り広げられました。
・・・日本の身近な地域から、世界全体の動きまで、視野を広げつつ足元に立ち返る対話が続くなかで、旧来の“家族”のみにこだわらない多様な“コミュニティー”のあり様が、「新しい」誰もが生きやすい社会への鍵として浮かび上がりました。

 

◆ 当日プログラム概要 ◆

・・・◇ ゲストからの提言

・・・「セクシャル・マイノリティの日本の現状」

・・・・・・島田 暁 さん (「レインボー・アクション」代表、映像作家)

・・・「LGBTに対する世界の動き」

・・・・・・吉岡 利代 さん(NPO法人ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表代理)

・・・「レズビアンのピアサポート活動から考えた、「新しい」家族・生活」

・・・・・・加澤 世子 さん(NPO法人 レインボーコミュニティcoLLabo 理事)

・・・◇ 参加者のグループディスカッションやゲストとの対話

・・・◆ モデレーター 樋口 蓉子(SJF運営委員)

 

よしおかスピーチ    しまだスピーチ   かさわスピーチ
吉岡 利代 さん                    島田 暁 さん      加澤 世子 さん

◆ 映像アーカイブとともに報告いたします(以下 敬称 略)。◆

 

~ 性はグラデーション ~

◇ どういう人を好きになるか・ならないかという観点でみると、LGBT(レズビアン;女性同性愛者、ゲイ;男性同性愛者、バイセクシャル;両性愛者、トランスジェンダー;性別越境者、性別移行者・異性装者など)だけでなく、たとえば好きになる性別を問わない全性愛者であるパンセクシュアル、人を好きになること自体に違和感があるアセクシュアル、そして異性を好きになるヘテロセクシュアルなど多様だ。性自認や性的指向、身体の性はグラデーションであると理解した方が、実態に近いのではないかと思う。(島田)

◇ 男性と女性という性別二元論的な考え方じたいに違和感を持つ人がいる。(加澤)

 

~ セクシャル・マイノリティの社会生活の課題 ~

◇ レズビアンのカップル単位での社会生活と、ゲイのカップル単位での社会生活との収入格差は、女性としての一般的収入と男性としての一般的収入との格差が倍増されることになる。レズビアンの中には、生計のために、敢えて異性と結婚し子供を産み育てている人もいる。(島田)

◇ レズビアンのピアサポート(同じような立場の人によるサポート)では、継続的に働くことができる仕事を選ぶことも課題となっている。女性であることを強調する制服のある職場を避けたり、プライベートの話が多い職場を避けたり、将来を考え専門的技術を活かせる職場を求めたりする傾向がある。(加澤)

◇ 自分のような当事者が、どれだけ不平等や不公平の中で生きているのか、初めてよく分かった。(参加者)

◇ 既存の社会保障制度がセクシャル・マイノリティに十分に活用されていないのは、“家族”がやってくれることを前提とした制度で、家族に依存しすぎだからではないか。みんなが躊躇なく利用していける仕組みづくりが重要だ。(参加者)

◇ ヘテロセクシャルは、セクシャル・マイノリティの困難な状況をどうやったら知ることができるのか。困難を想像できない人が多い。スクールカウンセラーの無知により、相談に行っても逆に傷ついて帰ってきた高校生がいる。大人への教育から子どもへの教育へつなげ、社会的に包み込むように支援する動きがあるとよい。(参加者)

 

~ メディアとセクシャル・マイノリティ ~

◇ 今年に入って、新聞記事で取り上げられるケースが増えた。セクシャル・マイノリティをテーマとする前回のSJFアドボカシーカフェ後、大手新聞社の記者から「ごめんなさい」と切り出され、「記者がセクシュアル・マイノリティの記事を上げても上司に取り上げてもらえなかったが、最近、載せてもらえるようになった」と話されたことがあり、驚いた。本来、「ごめんなさい」で済む話では無いと思うが、うれしい情報ではあった。(島田)

◇ 最近は日本でもLGBTについて議論されているが、世界がやっているから日本もやっている、友好と見られるからやっているにすぎないのではないか。(参加者)

◇ メディア現場の変化要因の1つ目は外圧として、オバマ大統領や国連事務総長によるセクシュアル・マイノリティの人権尊重メッセージの発信がある。2つ目にメディア従事者の世代交代があり、1990年代前半に女性誌CREAが、ゲイのお友だちを作るのが社会進出の進んだ女性のステータスといった特集を組んだことに端を発するブームもきっかけとなり、勃興した日本でのセクシュアル・マイノリティのコミュニティー活動と、それをとりまく報道ブームの中で育った世代が、実は当時かなり多くの記事の企画をデスクに潰された実態がある。約20年後の今となって、メディアの意思決定層になり、企画を通せるようになった点が考えられる。3つ目にインターネット環境の変化があり、個人が発信できるという状況をマスメディアも無視できなくなり、双方向性を図ろうとしている点があると思う。(島田)

 

~ セクシャル・マイノリティの困難克服へ向けた世界的な動き、そして日本は ~

◇ 「…私は声をあげるようになりました。命が脅かされているから。そして国連憲章と世界人権宣言における私たちの義務であるからです。人権を守ること、どこの誰の権利でも。レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーを理由に、暴力や差別を受ける現実があります。…終焉に向けた闘いは、私たちの闘いでもあります。…差別撤廃教育に取り組まなければなりません。実現に向けて、人権理事会と善意ある全ての人々に期待します。時は来たれり。」――国連事務総長/潘基文

◇ 2014年冬季オリンピック開催国のロシアでは、未成年の前でLGBTについて話しただけで刑罰が処せられるという同性愛嫌悪法が今年成立した。外国人に対しても適用されるもので、IOCオリンピック委員会はLGBTの選手への差別行為のないよう注視している。(吉岡)

◇ アフリカの5カ国では、同性愛は死刑の対象となっている。カメルーンでは、2010年以降、LGBTが30人以上訴追された。アメリカやジャマイカでも、トランスジェンダーが襲撃を受ける事件が相次いでいる。(吉岡)

◇ アフリカで普通にLGBTが生活していた時代があった。植民地化されヨーロッパ文化が入ってきて、差別や侵害が始まった。そもそもヨーロッパで同性愛者が迫害されるようになったのは、産業革命以後だ。(参加者)

◇ 改善の動きが始まっている。アフリカのブルンジは、LGBTが2007年に初めてカミングアウトしたばかりだが、すでに大きなコミュニティーに育っている。オランダで同性婚が2001年に合法化されたのを始めとしてフランス・ニュージーランドなど15カ国で合法化されている。アメリカ国内では、カリフォルニアなど14州で合法化された。今後、アジアでも、同性婚が認められる国が増えるといいなと思っている。(吉岡)

 

~ 人権教育の現場でセクシャル・マイノリティは ~

◇ 人権教育推進委員会委員長から人権研修のなかで取り組みたいと相談を受けたことがある。いろいろな教育機関で、一人でも意識があって、動き出す人がいれば、状況は動いていく・変わっていくと感じた。(加澤)

◇ 学校内での制度を変えて行く試みとして、一部の高校に性的マイノリティの人を派遣して対話する活動をしているNPOがある。ゲイの当事者が出ているDVDを作成し、高校性向けに配布している団体もある。(参加者)

◇ 市区町村で人権問題の一つとして取り組まれるケースが多くなった。「みんなちがって、みんないい」―金子みすず―が標語的に使われることがあるが、本当に個別の“ちがい”をわかっているのかどうか疑問だ。(島田)

◇ 羅列された人権問題の各項目に、横断的にセクシャル・マイノリティの問題が存在します!とアピールするのはいいアイディアだ。行政がどこまでリアルに問題をとらえているのか疑問だ。(加澤)

 

~ 言葉のとらえ方、とらえられ方 ~

◇ 昨夜ミュージックステーションで放送されたAKB48の『AKBフェスティバル』の歌詞に、「…男も女もゲイも、老いも若きも問わないよ…」とあるが、レズビアンは? 海外では“ゲイ”にレズビアンを含む場合もあるが、そのことを知っているのは日本ではよほど専門的な知識がある人に限られる。つまり、この場合はレズビアンや多様なセクシュアリティを含んでいるようには感じられない。この表現は問題では。(島田)

◇ 全体性を表すには、どういう言葉が正しいのか?(参加者)

◇ “どんな人を、好きになっても/ならなくても、いいよね” というメッセージが発せられたらいい。(島田)

◇ 言葉って難しい。当事者どうしでも気を使う。 “レズ”と発言したヘテロセクシュアルの方に、“レズビアン”と表現してほしいと言った際には、レズという言葉がAV的で蔑称である云々、一から説明したら納得してもらえた。(加澤)

 

~ パートナーシップの模索から見えること ~

◇ レズビアンが、お付き合いしている人と、どう将来を考えて行くのか。気軽に相談できる相手がいないケースが多いが、横のつながりが重要だ。パートナーシップを社会の中で実現していくことが課題になっている。(加澤)

◇ 同性パートナーに法律上の地位を与え、相続・社会保障・税制・養子縁組などにおいて保護を与える同性パートナーシップ制度がない国は、主要国首脳会議参加国G8の中では日本とロシアのみだ。(吉岡)

◇ 日本に同性パートナーシップ制度がないのは、“家”という制度が強いからではないか。(参加者)

◇ 日本の家制度が現在のようなスタイルになったのは、明治の富国強兵制度だ。戦後は、経済成長という名の戦争のもと女性は家を守り男性は外で働くスタイルを支える制度が実質的には強化された。ずっと戦時体制は続いていた。そしてバブルが崩壊し、どうしよう、というのが今だ。(島田)

◇ 同性婚が認められるようになった時、結局、得するのは富裕層ではないか。“結婚”するとパートナーを持つことによる特権が得られるが、アセクシュアルの方は、この特権すら受けられない。結婚制度のもつ問題点を考えたい。(参加者)

◇ パートナーシップと同性婚のどちらがLGBTにとってよいのだろうか。同性婚は既存の結婚制度の範疇にとどまる気がする。(参加者)

◇ フランスでは、パートナーと一緒に住み、子どもがいなくても援助する仕組みがあるが、このような方がよいのではないか。(参加者)

◇ フランスのパックス法は、共同生活を営むカップルに、婚姻関係のカップルに準ずる権利を認めている。作った人はゲイだったが、実際の利用者には、異性カップルもかなり多い。(島田)

◇ 当事者アンケートで“同性婚を選択しますか?しませんか”への回答は半々くらいだった。いざという時の保障制度があれば、“結婚”できなくてもよいのではないか、制度は選択できた方がよいが。(加澤)

 

~ 「新しい」家族へ、安心して居られる場所をもとめて ~

◇ セクシュアリティに揺れ、自分が何者であるのか揺れた時、アクセスする情報源についてアンケートを取ったら、コミュニティーに参加すると答えた人が30.9%に対し、家族に話すという人は16.2%と少なかった。この背景には、家族に否定されることへの恐れ、家制度や結婚制度によるプレッシャーを解消することの難しさがあるようだ。また、話された親自体が孤立してパニックに陥り、子どもにつらく当たってしまうことがある。子どものみが背負わず、親とコミュニティーをつなげるような対策が必要だ。(加澤)

◇ 家族という考え方が強いなかで、若者にとって親以外にコミュニケーションの選択肢が沢山あるといい。今日の企画もいいコミュニケーションの場だ。(吉岡)

◇ 「新しい」家族とは、新しいコミュニケーションのあり方なのではないか。異文化どうし、ぶつかり合って、分かり合い助け合っていくことができるかどうか、という問題なのではないか。(参加者)

◇ 同性カップルの結婚と養子を持つ権利を認める法案が、今年4月にフランス上院で可決された。オランダでは、移民やセクシャル・マイノリティ等、どんな子・どんな親に関わらず育児を保障する制度が整っていて育てやすいようだ。(吉岡)

◇ 養子をもつ同性婚の育児制度にはどのようなものが考えられるのだろうか。また離婚した場合、養子はシングル且つ同性婚の養子という二重の差別を受けるのではないか。(参加者)

◇ 親は男女がそろっていなくても、たとえば一人親だったとしても、同性同士の親だとしても、「父性」と「母性」を親が意識して使い分ければよいのではないか。カナダでは、「お父さん」「お母さん」ではなく「親1・親2」というような呼び方を公的機関が採用し始めているという話を聞いたことがある。(島田)

 

~ 誰もが生きやすい社会への第一歩として ~

◇ 多くの人が社会生活を学ぶ場である家庭・学校・仕事場で、もし、存在しないものとして扱われたら? まずそのつまずきがセクシャル・マイノリティにはあることを知ってほしい。そこへのエンパワーメントが求められている。(加澤)

◇ 日本では、セクシャル・マイノリティが殺される恐怖を感じることはないが、“いないもの”とされてしまうという迫害がある。(参加者)

◇ みなさんの隣人に必ずセクシャル・マイノリティの方はいる。震災後、“家族”や“きずな”がメディア上で踊ったが、セクシャル・マイノリティには、“家族”に含まれていないように感じる方もいる。自分は“家族”を営んでいけるのかという不安に襲われる方がいる。多様なセクシュアリティの方々の居場所がある社会になるとよいと思う。(加澤)

◇ 映画「震災とセクシュアリティ・絆」を作成中だ。震災で、家族や絆が喧伝され傷ついたり、自分がそこには含まれていないと感じたりしたセクシュアル・マイノリティは多い。しかし、自分たちならではの絆をどう新しく築き、創っていくのか、行動しようとしている人たちと出会い、撮影を続けている。そして、同じように、あの「絆」の喧伝から排除されたと感じた人は、セクシュアル・マイノリティではない人の中にも多く居たのではないかと思う。他の社会問題についても、同じような問題に直面している人たちとつながろうとする時、障壁となっているのがセクシュアル・マイノリティに対する差別や偏見だ。それを取り払えたら、より大きな動きになっていくだろうと思う。(島田)

◇ 女性ならではの社会問題について、レズビアンという視点から手を取り合って取り組んでいけたらいいと思う。(加澤)

 

 

*** 2013年8月31日企画のご案内資料はこちら ***

 

 

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