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***  次回アドボカシーカフェは、8月2日、『原発事故は、どのように報道されたのか』、
詳細は 
http://socialjustice.jp/p/20130802/
お申込みは https://socialjustice.jp/20130802.html  ***

~福島・市民社会・国連をつなぐ 第2回~
原発事故をめぐる「健康に対する権利」、国連人権理事会勧告を考える

 

    2013年7月18日、文京シビックセンターにて、SJFは第16回アドボカシーカフェを開催しました。福島原発事故による放射性物質が健康を危険にさらしている深刻な人権状況について、国連人権理事会の特別報告者アナンド・グローバー氏による調査の最終報告と日本政府に対する勧告が、5月27日に出されたことを受けて企画したものです。この国連報告者の調査をサポートしたNPO法人ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子 弁護士をゲストにお迎えしお話をうかがうなかで、子どもや将来世代が健康に暮らす権利を国際基準に基づき守る為に、勧告を活かすことの重要性が再認識されました。また、公的機関の情報公開や個人情報保護に取り組んできたNPO法人 情報公開クリアリングハウスの三木由希子 理事長にコメントをいただくなかで、事故被災者が自らの健康を守るために必要な情報へ直接アクセスできることが、権利として保障されることの重要性が強調されました。

 

◆  おもな内容 ◆
◇ 伊藤 和子さん(NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ事務局長、弁護士)からの提言
◇ 三木由希子さん(NPO法人 情報公開クリアリングハウス 理事長)からのコメント
◇ 参加者とゲストのダイアログやディスカッション
◇ 進行・企画説明 大河内秀人(SJF運営委員)

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aaaaaaaaゲスト 伊藤和子さん         コメンテーター 三木由紀子さん

◆  映像アーカイブとともに報告いたします(以下 敬称 略)。◆

◇参考資料―アナンド・グローバー報告と勧告(HRN仮訳)はこちら;
http://hrn.or.jp/activity/topic/post-213/

~ 日本政府は、事故直後に、避難基準を20ミリシーベルト(mSv)と設定した。従来の一般市民の被ばく限度の基準である年間1mSv基準を緩和したことになるが、100mSv以下の低線量被爆は安全とみなし、住民の意見を十分に反映せずに政策立案を進めた。
⇒ 放射性物質の影響を特に受けやすい、子どもや女性を深刻な健康リスクにさらす。この、健康であることの人権を侵害している状況について、ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)は国連に情報提供し、2012年11月に国連人権理事会の「健康の権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏が来日調査することになった。
◇  この調査は、HRNの提案により、住民に対する聞き取りを重視した形となった。
◇  最終報告や勧告に向けて、日本政府等の修正要求をはじめ様々な圧力が押し寄せたことは想像に難くないが、多数のプレッシャーを跳ねのけた勇気ある勧告だ。(伊藤)
◇  この報告への動きで、「健康に対する権利」は人権だと、初めて気付かされた市民は多い。(三木)

~ 特別報告者の勧告は、“1mSvを基準とした住民への支援へ、抜本的な政策転換”を求めている。(勧告78項、報告49項)
◇  避難基準を20mSvに変えた根拠は?(参加者)
⇒ 国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告による。(伊藤)
◇  1mSvに基準を変える場合、1mSv~20mSvの地域でも、今の居住地に住み続けられなくなる人が増えることになるが、その人の権利はどうなるのだろうか? また、1mSv以上の場所に住むことの危険性をどのように伝えて行くとよいのか? 当事者への配慮が必要だと思う。(参加者)
⇒ チェルノブイリ事故では、追加線量1mSv以上の地域の全住民に「避難の権利」が認められた。避難の権利は“自己選択”できる権利である。居住や帰還を選択することもできる。チェルノブイリ事故後、追加線量1mSvから5mSvまでの地域については、その地域に留まるか移住するかの選択権があり、避難・移住した人には補償と住宅、就業等の定住支援、留まる人へは定期的な無料の健康診断や長期間の保養、安全な食料の供給などがされた。日本の現実とはあまりに異なる。日本でも、年間5.2mSv以上の地域は「放射線管理区域」に指定され、一般人は立ち入れず、誰も飲食や寝ることはできないはずである。現行法と現在の事態に間に深刻なギャップがある。
◇ HRNは、2011年8月に、チェルノブイリ基準に基づき、「福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康・環境・生活破壊に対して、国と東京電力がとるべき措置に関する意見書」を提出しているので参照してほしい。(伊藤)

~ 「原発事故子ども・被災者支援法」の実施に関連して(報告書68項、勧告81項)
◇  同法は採択から1年経つが、具体策の実施が採択されていない。履行の前提として、特別報告者は「支援対象地域」が年間1mSv以上の地域を含むべきだと確信している。
⇒ 日本政府の答弁は、「予断に基づく文章であるため、削除すべきである。」(伊藤)
◇  (参加者)福島の子どもたちとその家族をサポートする活動をしている。「健康の権利」は、全ての子どもたちが恩恵にあずかれるもののはずだが、保養に出られる子どもは一部だ。国策として、1mSv以上の地域の全ての子どもたちに保養として“移動教室”を実施してはどうか。
⇒ 日本の子どもの保養期間は数週間だが、チェルノブイリでは1カ月~2カ月間で、必ずやっていた。これを見習うべき。(伊藤)

~ 勧告に対する日本政府の答弁には、“重大でない”“存在しないと信じられている”“削除すべきである”といった文言が並ぶ。
◇  参考資料―グローバー報告に対する日本政府の見解・コメント(HRN仮訳)はこちら;
http://hrn.or.jp/activity/topic/post-214/
◇  なぜ、福島原発事故の被害者については、年間1mSvという健康モニタリング基準の勧告を、非科学的として日本政府は反論するのか。原爆症の認定基準は、厚労省の文書によれば、一般公衆の線量限界が年間1mSvであることに基づくものとされている。また、東海村原子力発電所の臨界事故では、推定線量が1mSv以上の住民の希望者には定期的に健康診断が行われている。国のこれまでの政策とも矛盾している。リスクを回避する最大限の措置を取るべきだ。(伊藤)

~ 健康に対する権利をどう保障するか、現状どのくらい保障されているのか。(三木)
◇  「情報へのアクセスは健康への権利に不可欠な要素であり、個人は、情報へのアクセスよって自分の健康に関する決定を、情報に基づいて下すことができる。」(報告15項)は重要な指摘だ。
◇  市民が今の状況の中で生きて行くために必要な情報である、原発事故の影響による放射線量や、放射能の健康への影響などについて、1次情報(誰かの評価が入る前の生情報)を握っているのは、政府と地方自治体だが、知らせない方が住んでもらい易い情報は、概して出回りにくい。
◇  市民が健康管理調査の結果情報へアクセスする権利は保障されているが、実際に開示を受けるまでのハードルは高い。福島県立医大による甲状腺検査は判定のみの通知で、詳細結果は子どもの保護者が開示請求をしなければならない。請求に当たっては、保護者であることを証明するために戸籍謄本などを添える必要があり、こういう手間を乗り越えなければならない。さらに、この開示請求書、当医大の甲状腺検査専門委員会が会議資料として配布していたことも、情報公開請求で明らかになっている。これは、個人情報保護条例への違反で、誰が開示請求をしているかを監視するようなもの。請求が歓迎されていないとも言える。情報公開クリングハウスでは、県立医大に回収を求め、一応回収の方針であるところまでは確認をしている。

~ マスコミを信じたくても信じられない、信じられる情報はどうしたら得られるのか?(参加者)
◇  (参加者)福島に取材に伺っている学生だ。放射線物質が当たり前すぎて慣れてしまって、少しマヒしている感すら受ける。政府が正しい情報を出していないからではないか。メディアには正悪両方の情報を伝えてほしい。
◇  メディアがずっと避難や支援の基準は20mSvでいいと言い続けているので、大丈夫だと思いたいという状況がある。(伊藤)
◇  メディアの存在そのものは否定しない。情報は、必ず流す側の影響を何かしら受けている。市民は、この点を認識して情報に向き合わないといけない。信頼できる情報源か慎重に情報に接し、異なる立場の人の情報を、なぜ異なるのか考えながら見て行くだけでも意義がある。 ⇒ 多くの1次情報へのアクセスを可能にする『情報公開プロジェクト』を推進している。(三木)

~ 多様な情報の受け止め方について市民はとまどっているが、健康管理の当事者は市民自身だ。特別報告者の、「意思決定プロセスに、住民、特に社会的弱者が効果的に参加できることを確実にするよう」(報告82項)という日本政府への要請は重要だ。(三木)
◇  日本の人権意識は、一人ひとりの権利ということよりも、社会全体がどこを向いているかが優先される傾向がある。福島の問題も、日本全体の利益を背負って取り組んでいる感がある。個人が思っている事、解決したい事、疑問に思っている事を発信していける社会をめざしたい。(大河内)
◇  情報の公平とは? 何を持って公平というかはとても難しい。しかし、お互いの共通認識のベースとなる情報を共有することが大切だ。その情報の評価は、立場によって異ならざるを得ないが、違いを認識し議論の前提となる情報を共有する必要がある。どういう仕組みのなかで問題になっているか、この情報を公開し共有することで問題解決につなげたい。(三木)

~ 「健康に対する権利」についての国連人権理事会の特別報告や勧告への問題意識を高めて行くには?(参加者)
◇  この特別報告は、従来の国連科学員会やIAEAなどによる調査と対比すると、人権の視点から独立した立場で市民の健康状況について調査した画期的なものだ。今後、日本政府が勧告に従わないことは恥ずべきことだという国際的なプレッシャーを高めると共に、国連総会に向けて、他の調査も含め総括していきたい。また、福島県のキー・パーソンに引き続き知らせて行く。福島県医師会の方をお呼びするHRNのパネルディスカッションも予定している。(伊藤)
◇  風評被害との兼ね合いで、情報を話していいのかという思う人もいるようだ。正しい情報へのアクセスと発信の重要性を感じている。(大河内)
◇  放射能の影響にたいするスタンスは、家の内外で親の言うことが異なるというケースがあることも聞いており、率直に物が言いにくい現状のようだ。情報公開クリアリングハウスは放射能の問題の専門ではないので、何が正しいとは言えないが、政府や自治体が情報提供ベースで言っている一次情報にこだわることで、世の中に出回っている情報の意味の理解が進めばよいと考えている(三木)
◇  危険視されることを許容できなかった福島の女性たちが、本当のことを知りたいと、話を聞きに来てくれたケースがある。福島で悩んでいる人とともに、正しい選択ができるよう、あきらめずに続けて行くことが私たちに問われていると思う。(伊藤)

~ 日本政府は勧告に従う義務はないのか?(参加者)
◇  日本政府は、この件に限らず、最近になって、国連の勧告に誠実に向き合わず、ナショナリスティックな対応が目立つ。しかし、経済的な利益を優先し、社会的弱者の「健康に対する権利」を犠牲にすることは許されない。(伊藤)
◇  勧告に法的な拘束力のないソフトロー(soft law)だ。しかし、日本が批准している社会権規約には、健康に関する権利がある。日本国憲法の98条には、条約は誠実に遵守するよう定められており、日本政府は、「健康に対する権利」への勧告を受け、国連と対話し受け入れて行くべきだ。(伊藤)
⇒ 人権条約違反だ、憲法違反だと弁護士たちから訴訟を起こす動きはないのか?(参加者)
◇  福島原発事故の被害に関し、多くの裁判が起きている。これらの裁判の中で、A.グローバー氏の「健康に対する権利」についての勧告を活かしてきたいと考えている。市民運動、弁護団、裁判を上手くリンクさせていくことが必要だと感じている。(伊藤)
◇  日本政府は、原発事故による放射能の影響を心配しているのは、一部の人が言っていることと済ませたいのだろう。私たち市民は、単に“大事だ”という価値の問題にせず、情報を共有しながら「健康に対する権利」への勧告への問題意識を広めていくことが問われている。(三木)

◆ 次回企画 ◆  ~ お申込み受付け中 ~

 『原発事故は、どのように報道されたのか』

   原発事故に関わる情報が、政府や東電のみならずマスメディアからも適切に十分に伝えられなかったという不信を、福島の被災者をはじめとして、多くの人々が抱いているのではないでしょうか。改めて原発事故の報道で何が問われたのかを検証し、情報をめぐるメディアと市民の関わり方について考えます。
詳細は http://socialjustice.jp/p/20130802/
お申込みは https://socialjustice.jp/20130802.html
皆さまのご参加を心よりお待ちしております。


7月19日アドボカシーカフェ総集編

 

******* 関連リンク ******

◆ NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ http://hrn.or.jp/

◆ NPO法人 情報公開クリアリングハウス http://clearinghouse.main.jp/wp/

*** 2013年7月18日アドボカシーカフェのご案内資料はこちら ***

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