このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed
LINEで送る

ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第10回助成最終報告

一般社団法人子どもの声からはじめよう(2024年1月)

助成事業名・事業目的

児童相談所一時保護施設における訪問アドボカシー

 本事業の目的は、我が国における社会的養護の分野において、子どもの声を起点に子どもの権利を保障する子どもアドボカシーの制度を構築するとともに、子どもの声を尊重する文化醸成に寄与することである。

 特に、児童相談所に保護された子どもを対象に、子ども・家族に対する援助方針の策定や一時保護施設における子どもの生活環境に子どもの声を反映するために、子どもをエンパワメントし、子どもの意見形成・意見表明を独立性の高い立場から支援する。

 併せて、児童相談所の職員や保護者に対して、子どもの声を中心に据えたフィードバックを行うことで、ケースワークや一時保護施設の運営における子どもの参加・参画を促進する。

 

助成金額 : 100万円 

助成事業期間 : 2年間(2022年1月~23年12月)

実施事業の内容: 

訪問アドボカシー事業

 児童相談所の一時保護所を定期的に訪問。子どもたちが生活するユニット(男子、女子、幼児)に分かれて活動する。新規入所児童にはアドボカシーの説明をする。遊びを通じた信頼関係の構築を経て、子どもからの申し出により面談、意見表明支援行う。

 子どもの申し出は、本人によって、またはアドボケイトを介して相手に伝達され、子どもの意見表明に基づく対応の起点をつくる。表明後は、職員等の対応を随時確認し、追加の要望等があれば、さらに意見表明支援を重ねていく。

■江戸川区児童相談所一時保護所

・2021年6月より毎週土曜に訪問2年で104回(2022年51回、2023年53回)×2~7名

・児相との協議会:2年で24回(2022年12回、2023年12回)

研究者、児童精神科医らアドバイザー、アドボケイトの研究会:2年で24回(2022年12回、2023年12回)

■板橋区児童相談所一時保護所

・2022年7月より隔週土曜に訪問:2年で38回(2022年10回、2023年28回)×2~7名

・児相との意見交換会:5回実施

研究者、児童精神科医らアドバイザー、アドボケイトの研究会:2年で18回(2022年6回、2023年12回)

■中野区児童相談所一時保護所

2023年4月より毎週月曜に訪問:1年で38回(2023年38回)×3~7名

里親に措置されている児童訪問 2回

・児相との協議会:8回開催

研究者、児童精神科医らアドバイザー、アドボケイトの研究会:1年で8回(2023年8回)

 

子どもアドボカシー講座・登録面談・研修

 2年で3度開催し、258名が受講。子どもアドボカシーの理解者や訪問活動の担い手を増やすことができた。香川、群馬、熊本のアドボカシー事業の立ち上げにも協力した。

250SJF20190723
(子どもアドボカシー講座をハイブリッド開催した様子)

活動報告

 団体内では年度末にリフレクション大会を実施した。子どもアドボカシー協議会、子どもアドボカシー学会、日本こども虐待防止学会、行政の研修、様々な団体、研究者との協働イベントや調査で訪問事業の活動報告を行ってきた。

助成事業の成果:

 本事業の成果は、子どもの権利擁護、子どもの最善の利益のより確かな保証である。助成申請時に、特に次の3点の成果を達成することができるとしていた。

1.子どもが自身の人生をコントロールする

 関わるすべての子どもが自身の人生のコントロール感を得られたかとは言えないが、訪問時に出会えた児童に権利を伝え、声を聞かれる機会を提供し、希望があった意見表明の調整を行った。

 2021年12月から2022年11月までの1年間に江戸川区の一時保護所に入所していた児童114名への退所時アンケートでは、アドボケイトとの関わりをよかったとする回答が91.2%得られた。自由記述では、頻度を増やすことや時間を長くすること複数寄せられた。「一時保護所で生活する子どもたちからみるアドボケイト〜江戸川区を対象とした アンケート調査から~」と題した研究成果は大分大学 栄留里美氏によって子どもアドボカシー学会や日本子ども虐待防止学会で発表された。

2.権利侵害に対する抑止力向上、早期発見・早期対応。

 子どもアドボカシーの説明や子どもの権利のワークショップを通じ、子どもが自身の有する権利について理解する機会を提供できた。定期的な訪問活動で権利侵害事案に対するSOSを発信しやすくし、一時保護所においては権利侵害に対する抑止力を高めることにつながっている。早期発見・早期対応につながるケースもあった。

3.市民参画により、みんなで子どもを育てる文化が醸成され、地域の養育力が高まる

 子どもアドボカシーの普及を通じて、困難を抱える家庭とその子どもに寄り添う市民を増やしている。社会的養護の本来の形である、みんなで子どもを育てる文化を築き、地域の養育力を高めている。

 日本子ども虐待防止学会では、中野区児相の子ども中心を支える仕組みとして、子どもの声からはじめようの子どもアドボケイトについて紹介された。

 

助成事業の目的と照らし合わせた成果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

(1)当事者主体の徹底した確保

 子どもアドボカシーの取り組み自体が当事者の主体的な参加・参画を推進するものである。
 子どもアドボカシー講座においては、社会的養護等を経験したユースと対等な関係性で学び合った。
 自立援助ホームに住むインケアユースの学生も子どもアドボケイトとなり訪問活動を実践、子どもの権利普及啓発の担い手となっている。
 江戸川児相訪問においては退所時アンケートにおける児童の声から活動日や時間の見直しもはかられている。

(2)法制度・社会変革への機動力

 代表(川瀨信一さん)は、2023年度は子ども家庭庁政策参与となり政策実現に取り組んでいる。これまでも厚生労働省の子どもの権利擁護に関するワーキングチーム、内閣官房のこども政策の推進に係る有識者会議等に構成員として参加し、法制度の策定に向け提言を行ってきた。
各地の研修で講師をつとめるほか、各地での子どもアドボカシー事業の立ち上げでコンサルティングやアドバイザーを担っている。子どもアドボカシーの受講者やアドボケイトも地元で団体を立ち上げるなど各地に広がりが出ている。

(3)社会における認知度の向上力

 児童相談所における研修、教科書、ガイドラインの執筆、各地での講師、メディアでの取材、SNSやWebでの発信を行い、子どもアドボカシーの普及啓発に取り組んでいる。
子どもの日には新聞の社説でも取り上げられた。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 児童相談所における子どもアドボカシーの活動は、その構造上、児童相談所との利害対立が生じやすい。職員を対象とした研修を随時行い活動の理解を促すとともに、定期的に児童相談所と協議の機会を設けて、アドボカシー活動によって生じた葛藤を解消し、協調的な関係を築いてきた。

(5)持続力

 現状では、アドボケイトは雇用ではなくボランティアとして活動していただいている。活動を持続させるためには、アドボケイトが継続的にできる体制づくりが欠かせない。毎回、「活動に入る前に」というアプリや事前ミーティングで心身のコンディションをモニタリングしている。各自の活動を休止する判断を尊重し、随時、訪問メンバーを拡充することを通じ持続可能性を高めている。
 2023年度後半は資金的に厳しくなり役員の私費を投入している。資金面の確保が課題である。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 子どもの権利に関する認識が不足している。保護者や学校関係者、行政関係者といった大人が管理的、権利侵害的な環境にいることを当たり前にとらえてしまっている。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

 子どもの権利、当事者参画について理解を広げ、子どもの声をきく担い手を増やす。子どもアドボカシーの実践による効果を一般的にもわかりやすい形で伝え、声を聞くことの大切さを文化として広げていく。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 学校や職場でのルールメイキングを推進する団体との連携。クリエイターやインフルエンサーらとの協力。行政や福祉の専門職のみならず、保護者や学校、若者、子どもたち、一般の大人にも、彼らが興味・関心を引く形で伝えていく。
 養護下にある子どもの人権が侵害された場合は、訪問施設を設置している自治体の弁護士を中心とした子どもの権利擁護委員との連携によって、子どもの権利侵害事案を関知した場合に実効性のある対応ができるよう連携を図りたい。 ■

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed
LINEで送る